どうも、ふぁもにかです。今回から第3話スタート! ということで、早速新しい魔王が登場します。お楽しみに。
Castle(1)
船旅の末にたどり着いたコルト大陸の地に降り立ち、早速進路を東に定めた刹那は歩を進めていく。ここら辺は荒野となっており、辺り一面砂漠が広がっている。森林や草原であふれていたスルク大陸とは大違いだ。
「大陸が違うとこうも気候が変わるものなんですね」
「ま、コルト大陸は滅多に雨が降らない場所だしね。王様がアホなせいで治安もあんまりよくないし、ホント過ごしにくい地域だよ」
「そうなんですか」
スルク大陸がどれだけ自然豊かだったかを身をもって知った刹那は、この大陸はあまり好きになれそうにないななどと考えつつ前方へと進んでいく。既に刹那が視認できる距離に存在する町へと一直線に向かっていく。
「ちょっといいですか、女神さま?」
「はいはい。何かな、刹那ちゃん?」
「女神さまってどこか一か所に留まってるイメージありませんけど……女神さまにもここは過ごしやすいとか、心が安らぐとか、そんな風に思える場所ってあるんですか?」
「ふっふっふ。いきなり畏まっちゃうから何を言ってくるかと思えば……愚問だね、刹那ちゃん。お金満つる処に私あり。お金さえあればどこだろうと理想郷だよ!」
「……そうですか」
「そうですとも」
刹那はふとした疑問を時の女神に投げかけてみるも相変わらず平常運転な女神の返答に、女神さまに聞いたのが間違いだったと内心で嘆息する。
(女神さまの芯のブレなさは凄く羨ましいんですけどね……)
刹那は目前に迫った町を見据える。治安があまりよくないとの女神の発言から古びた寂しい町を連想していた刹那だったが、一目見た町は小規模ながら活気にあふれており、ネガティブなイメージは湧かなかった。
これだけ賑わってるのなら武具屋の品ぞろえも期待できるかもしれない。男装のための服はもとより、野太刀も手に入れられるかもしれない。刹那は期待を胸に町へと一歩足を踏み入れようとした、まさにその時。
突如としてゴゴゴゴゴゴッと地面が上下に揺れ動き、刹那の背後からズズズと、例の毒々しい赤と紫を基調とした魔王城がその姿を現した。
「ッ!?」
(こ、これは一体!?)
新手の魔王が現れたかと刹那が振り返った瞬間、刹那は言葉を失った。何と、今しがた地面から湧き出てきた魔王城の上部を突き破るようにして巨大な何かが現れたのだ。その巨大な何かは見る見るうちに膨張し、その体積により魔王城はあっという間に爆滅した。あたかも多量の空気を無理やり入れられた風船が破裂するがごとく。
「സിജോരജോടദസുടജദോസുജടോദൈസുാദജടോസുോജടൈദസുാജദാോസുജോദസുദടോസുദോൈസുടദജോൈസു!!」
「くぅッ!?」
魔王城の破片が四方八方に飛び散っていく中、これまでの魔王と違って派手極まりない登場を見せた巨大な何か、もとい虎頭の巨人は天に向けて声高らかに叫ぶ。あまりの声量に周囲一帯の空気がビリビリと震えを増す中、刹那は自身の鼓膜が破られてしまわないようにネコミミを塞いで必死に耐え忍ぶ。
「め、女神さま! あれ、魔王ですか!? 魔王ってあんな大きいのもいるんですか!?」
「ごめんね、刹那ちゃん! ちょっと待っててくれるかな!? 今解析してるから!」
「解析って何を――ッ!?」
「ലരുോചദഗാലരുപജൈലജോൈുലജൈ9ോ8ൂ3പൈജോലഗദേോാുലോദചുാലോഗദൈുലൈോപുജോ0ചര3ചോലദചോല0ൈ3ൊ!」
刹那は巨人のあまりの大きさについ気圧され、焦りのままに女神に問いかける。一方の女神は刹那の問いに答えずに真剣モードで巨人を見つめるのみである。と、ここで空を見上げていた巨人の目がギョロリと刹那の姿を捉えると、何事かを口にする。しかし巨人の言葉はとても刹那が理解できる類いのものではなかった。
