どうも、ふぁもにかです。実に4カ月ぶりの投稿です。なのに本編は相変わらず2000字だったりするという……何てこった。
「……え?」
刹那は困惑していた。何の前触れもなく急に灰色一色に染まりきった世界で、ただ一人呆然としていた。右手を使って体をゆっくりと起こし、どこまでもモノクロとなった世界にただただ視線を向ける。ついにハメツの呪文が発動してしまったのか。これが滅ぼされた世界の姿なのか。
(いや、これは違う……?)
脳裏に浮かんだ自身の考えに何となく違和感を感じた刹那は首をフルフルと振って否定する。
と、その時。刹那の視界に脳内タイムウォッチが映った。脳内タイムウォッチが示す残り時間はなぜか『00’03』で停止したままだった。これが指し示す意味はすなわち、世界がまだハメツしておらず、なぜか時が止まっているということ。そして。何もかもが静止した世界の中でなぜか自分だけが自由に動けるということ。
「これは、一体――」
「はいはーい。こんにちは。戸惑ってる所悪いけど、皆大好き、絶世の美女の時の女神さまのご登場だよ~」
「ッ!? 誰だ!?」
ワケがわからず思考停止に追いやられそうになっていた刹那は、突然背後から何とも軽い調子で何者かから声を掛けられたことでハッと我を取り戻し、バッと振り返って声を荒らげる。その様はさながら手負いの狼だ。いくら想定外極まりない事態に困惑していたとはいえ声を掛けられるまで背後の人物の気配に全く気づけなかったことが刹那の警戒心を強める。
刹那が振り向いた先、刹那の漆黒の瞳が捉えたのは一人の美女だった。軽くウェーブのかかった銀髪に端正な顔つきをした大人の色香を放つ女性。確かに絶世の美女だと自称するだけあってどこか神々しい容姿をしていて、その身にはいかにも高級そうなドレスやらティアラやらネックレスやらを纏っている。その中でも一際特徴的なのはその女性が両手で抱えている砂時計のようなもの。何より不思議なことに、その女性は羽も翼もなく魔法も使ってる気配もないのにふわふわと宙に浮いている。
「まぁまぁそんなに警戒しないでよ。私は敵じゃないから。まっ、今の貴女はボロボロみたいだし、まずはこれでも食べてよ。『きんろうういろう』って言ってね。これが値段に見合わず中々美味しいんだよねぇ」
「だ、誰がそんなもの――」
「い・い・か・ら♪」
「――ムグッ!?」
いかにも怪しい要素満載の謎の女性。あたかも旧知の友達に話しかけるかのように気楽に言葉を紡ぐ女性に対して刹那がますます警戒心を顕わにしていると、当の女性が『きんろうういろう』という名の食べ物を無理やり刹那の口に突っ込んできた。
毒でも食べさせられたか。刹那は『きんろうういろう』をどうにか吐き出そうとするも女性に口を塞がれたために、刹那は『きんろうういろう』を食べざるを得なくなる。そもそも魔王カマセイヌの容赦ない攻撃のせいで満身創痍の刹那にはもはや抵抗する力など残っていないのだ。
刹那はゆっくりと『きんろうういろう』を咀嚼する。その後、ういろうと似た味のするお菓子を呑み込んだ時、刹那は急激に違和感を感じた。体が急に軽くなったのだ。それに加えて、先に魔王にやられたはずのズタボロの体が少しも痛みを訴えなくなったのだ。さらに、血をたくさん流したというのに先と比べて意識がハッキリとし始めたのだ。困惑顔の刹那が視線を自分の体に向けると、なぜか傷一つない細身の体躯がそこにあった。尤も、血に濡れた制服はボロボロのままだが。
「あ、あれ? えッ!? 傷が無くなってる!? どうして!?」
「そりゃあそうでしょ。食べ物は生命の源。美味しければ美味しいほど体の回復速度が上昇する、なんてのは誰もが知っている常識でしょう?」
「ええッ!?」
ふわわ~んと宙を浮遊している銀髪の女性がさも当然と言わんばかりに口にした言葉に、刹那は目を丸くする。美味しい食べ物を食べただけで怪我が一瞬で完全に治るなどという非常識極まりない話なんて生まれてこの方聞いたことがない。しかし。そのあり得ないはずの事象が実際に自分の身で起こっている。しかも眼前の女性はそれが常識だと言っている。刹那は今までの人生で着々と積み上げてきた常識がガラガラと崩壊していく錯覚を覚えた。
美味しい食べ物で怪我の完全治癒というあり得ない事態。それが平然とまかり通っている現状。混乱しない方が無理な話だった。そして。何が何だかわけがわからなくなった刹那にふわりふわりと浮いている女性は追い打ちの言葉をかける。無意識に。
「さて。それじゃあ貴女の怪我が治った所で自己紹介といこうかしら。私は時の女神。タイムストリームを司る女神さまよ。時間に干渉できる女神さまと言った方がわかりやすいかもね。あ、ちなみに今時間を止めてるのも私だからね」
「へ? ……え? えぇぇぇぇえええええええええええ!?」
刹那と時の女神以外のあらゆるモノが停止した草原にて。サラッと女性が衝撃発言を口にしたことにより、刹那は目を見開き驚愕の声を上げる。刹那の声は辺り一帯によく響いた。
時の女神さまと邂逅するせっちゃん。これから金銭面で苦労する様子が容易に想像できますね。
……せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。