【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回はせっちゃんの意識改革回。これからの展開のためにもせっちゃんには少々前向きになってもらわないとね……。



Sleepy(7)

 

「これまでの貴様は壊滅的に運がなかった。巡り合わせが悪かった。人は出自を選べないし故郷を選べない。劣悪な環境で育った結果が今の貴様なのだろう」

 

 レイフィールは語る。白衣のポケットに両手を入れて。相変わらずの半眼を刹那にロックオンして。先のレイフィールの発言ですっかり固まってしまった刹那に向けて言葉を紡ぐ。

 

「だが、100年に1人の逸材云々を差し引いてもこれだけは言える。貴様は特別な存在だ」

「……」

「人とモンスターが愛を育み子供を宿す。言葉にすれば簡単に聞こえるがそれを実現するには幾多の困難を乗り越える必要がある。言葉の問題、文化の問題、伝統の問題、寿命の問題、環境の問題、その他にもそれこそ星の数ほどあるであろう問題を、高くそびえる壁を全てぶち壊してきた両親がいたおかげで今の貴様はここにいる。混血児でアブノーマルでハーフで禁忌で、そしてそこらのカップルなんかよりもこの世に生まれることを望まれた貴様がいる」

「……」

「貴様は特別なんだ。その辺の有象無象とは違う、選ばれた稀有な存在なんだ。だからもっと自信を持て。己の有り様を誇れ。自分を掲げろ。我が道を突き進め。周りが何だ? そんなの知ったことか。セツナはただセツナらしく人生を謳歌すればいいんだ。周りがあくまで貴様のあり方を認めようとしないのなら力を見せつければいい。言葉でねじ伏せればいい。行動で示せばいい。嫌われようと疎まれようと人生は楽しんだ者勝ちなんだからな。わかったか?」

「……なぜ、ですか?」

 

 言いたいことを全て言い終えて満足したらしいレイフィールは刹那に「さっさと行け」と目で促してくる。しかし気づいた時、刹那はレイフィールに対して疑問の声を投げかけていた。その声は震えていた。それだけレイフィールの一言一言は刹那の心に響いていた。

 

「む?」

「なぜ、レイフィールさんはそこまで私に言ってくれるのですか? その、私とレイフィールさんは今日出会ったばかりの赤の他人なのに……」

「なに、簡単な話だ。ただの同族嫌悪だ。僕もこう見えて悪魔と人とのハーフだからな」

「えッ!?」

「だから周りの有象無象ごときにハブられたぐらいで自分に誇りを持てなくなって人に嫌われるのが怖くなって人の視線にビクビク怯えてる貴様を見ているとイライラするのだよ。さっき僕がセツナが混血児だと指摘した時なんかまさにそうだったからな。貴様も僕と同じハーフだというのならもっと傲慢に、貪欲に生きてみろ。今の貴様にはそれが圧倒的に足りない」

 

 レイフィールは背中に折りたたんでいた漆黒の翼を刹那に見せつけるようにバサッと広げると腕を組んで壁にもたれかかる。刹那は自身の正体をさらしてもなお自然体のレイフィールへと目を向ける。レイフィールからは自分の出自についての引け目は微塵も感じられなかった。羨ましい。素直にそう思えた。

 

「……確かにレイフィールさんは我が道を突き進んでいますね」

「あぁ、研究漬けの毎日を選んだのは他でもない僕自身だ。本当なら10歳の子供はしかるべき場所で教育を受けるべきなのだろうが僕はそんなもの知ったことかと日々研究に没頭している。これが僕のやりたいことだったからな」

「ここで色々と実験やってるレイフィールさんは何というか、凄くレイフィールさんらしいです」

「そう思うか? 僕自身、僕らしさをとことん追求した生活を送ろうとした結果がこれなのだが……人にそう言われると嬉しいものがあるな」

「……研究漬けの日々は楽しいですか?」

「あぁ、楽しいぞ。凄く楽しい。世界の全てを暴きつくしたいという自分の欲求を満たすがための生活だからな。楽しくて楽しくて仕方ない。まさに毎日がバラ色の生活だ。今日の実験も中々楽しかったぞ。感謝する」

「……こちらこそ、ありがとうございました」

 

 一通り聞きたいことを聞き出せた刹那はもう一度レイフィールに頭を下げてからレイフィールの家を後にした。高圧的だけどちゃんと優しい心を持ったレイフィール。少年の言葉を刹那が忘れることは決してないだろう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 刹那は走る。再び動き出した脳内タイムウォッチが世界滅亡へのカウントダウンを始める中、刹那は洞窟を抜けた先にある村へと向かう。魔王スリィピが唱えたハメツの呪文により世界が危機に陥っているにも関わらず刹那の表情はいつになく晴れやかだった。

 

 確かに私は人の視線に怯えていた。烏族と人とのハーフという出自が、禁忌の白い翼を持っているという事実が、ただただ負い目に感じて仕方なくて。同類のいない世界で異端であることに罪悪感を抱いていた。

 

 どうして私は他と違うのか。どうして周りと一緒じゃなかったのか。そんな悩みをどれだけ抱いたことだろうか。こんな私でごめんなさいと、どれだけ心の中で謝ったことだろうか。

 

 でも違うんだ。私が今を生きていることを謝る必要なんてなかった。私が禁忌を犯していることを申し訳なく思う必要なんてなかった。そもそも他人が私をどう思っていようと一切関係なんてなかった。

 

 ――私は、私の道を突き進んでいけばいい。たったそれだけのことだったんだ。

 

 あとはその私の道をゆっくり時間をかけて見つければいい。自分が最も輝ける場所を見つければいい。レイフィールさんがレイフィールさんらしく研究生活を送っているように桜咲刹那もあくまで桜咲刹那らしく生きていけばいい。己の存在を肯定して誇って傲慢に貪欲に生きていけばいい。

 

(例えばこのちゃんを守ることが私らしい生き方なら、私はただそれを貫けばいい。誰に何と言われようと関係ない。このちゃんが拒絶しない限りはこのちゃんと一緒にいたいって気持ちを押し通したって何も問題ない。だって人生は楽しんだ者勝ちなんだから。……そうですよね、レイフィールさん?)

 

 刹那はスッと軽くなった心を胸にコウモリ型モンスターが襲ってくる前にさっさと洞窟を抜ける。そして残り時間が5秒を切ったことに気づいた刹那はさらに足を速めるのだった。

 




 年下のレイフィール少年の言葉によりある程度メンタル強化されたせっちゃん。
 第一次せっちゃん魔改造企画の終了をお知らせします。 
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