【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回から第3話……の前にちょっと幕間を挟みたいと思います。とはいえ、前回見たく露骨な伏線張りをするわけじゃないんですけどね。



幕間
On board(1)


 

 時折時間を見つけてはレイフィールの実験により可能になったリミッター解除時の戦闘訓練をしつつ北へ北へと旅をしていた刹那が港町に到着したのが3日前。

 

 刹那のいたスルク大陸の北端に位置しているこの港町から南東の大陸へと向かう船が明日出航するとのことだったので、相変わらず時の女神に金銭を搾り取られて無一文の刹那が急いでモンスター退治でお金を手に入れて船に乗せてもらったのが2日前。

 

 

「……」

 

 そして船旅3日目の現在。刹那は船の上でグテーとしていた。船の欄干に腕をダラーと垂らしていた。もしも誰かがイタズラ半分で刹那の背中を押せば簡単に海に落ちてしまうことだろう。それぐらい今の刹那は無防備だった。

 

 刹那は自身の視界に入ってくる、太陽の光を反射してキラキラと光る海の幻想的な光景をただただボーッと眺める。港町にやって来た当初は大自然を感じさせる海の景色に思わず息を呑んでいた刹那だったが今は何の感慨も湧かないようだ。

 

「……ハァ」

 

 なぜ刹那がこうも無気力状態に陥っているのか。船酔いではない。夢を見たのだ。前半はこのちゃんと一緒に遊ぶ夢。後半はネギ先生や明日菜さんと談笑する夢。異世界で過ごすことになる前までは容易に手の届いた光景。しかし今となってはどんなに手を伸ばしても二度と届かないかもしれない光景。それを夢としてまざまざと見せつけられた結果、刹那はやる気を完全に失ってしまったのだ。要するにホームシックである。

 

 色々と気を利かせた女神があらゆる観点から話題を見つけ出して話しかけても刹那は気のない返事を返すのみ。女神が断腸の思いで提案した「ほら。3Gあげるから元気だして、ね?」との言葉にも完全に無反応。明らかに重症である。

 

「このちゃん……」

(うっわ~。まさか刹那ちゃんがここまでネガティブモードまっしぐらになるとは思わなかったなぁ。これはどうしたものかしら……)

「ハァ、帰りたいなぁ……」

「何かお悩みのようですね、お嬢さん? 俺で良ければ相談に乗りますよ?」

 

 女神が頭を捻って刹那を元気づける次なる策を考えている中、刹那は陰鬱なため息を吐く。と、その時。無意識の内に周囲にどんよりとした近寄りがたい雰囲気を放っている刹那に声をかける猛者が現れた。

 

「え、と? ――ッ!?」

「おっと。いきなり話しかけてすみません。ですが、貴女のような可愛らしいお嬢さんが悲しそうな顔をしているのが見ていられなくなってしまいまして。俺にできることなら微力ながら協力させてもらいますよ――っと。すみません、自己紹介がまだでしたね。俺はライラックと申します。気軽にライラと呼んでください」

 

 女神さまと違って初対面の人物。それも自分のことを心配して声をかけてくれた人。邪険にするわけにはいかないなと刹那が重い体をどうにか持ち上げて猛者へと向き直る。その瞬間刹那は硬直した。褐色の肌にストレートロングの黒髪、180センチを超える長身に三白眼。それらの特徴を兼ね備える眼前の人物――ライラック――が刹那の知る龍宮真名とそっくりだったからだ。

 

「――龍宮!? おまッ、なんで――」

「……龍宮、さん? えーと、すみませんがそれはどなたのことですか? 少なくとも俺のことではないと思いますが?」

「――あ、いえ! すみません、ライラックさん! 人違いでした!」

「え、ちょっ、謝ることありませんよ。顔を上げてください、お嬢さん。たかが誤解でしょう? お嬢さんのような見目麗しい方にそのようなことをされるのは俺の本望ではありませんよ」

 

 刹那はライラックに頭を下げて謝る。龍宮という言葉に全く反応を示さず困惑した表情を浮かべたライラックが龍宮本人ではないと気づいたからだ。他にも一人称が『俺』になっていたり胸がなかったりなぜか自分のことを『お嬢さん』と呼んだりといった差異があることから目の前のライラックがただの龍宮とそっくりなだけの別人だということは明白だった。

 

(このちゃんとそっくりなコノハちゃんにフェイト・アーウェルンクスとそっくりなレイフィ―スさんに今度は龍宮とそっくりなライラックさん、か。……ここまで来るとさすがに偶然の一言で片づけられないぞ。一体何がどうなってるんだ?)

「お嬢さん? どうかしましたか? 難しい顔をしていますけど?」

「ッ! 気にしないでください、こっちの話ですので。あと私はセツナと言いますのでその『お嬢さん』って呼び方は止めてくれませんか? それと変に私のことを『可愛らしい』とか『見目麗しい』とか言うのも」

 

 刹那はライラックに名前呼びを要請する。いつもは木乃香相手にお嬢さま呼ばわりしている刹那なだけにいざ自分が『お嬢さん』などと言われるとどうも居心地悪くて仕方ないのだ。さっきから所々で自分の容姿を褒める言葉が散りばめられていればなおさらだ。

 

「? どうしてですか?」

「その、そういうの慣れてないので。それに私よりも綺麗な人なんて他にもたくさんいますし」

「じゃあ俺のこともライラと呼んでくれませんか? そうしたら俺も名前で呼びますよ、お嬢さん? それと容姿の件に関しては目を瞑ってもらえませんか? お嬢さんみたいなまるで天女のような美しさを持つ女の子を褒めないでいるなんて俺にはハードルが高すぎて無理ですし」

「て、てんッ――!?」

「さ、どうしますか? 俺はどっちでも構いませんよ、天女のように可愛らしいお嬢さん?」

「……わ、かりました。ライラさん」

 

 ライラックはニッと笑みを浮かべると刹那のお願いに交換条件を付けてくる。これから先ずっと『お嬢さん』呼ばわりはたまったものじゃない。刹那はライラックの精神攻撃(褒め言葉)によって赤面しきった顔を隠すようにして顔をそむけると蚊の鳴くような声でライラックの交換条件を受け入れるのだった。

 




 龍宮のそっくりさんにたじたじのせっちゃん。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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