どうも、ふぁもにかです。実に3週間ぶりの更新です。1日1話更新で最終話まで突っ走ろうと思ってましたがさすがに無謀でしたね、ええ。
「それにしてもセツナさんのようなまるで天使が生まれ変わったかのような女の子が一人旅とは珍しいですね。何か理由とかあるのですか?」
「あ、えーと、故郷へ帰る旅をしているんです」
「故郷、ですか……。早くたどり着けるといいですね」
「……はい」
海風が刹那とライラックの髪を撫で去っていく中。刹那&ライラックはポツリポツリと言葉のキャッチボールを繰り広げる。船上のゆったりとした空気が二人に断続的な会話と沈黙の繰り返しをそれとなく促していることが二人に時間を大いに浪費した会話をさせているのだろう。
ちなみに。最初こそ龍宮とそっくりな外見をしたライラックが刹那の容姿を様々な言葉で褒めちぎってくることでペースを乱されまくっていた刹那だったが慣れてしまえば何のことはなかった。人間、慣れが大事である。
「しかしセツナさんは一人旅で大丈夫だったのですか? スルク大陸はそれなりに強いモンスターが跋扈していることで有名なんですよ?」
「そうなんですか? ですが、道中のモンスター相手にそんなに苦戦することはありませんでしたよ?(氣を込めたといってもデッキブラシで倒せましたしね)」
「えッ!?」
「え?」
と、また新しい話題を見つけたライラックが船の欄干に片手を乗せると刹那に疑問の眼差しを向ける。それに刹那が特に何も考えずに正直に答えた瞬間、刹那の視界に驚愕の表情を浮かべるライラックの姿が映った。
(あれ? え? 何かマズいこと言ったかな?)
「あ、あのレベルのモンスターに苦戦しないなんて……もしかしてセツナさん、何か武芸の嗜みでも?」
「あ、はい。剣を修めてますけど」
「剣を修めているのですか!? これは意外……というわけでもなさそうですね。よくよく見れば佇まいに無駄が見られませんし、これならスルク大陸のモンスターを軽く返り討ちにできるのもうなずけますね。……全く、セツナさんの年でここまで大成させるなんて凄いですね。俺はそこまで強くないので羨ましい限りです」
「……そう、ですかね? 私なんてまだまだですよ」
刹那はライラックの称賛の言葉を素直に受け取れずに眼下の海を見やる。そう、私はまだまだ弱い。身体的にも、精神的にも。自分よりも強い人なんてそれこそ山のようにいる。だからそんな風に掛け値なしで褒められると凄く複雑だ。ライラさんが自分のことを純粋に褒めてくれているとわかっているのにどうしても皮肉を言われているように感じてしまう。
「あ」
「? どうしましたか、セツナさん?」
「いえ、そういえばライラさんも私と同じで一人旅なんですよね? 何か理由でもあるのですか?」
刹那は卑屈染みた自分の考えを振り払うかのように軽く首を振るとライラックに話題を振る。刹那の心情を知ってか知らずか、ライラックは刹那の問いに快く応じてくれた。
「あぁ、言ってませんでしたっけ? 俺はロステクハンターなんですよ。だからこうして世界中をのんびりと旅しているんです」
「……えっと、ロステクハンター?」
「あっと、これは申し訳ありません。ついセツナさんが知っている前提で話してしまいましたね。ロステクハンターとはロストテクノロジーハンターの略称のことで――」
ライラックは一度ペコリと頭を下げて謝ると刹那に向けてロステクハンターについて懇切丁寧に教え始めた。
ライラさん曰く、ロステクハンターとは最も文明が栄えていたとされる女神歴800年辺りで主に発達していた
大抵の人は非常に価値の高い
「でね、これがまたワクワクするんですよ! 特に未知の遺跡を見つけた時の胸が高鳴るあの感覚! ここには何があるんだろう? 俺の求める歴史史料があるのか、それとも別の年代の史料が残されているのか、はたまた史料など残されていない完全なハズレなのか。そのような想像を胸に遺跡を慎重に調べていくんです! これがもうロステクハンターじゃないと味わえない至高の感覚なんですよ! ええ!」
「……」
さっきまでの落ち着いた口調はどこへやら、キラキラとした瞳でロステクハンターの素晴らしさについて熱弁するライラックを刹那は困惑気味に見つめる。このまま聞きに徹した方がいいのか。それとも何か相槌を打った方がいいのか。内心でライラックへの対応に迷う傍ら、刹那はある疑問を抱いていた。
最初こそ胸がないことや一人称が『俺』となっていることからライラックを龍宮とよく似た容姿をした男性だと思っていた刹那だが、男にしては何となくライラックの声や所作に違和感を感じるのだ。気のせいだと思えばそれまでなのだが、刹那にはどうしてもその違和感が引っかかった。
「あ、あのー、ライラさん?」
「遺跡の解析、あの瞬間のために生きていると言っても過言では――ハッ!? 申し訳ありません、セツナさん。つい熱く語ってしまいました。まるで絵画から飛び出したかのように美しい女の子につまらない思いをさせてしまうなんて、俺はなんて罪深い――」
「あ、いや。謝らないでください、ライラさん。それより一つ聞いていいですか?」
「はい。構いませんよ?」
「ライラさんって、もしかして女性の方ですか?」
「……これは驚きました。まさか俺が告白する前に男装してると見抜くとは思いませんでした。いやはや、素晴らしい観察眼をお持ちのようですね、セツナさん」
刹那はライラックの意識を現実に引き戻すと失礼を承知でライラックの性別を確かめにかかる。己の直感が捉えた違和感をどうしても放置できなかったのだ。対するライラックは一瞬だけ驚いたように目を見開くも、すぐにやれやれといった笑みを浮かべて自身が女だと認めるのだった。
ライラックの性別を看破してみせたせっちゃん。
さっすがせっちゃん。揺るぎないぜ。