【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。最近時の女神さまの影が薄い気がするけど……ま、いっか。勇者30でもクエスト中に女神さまが会話してくることなんて滅多にないですしね。何も問題ありませんね。ええ。



Sleepy(6)

 

 レイフィールに案内されるがままに地下にあるガラス張りの円柱型の水槽(全長10メートル)へとたどり着いた刹那(無地のTシャツ短パンに着替え済)は薄い緑色の液体で浸されているその培養槽の中に10分ほど沈む形でレイフィールの実験の被験者となった。

 

 当初。レイフィールから培養槽の中に10分間入ったままでいるよう指示を受けた時は呼吸の観点から液体の中に入り続けることに「大丈夫なのか?」と不安を抱いていた刹那だったが、いざ培養槽の中に入ってみると全身が液体に浸かっているのにも関わらずなぜか息苦しさを感じなかったので「そういうものなんだな」と理解することにした。

 

 そして液体の中にいることが案外心地よかったことに加えて魔王スリィピの睡魔の呪文の影響により実験途中でうっかり眠ってしまった刹那が次に起きた時、実験は既に終了していた。

 

「終わったぞ。とっとと出ろ」

「ん……」

 

 培養槽から解放される形で目覚めた刹那はレイフィールがカチャカチャと機材を操作する傍らで緩慢な動きで濡れた衣服を脱いで近くに置かれてあったバスタオルで体をふく。そして寝起きの思考のままゆっくりと元の旅人の服一式に着替え始める。うとうとと舟を漕ぎつつ一連の動作をする刹那の姿は中三の発展途上の肢体とはいえ中々に扇情的なのだが研究一辺倒のレイフィールの注意を引きつけるまでには至っていないようだ。

 

 刹那がゆったりとした動きでどうにか着替え終えるとそれを見計らったかのようにレイフィールが横合いからスッとマグカップを差し出してきた。

 

「ほれ」

「え?」

「のど渇いたろ。これでも飲め」

「……ありがとうございます」

 

 レイフィールからマグカップを押しつけられた刹那はマグカップの中の液体を寝ぼけ眼でジィーと見やる。レイフィールの言う通りのどの渇いていた刹那はほのかにいい匂いのする黒色の液体を何の考えなしに一気に飲み干す。

 

「~~~ッ!?」

 

 瞬間、刹那の意識は急速に覚醒し同時に刹那は自身が飲み干した飲み物のあまりの苦さに声にならない悲鳴を上げて床にもんどりうった。これが苦さが尋常じゃない例のレイフィール特製のコーヒーだと刹那が知るのは5分後のことである。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 その後。レイフィール特製のコーヒーでシャキッとなった刹那はレイフィール監修の元でリミッターの解除・制限の指導を受けた。その際レイフィールに「少し体を動かしてみろ」と指示された刹那がリミッターを外した状態で軽く動こうとして壁に勢いよく激突したのはいい思い出である。

 

 レイフォールさん曰く「む。まだ慣れないようだな。体の動きに頭の処理が追いついていない。だが実験自体は成功だ。体に不具合はなさそうだし練習すれば直に使いこなせるようになるだろう」とのこと。そのためさすがに魔王スリィピ討伐の時には使えそうにない。

 

「ありがとうございました、レイフィールさん」

「む?」

 

 さて。そんな経緯を経て魔王スリィピ討伐のためにレイフィールと別れることになった刹那は玄関前でレイフィールに頭を下げる。一方のレイフィールは刹那の発言の意図がわからずつい首をコテンと傾ける。

 

「なぜ感謝する? 僕は眠気覚ましのコーヒーをエサに貴様を良いように動かしたような奴だぞ? 貴様から感謝されるようなことをした覚えはないのだが?」

「まぁそれはそうなんですが……私、混血だってことで今まであまりいい扱いを受けてこなかったんです。だから純粋に実験台としてしか興味を示してこなかったことがかなり意外で……」

「なるほど、忌み嫌われてきたのか。まぁ確かに世間一般にはモンスターと人とのハーフは嫌われる傾向にあるしな。ハーフの存在自体を禁忌として問答無用で殺そうとする連中もいるぐらいだ。貴様も例に漏れず憂き目に遭ってきたということか」

「……はい。その通りです」

「そうか。となるとセツナの周りにいた奴らはよっぽど見る目のないグズ連中だったということか。やれやれ、これだから出る杭を何が何でも打ちたがる一般大衆は手に負えないんだ。セツナにどれだけの価値があるかも知らないで排斥するとはバカにも程がある」

「……へ?」

 

 刹那はレイフィールの視線から逃れるように伏せていた目を上げる。今の発言は遠回しに自分が特別な存在だと言ってくれたのではないかと刹那はレイフィールの死んだ魚のような緑色の瞳を見つめる。

 

「む? 何を呆けている、セツナ? 僕は何か間違ったことを言ったか? モンスターと人とのハーフという未知、あるいは禁忌。それに恐れをなして無駄に自己防衛に走ったり盲目的に慣習に従ったせいでセツナのような100年に1人の逸材を排斥したんだ。出自を理由にちゃんと育て上げようとしなかったんだ。これを愚かと呼ばずに何と呼ぶ?」

「わ、私はそんな大した人間では――」

「虚言じゃないぞ? これは貴様の体のスペックのデータに基づいた結論だ。貴様にはそれだけの才能が眠っている。しっかり精進しろよ、セツナ。これから貴様は化けるぞ。……貴様がどういった道を歩むのか。将来が楽しみだ」

「――ッ!?」

 

 刹那の漆黒の瞳を見つめ返してニコリと笑みを浮かべるレイフィール。今までのどこか歪んだ笑みとは違う年相応の純粋な笑みに刹那は思わず硬直したのだった。

 




 レイフィールにべた褒めされるせっちゃん。
 べた褒めタイムはもう少し続く予定。
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