どうも、ふぁもにかです。思ったよりライラックさんの出番が長くなってしまった件について。1話でさっさと退場させる気だったのにもう3話目だよ。そして。さらっと8ヶ月もエタっててホントにすみませんでした。これからは心機一転、頑張ります。……とかいいつつまた完結前にエタるんでしょうけどね。
「……これは驚きました。まさか俺が告白する前に男装してると見抜くとは思いませんでした。いやはや、素晴らしい観察眼をお持ちのようですね、セツナさん」
刹那に自身の性別を看破されたライラックは苦笑に似た笑みを浮かべる。どうやら自分の感じた違和感は間違っていなかったようだ。男装の麗人という言葉を見事に体現しているライラックを前に刹那はホッと息を吐く。何せ、覚悟していたとはいえ、もしもライラックがれっきとした男性であれば先の刹那の問いは非常に失礼な質問へと変わってしまう所だったのだから。
「どうして、ライラさんは男装をしているのですか?」
「なに、ロステクハンターに限らず女の一人旅は常に危険が付き纏うものですからね。こうして性別を偽るだけでも結構違いますよ?」
「そう、なんですか……?」
「はい。スルク大陸はモンスターが割と強いだけでその他の脅威はなく、比較的平和のようですから特に問題ありませんが、地域によっては奴隷目的で女性を拉致しようとする野蛮な連中がワラワラいますからね。だからこうして男装して旅のリスクを下げているんです。俺の場合、一人二人なら返り討ちにできても集団で来られたらまず勝てませんし。スルク大陸のモンスターを難なく倒せるとのことでしたので、セツナさんなら盗賊ごときに後れを取ることはないでしょうが、どうせなら男のフリをした方がいいですよ? 余計なトラブルを避けることができますし」
「……確かに、それもそうですね」
刹那は口元に手を当てて思考にふける。確かに、か弱い女だと見下されるよりは男だと勘違いさせた方が余計なトラブルに巻き込まれる確率は低くなるだろう。実際、コノハちゃんを助けようとした時に冒険者二人に舐められてしまったことを考えると、今後も人造魔王討伐の旅を続けていく上で男装は前向きに考えた方がいいのかもしれない。
「――と、いうのは建前なんですけどね」
「え?」
「実を言うと、私は女の子しか愛でられない、特殊な性癖を持っていますからね。こうして見目麗しい男の格好をしていれば、俺に恋心を抱いてくれる女の子がいるかもしれないでしょう? それを狙って――って、冗談ですよ、セツナさん。真に受けないでください。男装の目的はさっき言った通り旅のリスクを下げるためですし、俺はちゃんと男の人が好きですよ。ただ普通に話してるとなぜか女の子の方が私に惚れてしまうだけで、俺にそっちのケなんてありませんよ?」
ライラックが同性愛者だと知り、自分もライラさんの標的として狙われているのかとの疑いをかけた刹那は身を守るために少々ライラックから距離を取る。そろりそろりと後ずさる刹那の様子から冗談を本気とみなされたと気づいたライラックは慌てて刹那の誤解を解きにかかる。
(あれで普通に話してるつもりですか、ライラさん……)
刹那はライラックがサラッと放った言葉に驚愕する。丁寧な物腰をしたイケメンがあれだけ褒めちぎってくるのだ。ライラックと接触した女性があっという間に恋に落ちたとしても不思議ではないだろう。実際、刹那だってもしもライラックが龍宮そっくりの外見をしていることへの驚きがなければ、どうなっていたかわかったものではない。
「あらら。この物言い、もしかしてライラックは無意識であんな甘ったるい言葉を吐いちゃってるのかしら? 下手な確信犯より性質が悪いわね」
未だ刹那の誤解を解こうと必死に言葉を重ねるライラック。その近くをふわふわ飛んでいる時の女神がポツリと呟いた感想にうんうんとうなずく刹那だった。
◇◇◇
その後、刹那がライラックと出会ってから2日間。二人は船員から有償で釣り用具を借りてのんびりと釣りを行いつつ、気が向いた時に会話をする形で船旅を楽しんだ。ライラックも龍宮と同様に気を遣わなくていい相手なだけあって、ライラックと一緒に過ごす日々は中々にリラックスできたと言えるだろう。
「では、俺はここで失礼します。機会があったらまたお会いしましょう、セツナさん」
「はい。またどこかで会えたらいいですね、ライラさん」
そして。計5日の船旅を経て。新しい大陸:コルト大陸へとたどり着いた刹那は北にあるという2重の塔を目指すライラックに別れを告げて、東へと歩を進めていく。もちろん、これも東に人造魔王がいる気がするという、刹那の単なる当てずっぽうである。
「それならライラックの向かう先へ一緒についていってもよかったんじゃないの?」と問いかける女神に刹那はフルフルと首を振る。刹那としてはライラックの本業(ロステクハンター)の邪魔になりかねないようなことはしたくなかったのだ。
「男装、か……」
「折角くれたアドバイスだし、やってみる?」
「そうですね。町についたら色々と試してみましょうか」
かくして。男装しようと決めた刹那は近場の町を目指してテクテクと歩いていく。ライラックとの出会いのおかげか、刹那の中にあったはずの麻帆良を恋しがるホームシックの気分はいつの間にやら忘れ去られていたのだった。
新大陸へと足を踏み入れたせっちゃん。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。