どうも、ふぁもにかです。今回はSleepyのクライマックス回。クライマックスの割にはあんまり盛り上がってる気はしませんけどね。私がこの作品の作者だからでしょうか……?
着々と世界滅亡へのカウントダウンが為される中。一合、二合、三合と惰眠魔王スリィピと刹那は互いの獲物をぶつけ合う。50Gで買った安物の木刀は氣による強化を差し引いても中々頑丈らしく大鎌にぶつけても亀裂一つ入らない。
『このッ……!』
「斬岩剣!」
『ッ!』
魔王スリィピは中々刹那に大鎌がヒットしないことに苛立ちを覚え大鎌をブンと横薙ぎに振るう。身長120センチ程度の魔王の大鎌は刹那の胴体を真っ二つにせんと迫ってくる。しかし刹那は危なげなくジャンプして魔王の上空に移動すると氣を十分に込めたボクソードを勢いよく振り下ろす。間一髪で刹那の攻撃を見切った魔王が身を翻してボクソードをかわした瞬間、本来魔王の脳天に直撃するはずだった斬岩剣の一撃が床を派手に粉砕し刹那を覆い隠すように土煙が発生した。
『う!? 視界が――』
「そこッ!」
『ガッ!?』
「斬鉄閃ッ!」
土煙のせいで刹那の姿を見失った魔王スリィピののどに刹那の鋭い突きが炸裂した。のどを突かれた激痛に顔を歪める魔王に追い打ちをかけるように刹那はボクソードにこめた氣を螺旋状に飛ばして魔王を弾き飛ばす。
魔王スリィピはそこまで強くない。これが刹那の出した結論だった。魔王である以上超速レベルアップを遂げた今の刹那であっても一瞬たりとも油断などできないがそれでも最初に戦った残虐魔王カマセイヌと比べると戦闘力の面でどうも見劣りするのだ。これなら勝てる。刹那は確信した。
『うぅ。い、たいのぉ……。あんまり調子に乗らないの!』
斬鉄閃をモロに喰らい受け身を取る間もなく床に叩きつけられた魔王スリィピの瞳がギンと刹那を射抜く。その瞳が爛々とピンク色の怪しげな光を宿し始める。その時刹那の直感がガンガンと警鐘を鳴らした。今の魔王に近づいてはダメだ。今の魔王と目を合わせてはダメだ。一気にとどめを刺そうとしていた刹那は己の直感に従いすぐさま足にブレーキを掛ける。だが一歩遅かった。
「ぁ……」
いきなり強烈な眠気に襲われた刹那は思わず膝をつく。手をついて速やかに立ち上がろうとするも自分の意思に反してどんどん力が抜けていくせいで四つ這いの体勢になってしまう。
(う、くッ。これは、マズい……!)
『これは惰眠の呪文なの。睡魔の呪文の上位交換なの。ピンポイントなの』
フラフラと足元がおぼつかないながらも立ち上がった魔王スリィピがニヤリと笑う。大鎌を手に刹那の命を刈り取らんと一歩一歩近づいてくる。差し迫る命の危機を前に刹那はどうにか立ち上がろうとするも有無を言わさず刹那を眠りの世界へと連れこもうとする強力な眠気の影響で思った通りに体を動かせない。
『これでおしまいなの』
刹那の前に立った魔王スリィピは容赦なく大鎌を振り下ろす。刹那の首と胴体を分離しようと大鎌の一撃を放つ。ここで殺されるのか。薄れていく意識の中。ぼんやりとした思考で刹那が死を覚悟しかけた時、ふと刹那は思い出した。
――これから行う実験は脳に備わったリミッターの一部の解除・制限を可能にするものだ。あたかもスイッチのオンオフを切り替えるかのようにな。
――リミッターの解除・制限がいつでもできるようになる以上、魔王に近づくだけ近づいてからリミッターを外して一気にとどめを刺す、なんてこともできるのだからな。
(これだッ!)
刹那がとっさにリミッターを解除すると睡魔の影響で緩みきっていた刹那の手足にほんの少しだけ力が戻る。それだけで十分だった。
「はぁぁぁあああああああ!!」
『えッ!?』
「百花繚乱ッ!」
刹那は最後の力をかき集めるために声を張り上げどうにか上半身を逸らして寸での所で大鎌の一撃を避ける。そのまま刹那は右足で床を思いっきり踏み抜きそこを軸にすると渾身の力と氣をこめてボクソードを直線状に突き出した。朦朧とした意識のままに刹那が繰り出したボクソードの剣先は少々ブレていたものの勝利を確信しきっていた魔王スリィピの胸を貫く形で致命傷を与えるには申し分ない威力だった。
しかし惰眠の呪文のせいで意識が闇に沈みつつある刹那は魔王にとどめを刺せたという確信を持てずダメ押しと言わんばかりに剣先の氣を爆発させ魔王スリィピをはるか遠くへと吹っ飛ばす。これで倒せてなければ終わりだな。刹那は『04’98』となっている脳内タイムウォッチを一瞥したのを最後に糸の切れた人形のように床に倒れ意識を手放した。
『……う。僕、死んじゃう、の? 嫌な、の……』
そのため惰眠魔王スリィピが消滅する前に涙声で呟いた言葉を刹那のネコミミが聞き取ることはなかった。
◇◇◇
「ん……」
「あ、刹那ちゃん起きた?」
「め、女神さま……? ――ッ!? そうだ! 魔王は!? 魔王スリィピはどうなりましたか!? ハメツの呪文は!?」
目を覚ました刹那の瞳が最初に視界に捉えたのはふわわ~んと空中に漂いつつ自分の顔を覗き込む女神の姿だった。霧がかかったような意識の中、刹那は夕日に映える女神の銀髪をただボーッと眺める。と、ここで意識が覚醒したことで眠りに落ちる直前までの状況を思い出した刹那はバッと起き上がり落ち着きなく周囲をキョロキョロと見渡す。
「大丈夫。惰眠魔王スリィピは消滅したわよ。ハメツの呪文も止まったわ。刹那ちゃんが勝利したの」
「そう、ですか。良かった……」
刹那は女神がにこやかに言い放った言葉にホッと安堵の息を漏らしそのまま草原にぽふんと背中を預ける。そして草原に寝転がってものの数秒でスースーと寝息を立て始める。どうやら今回経験した眠気に抗いながらの魔王退治は刹那を身体的にも精神的にも相当疲弊させていたようだ。
「あらら。眠っちゃったわね。……お疲れさま、刹那ちゃん」
かくして二人目の人造魔王を撃破した刹那は女神が見守る中で深い眠りに就いたのだった。
VS.魔王スリィピの描写が約1800字でちゃっちゃと終了してしまった件について。
これぞ基本30秒しか戦えない勇者30クオリティ。