どうも、ふぁもにかです。今回はせっちゃんの出番はありません。第2話が終わってキリがいいのでちょっとここらで伏線張っておこうと思います。その方が読者の皆さんも妄想が膨らんでより作品を楽しめるでしょうしね。
数日後。とある研究所にて。
「ふむ。まさかとは思いましたが、やはり気のせいではなかったようですね」
丸眼鏡をかけたボサボサの黒髪の青年は眼前に積み上げられた機材の山の一つをカタカタと操作しながらポツリと呟く。体つきは細く顔も痩せこけていて青白くいかにも不健康そうな青年だ。もしもここに心優しいお節介な人がいれば即座に病院をお勧めするレベルである。
「よもやカマセイヌにスリィピの二人が立て続けに殺られるとは思いませんでしたね。それも剣術の心得があるってだけの人間に。いくら二人とも総合戦闘力の序列が高くないとはいえ魔王は魔王。人間ごときが早々勝てるように造ってなどいないというのに、一体何がどうなっているのでしょうか……」
そんな不健康を絵に描いたような青年は「ふぅ」と悩ましげにため息を吐く。今回世界を破滅に導こうとする人造魔王を造り出し世に送り出した張本人は虚空に向けて問いを投げかける。今現在の青年の悩みの種は他でもない、己の生み出した人造魔王を倒す剣士の存在だ。
「そういえば過去に世界滅亡を企む魔王や神を次々と倒していった勇者の血を継ぐ連中がいたと文献に――ん? 勇者? ……なるほど、世界の危機を嗅ぎつけて新たな勇者様が現れた、ということですか。それなら私の人造魔王が倒されたのも存外不思議ではないのかもしれません。何せ魔を滅ぼし世界を救ってこそ勇者様ですしね」
「それにしても、古の時から世界を滅ぼそうとする存在が現れれば必ず世界を救おうとする存在が現れるのはどういうことなのでしょうか? これが世界の仕様、あるいは運命と考えていいものなのでしょうかね?」
「まぁ何にせよ、勇者様が人間で剣士である以上どう足掻いてもフミダインやヘラゼーラ、それにマギを倒すなんてことはできないでしょう。特に剣士の勇者様にとってヘラゼーラは天敵と言える存在ですしね。フミダインに至っては言うまでもないでしょう。他はやり方次第で上手いこと倒せるかもしれませんが、彼らがいる限りどっちにしろ世界は滅ぶことでしょう。時間もありませんしまた新たな人造魔王を造り出す必要はなさそうですね」
青年は自身の出した結論にうんうんとうなずく。どうやら青年は己の考えたことを選別せずに言葉に出すことで情報を整理し己の行動指針を定めていたようだ。
「主様、飲み物をお持ちしました」
「ん、ご苦労様ですセイント。……相変わらず貴方の淹れる紅茶は美味しいですね」
「お褒めいただき光栄の至りにございます」
と、その時。青年が考えをまとめたタイミングを見計らったらしい一人の少年(セイントというらしい)が全く無駄の見られない洗練された動作で青年に紅茶を入れたカップとコースターを渡す。丁寧な所作で紅茶を飲む青年と褒め言葉に優雅に頭を下げるセイント。青年の不健康さにさえ目を瞑ることができればかなり絵になる光景だ。
「セイント。貴方の役目が今ようやく決まりました」
「はい。何でしょうか、主様?」
「これより貴方の
「はい。もちろんにございます、主様」
「では準備に取りかかってください。その間に私は貴方が淹れてくれた紅茶を消化しておきますので」
「はい。承知しました」
「……全く、恨みますよ勇者様。貴女様が世界平和のために無駄に頑張ってくれているせいで私は世界の破滅を見れそうにない」
スタスタと青年の元から離れていく少年――守護魔王セイント――の後ろ姿を見つめつつ青年はため息を吐く。しかしその言動とは裏腹に青年はどこかウキウキとしている。
「さーて、楽しみですね。
そして青年は嗤った。愉悦を多分に含んだ表情で嗤った。
◇◇◇
ちょうどその頃。とある一軒家にて。
「あ、く……」
一人の少女が尋常じゃない様子で床に倒れていた。少女はまるで自分の中にある何かを無理やり抑え込むようにして両の腕で自分の体を抱きしめて荒い呼吸を繰り返している。その体はガクガクと震えており脂汗が滲み出ている。
「ハァ、ハァ……ふぅ、収まった」
そして少女が床に倒れ込んでから約1時間後。ようやく立ち上がれる程度には回復した少女はフラフラとした足取りでキッチンへと向かい貪るようにコップの水を空にする。コップに水を入れて飲み干す。それを四回行ってようやく少女の呼吸は通常のペースに戻った。
「大丈夫、大丈夫。私はまだ大丈夫。まだいける。ここで呑まれる私じゃない……」
少女は両手を胸に当てると自分に言い聞かせるようにして言葉を紡ぐ。その姿を家の外から眺めていた黒猫は何を思ったのかニャーと一鳴きした。
ここで張った伏線が回収されるのはいつになることやら。
少なくとも2014年になってからしか回収できない気がしますね。ええ。