どうも、ふぁもにかです。前回ムードメーカーたるナイトくんが登場してくれたので執筆が楽しくて仕方ないです。やっぱりムードメーカーって大事ですね。
刹那&ナイトによる謝罪合戦終了から数分後。
「そうそう、ナイトくん。今勇者城がどこにあるか知ってたりしない? 知ってたらメチャクチャ嬉しいんだけど」
「勇者城ですか? それなら僕知ってますよ。そこのオアシスに置いてます」
「まー、持ってるわけないわよね。そんな都合のいい話……って、本当なのナイトくん!? 本当に勇者城あるの!?」
「はい。ありますよ、女神さま。そもそも『私の勇者城が悪用されないようにきちんと見張ってなさい』って僕に勇者城の管理を任せたのは女神さまじゃないですか」
「エ、エー? ソウダッタカシラ?」
「……女神さま」
勇者城のありかを知っているというナイトの発言に目を輝かせた時の女神だったが、コテンと首を傾げて話してくるナイトから女神は自分が肝心なことを忘れていたことに気づいてつい片言になる。ナイトの純粋な眼差しを見つめ返せずに視線を逸らす女神、その背中に刹那のジト目がザクザクと突き刺さった。
「コ、コホン! 勇者城があるなら勝ったも同然よ! 勇者の資質を持つ刹那ちゃんなら勇者城を動かせるでしょうし、さっさと勇者城タックルであの無駄に図体のデカい魔王を倒しましょ♪」
「え、ちょっ、女神さま!? 勇者城タックルって、まさか勇者城をそのまま魔王にぶつける気ですか!? 大砲とか、そういった武器で攻撃するんじゃないんですか!?」
「ふっふっふ。勇者城の頑丈さと攻撃力の高さを舐めちゃいけないわよ、刹那ちゃん。過去の勇者たちが勇者城の突撃でどれだけの魔王を地に沈めてきたと思ってるの?」
「……」
てっきり勇者城に搭載されている強力な武器で魔王フミダインを倒すものと考えていた刹那は勇者城を直接ぶつけて魔王を倒すという突拍子もない意見に動揺の色を見せる。しかし。その無謀としか思えない方法で実績を上げていると女神から自信満々に言われたために、驚愕冷めやらぬ今の刹那には言葉を失いその場にたたずむしかなかった。
(ま、まさか勇者城とやらがそれほどまでに非常識なものだったとは……)
「さーて。それじゃ勇者城回収して、あの魔王を倒すわよ! 案内よろしく、ナイトくん♪」
「……あ、あのー。すみません、女神さま」
「なになに、ナイトくん? あ! 何か他にもプレゼントがあったりするの?」
「いえ、そのー。……僕、この町で限定販売されてた鎧一式が凄く欲しくて、その、ついさっき勇者城を動かす重要なパーツを売ってお金にしちゃいました」
ナイトは今すぐにでも勇者城に向かおうとする女神を引き止めると、テヘッと言わんばかりの口調で勇者城のパーツを売ったことを伝える。ナイトが頬をポリポリとかきながら放った言葉に、思わず刹那と女神は硬直した。
「え、っと。ナイトくん? それじゃあ――」
「はい。残念ながら今は勇者城を起動できませんので、まずはパーツを買い戻さないとですね。あははは」
「……ナイトくん」
「……ナイトさん」
あくまであっけらかんとした、自分のやらかしたことを何も問題に思っていない体で笑うナイトに刹那と女神の絶対零度の視線が注ぎ込まれていく。しかし、当のナイトは二人の視線の意味する所を理解しないまま言葉を続けていく。
「それより見てくださいよ、この鎧! あの疾風の騎士団長でお馴染み、ファイナスさんモデルの風神の鎧ですよ! ここのとんがった部分とか超カッコよくないですか!?」
「……うん、ナイトくん。一回死んでみる?」
「わッ!? ちょっ、女神さまが怒ってらっしゃる!? どうして!?」
「うん。自分の胸に手を当てて考えてみようか? そしたらよーくわかるから」
「あわわわわ……なんでそんなに怒ってるんですか、女神さまぁ!? セツナさん、何か心当たりは――って、セツナさんの目が冷たい!? まるでどうしようもないバカを見るような目になってる!? どういうこと!?」