(こいつは一体何を言って――)
「『俺様は巨壁魔王フミダイン! お前が最近世界の破滅を防いでいる勇者だな! 知ってるぞ、残虐魔王カマセイヌに惰眠魔王スリィピの二人を倒すとは大したものだ! だが勇者といえど所詮は人間! 巨壁の名を持つ俺様の前では無力そのもの! 軽く踏み潰してくれるわ! 精々ハメツの呪文が発動するまでの短い間、無様に生き足掻くことだな! ガッハハハハハハハ!!』……って言ってるみたいね」
「わかるんですか、女神さま!?」
「ふふふ、凄いでしょ? タイムストリームを読み解けば翻訳だってできるのよ?」
サラッと巨人こと巨壁魔王フミダインの言葉を翻訳した女神に驚愕の眼差しを向ける刹那と鼻高々な女神をよそに、言いたいことを言い切った魔王フミダインはドッシドッシと大地を存分に揺らしながら町から離れていき、手頃な平地に座り込んであぐらを組む。どうやら魔王フミダインはあそこでハメツの呪文を唱えるつもりらしい。
(それにしても、本当に大きいですね……)
座ってもなお巨大な魔王フミダイン。軽く50メートルはありそうな巨躯を目の当たりにした刹那の頬に冷や汗がツゥと流れていく。
あれだけ巨大な相手となると、ちっぽけな自分一人の力ではとても倒せる気がしない。いくら超速レベルアップをした所で、リミッターを外して全力を出し切った所で、あの巨体に打ち勝てるとはとても思えない。
(エヴァンジェリンさんほどの実力があれば倒せるのでしょうが……)
刹那は以前、天ヶ崎千草が召喚したリョウメンスクナノカミを倒してみせた金髪の吸血鬼を脳裏に浮かべるも、今この場にいない人のことを考えても意味がないとすぐに打ち消した。
「う~ん。困ったわねぇ。あれだけ大きいといくら刹那ちゃんでもプチッと潰されちゃうし……こんな時に勇者城があればなぁ」
「勇者城、ですか?」
「そ。かつて勇者が使った動く城のことよ。遥か昔に天界から落ちてきたってうわさ付きの代物なんだけど、これがまた強力でね。巨体が売りの魔王に対しては負け知らずだったのよ」
「そ、そんなとんでもない兵器があったんですか……」
「うん。といっても、選ばれし者のタイムストリームにしか反応しないから、勇者城を動かせるのは勇者だけなんだけどね」
「えと、タイムストリーム?(さっきも同じ言葉を言っていたような……?)」
「ま、あらゆるものに流れるエネルギーとでも思ってれば大丈夫」
「……まぁ、わかりました」
女神は現状でタイムストリームの説明を長ったらしく行うのは得策でないと考え、テキトーにはぐらかす。いい所でお預けをくらった刹那は不満顔だったが、眼前の脅威をどうにかして取り除くのが先だと気を取り直す。
「ലിദോഗപാോജദപലാജോലാ……」
「えーと、あれは何て言っているのでしょうか?」
「『ハメツの呪文って、どう唱えりゃいいんだっけ?』 って言ってるわよ」
「……え?」
刹那は首を捻っている魔王フミダインを警戒しつつ女神に翻訳を頼むと、まさかの答えが返ってきた。世界滅亡を望むくせに肝心の呪文の詠唱方法を忘れているという、何とも間抜けな魔王に刹那の目は点となった。
「とにかく。これはラッキーよ、刹那ちゃん。あいつがハメツの呪文を思い出すまでの猶予、これを利用しない手はないわ。ないものねだりをしても仕方ないし、町で討伐方法を考えましょう」
「ッ! は、はい! そうですね、女神さま!」
女神が今後の方針を示してきたことで驚きから我を取り戻した刹那はビシッと背筋を正すと慌てて返事をする。そして。刹那は魔王フミダイン打倒の糸口を求めて町へと入っていくのだった。
残虐魔王カマセイヌ、惰眠魔王スリィピよりも明らかに強そうな巨壁魔王フミダイン。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。