怒れる女神と呆れ顔の刹那。ここでようやく二人の反応が尋常でないことに気づいたナイトは、しかしその理由がわからずに困惑の声を上げる。
(……要するに、勇者城を動かすためにはまずお金を稼いで勇者城のパーツを買い戻して、それから勇者城で魔王フミダインを倒せばいいということですか。……まぁ、あの魔王を倒せる算段がついてきただけよしとしましょうか)
刹那は今後の自分の行動方針を頭の中で固めると、ひとまずガクガク怯えるナイトを怒り冷めやらぬ女神から救おうと決めるのだった。
◇◇◇
刹那が女神を宥めてどうにか女神の怒りを沈めさせた後。刹那、女神、ナイトは町のよろず屋へと向かっていた。何でもナイトはそこで『聖剣シロノアシ』という、いかにも大層な名前をした勇者城のパーツを売り払ったらしい。
「すみませーん」
「おぉ。さっきの嬢ちゃんじゃないか」
よろず屋にたどり着いた刹那たち三人。見える範囲に店主が見当たらなかったため、刹那は店の奥にも届くようにと店主を呼ぶ。すると、いかにも人当たりのよさそうなよろず屋店主の声が刹那の真横から響いてきた。どうやら店主は店を空けてどこかに出かけていたらしい。
「どうした? 忘れ物か何かか?」
「いえ、勇者城のパーツを買いたいと思いまして……」
「勇者城のパーツ? 何だそりゃ?」
「えと、さっき僕が貴方に売ったものです」
「あぁ! お前さんから買い取った、あの『正拳何とやら』って奴か」
「はい、それです。それを買いたいんですが、いくらしますか?」
刹那は店主に聖剣シロノアシの値段を問いかける。手持ちのお金で足りるならこの場で購入すればいいし、足りないようであれば聖剣シロノアシを誰にも売らないことをお願いしてモンスター退治でお金を集めればいいとの考えの元で。しかし、値段を問われた店主はなぜか申し訳なさそうに眉を潜めた。
「すまねぇなぁ、嬢ちゃん。あれはついさっき誰かに盗まれちまったんだ。珍しい形してるから面白そうだと買い取ったまではよかったんだがなぁ……」
「ぬ、盗まれた!? 誰にですか!?」
「わからねぇ。何か目撃情報がないか聞きに回ってたところなんだ。お隣さんの話だと、いかにもアホっぽい女がそれっぽいものを持って南東の洞窟の方へ走ってくのを見たらしいんだが……」
「わかりました! 情報提供、ありがとうございます! 行きましょう、ナイトさん! 今ならまだ間に合うかもしれません!」
「はい、セツナさん!」
「え、ちょっ、嬢ちゃんたち!? 大丈夫なのかい!? あの洞窟は強いモンスターがいるんだ、二人だけだと危険だぞ!?」
刹那の身を心配して引き止めようとする店主に「大丈夫です! 心配いりません!」と言葉を残すと、刹那はナイトとともに南東の洞窟へと向かう。
女神に時間を巻き戻してもらい、この場で泥棒を直接捕まえた方がより確実に聖剣シロノアシを取り戻せることはわかっていても、それにはどれだけのお金を代償とすれば済むのかわからないために泥棒を追いかけて捕まえることにした刹那だったりする。
「ോ! ദുോഗലാുചോദഗൈദചൊ!」
「『あ! やっと思い出した!』って言ってるわね。もう少しハメツの呪文を忘れたままだったらよかったのに……」
と、ここで。町の外にいる魔王フミダインの大声が聞こえると同時に刹那の脳裏に『30’00』と脳内タイムウォッチが表示される。どうやら魔王フミダインがハメツの呪文を思い出してしまったようだ。
「刹那ちゃん! いつもみたく超速レベルアップできるようにしたから頑張って! ……ついでにナイトくんも」
「わかりました!」
「僕はついでですか、女神さま!?」
脳内タイムウォッチがカウントダウンを始める中、女神の激励を受けた刹那は洞窟へと向かう足をさらに速めていく。一方のナイトは女神からの雑な扱いに驚愕の声を上げつつも刹那のスピードに遅れることなくついていくのだった。
何者かに盗まれてしまった聖剣シロノアシ。取り戻すことはできるのか!?
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。