【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。さて。前回爆誕してくれた月詠のそっくりさんですが、はたして彼女は何をやらかしてくれるのか。



Castle(5)

 

『……あっれぇ? おっかしーなぁ? このあたしの類まれなる推理力で導き出した答えに誤りはないはずなんだけどなぁ。あれかな? ちょっと声の調子がおかしかったのかな? それとももっと声出した方がよかったのかな? あ、あー、あえいうえおあお。よし、のどの調子OK。んじゃ改めまして――このプリティでレジェンドなツッキー様を主と認めたまえぇぇぇえええ! ヘアァアッ! ヘェェェエエエエエア――ッ!!』

「……」

 

 洞窟にて。聖剣シロノアシを掲げて全力で声を上げる泥棒、もとい月詠のそっくりさんを刹那は複雑な表情で眺めていた。

 

 これまで刹那は自分の知り合いのそっくりさん三人と立て続けに出会ってきた。そのため今後も四人目、五人目とそっくりさんと出会っても何もおかしくないと考え、例えこれから自身の知る人物のそっくりさんと邂逅することがあっても変に動揺しないよう心に決めていた。そのはずだったのだが――。

 

(まさかここまでアホになっているとは……)

「どうしましたか、セツナさん?」

「…………いえ、私の知り合いとそっくりの顔をした人があまりに残念な性格をしているみたいなので、その……何とも言えない気持ちになっていただけです」

「ま、あの子見るからにアホそうだもんねぇ~」

 

 刹那は心配そうに見つめてくるナイトに大丈夫だと答えて眼前の月詠のそっくりさんを見やる。月詠の猛攻に苦労させられた経験を持つ刹那にとって、頭が残念仕様となっているらしい月詠のそっくりさんは自身のよく知る月詠とのギャップがあり過ぎるせいで中々受け入れがたいようだ。

 

 

「えーと、一人で盛り上がってる所悪いんですけど……その聖剣シロノアシを返してくれませんか?」

 

 本当ならバカまっしぐらの月詠のそっくりさんをゆっくり時間をかけて受け入れたい刹那だったが、いつまでも隠れて様子を伺っていても何も始まらないということで、ナイトとともに月詠のそっくりさんの前へ姿を現すことにした。

 

「ゲッ。え、ちょっ、もう騎士団連中が嗅ぎつけて来ちゃったわけ!? 今回はいつになく早いじゃないの!? まだ盗んでから全然時間たってないよ!? 一体何がどうなって――ハッ! ふっふふふ、にゃーるほど。騎士団連中もようやくあたしを本格的に捕まえる気になったってことか! 知らない内にあたしの知名度がここまで上がってるとは……あたしの物取り実績、恐るべし!」

「いえ、私は騎士ではないんですが――」

「へっへっへ。皆まで言わなくていいぜい、ネコミミ騎士団長さんよぉ。何せ、あたしほどの盗賊になれば他人の思考なんて丸わかりなんだからさぁ!」

(ネコミミ騎士団長って……)

 

 刹那は思いっきり誤解しているっぽい月詠のそっくりさんに訂正を入れようとするも、当の月詠のそっくりさんは刹那の言葉を耳に入れようとせずに両腕を組んで得意げに胸を張る。明らかに人の思考を読み取れると宣言する者の態度とは思えない。

 

「……もう一度言います。その聖剣シロノアシを返してくれませんか?」

「やだ」

「どうしてですか?」

「なんでってそんなの、あたしみたいなプリティな盗賊には高性能かつプリティな武器が必要だからに決まってんじゃん!」

 

 刹那は目の前の人物がロクに話を聞かない類いだと判断すると誤解を解くのを諦めて率直に己の要望を述べる。しかし月詠のそっくりさんは刹那の要望を軽く突っぱねると聖剣シロノアシを両腕でギューと抱きしめる。よほど聖剣シロノアシを気に入っているようだ。

 

「これが最後です。その聖剣シロノアシを返してくれませんか? 私たちにはそれが必要なんです。魔王を倒すために」

「へ? あのバカでかい魔王倒す気なの、ネコミミ騎士団長さん?」

「はい。だからそれを――」

「ふっふふふ。だが断るッ! 敢えて断るぅ!」

「……え?」

「だって、だってだってだってぇ! この聖剣シロノアシはあたしがあのハゲ店主の監視の目を巧みにかいくぐって手に入れた戦利品だもん! それにこれからあたしを主だと認めてもらうために毎晩抱き枕として使用するつもりなんだもん! あたしの抱き枕は誰にも渡さない! どうしても欲しいっていうんなら力づくで掛かってきてよね、ネコミミ騎士団長さん! このプリティ盗賊ことツッキー様が直々に相手して華麗に潰してあげるからさぁッ!」

 

 月詠のそっくりさん――ツッキーというらしい――は聖剣シロノアシを右手に装備した状態で刹那&ナイトにダッシュで接近してくる。いつの間にやら戦うこととなったため、二人が各々の武器を手に迎撃態勢に移った、その時。

 

 

「へぶッ!?」

 

 ゴツゴツとした足場の岩に足を引っかけたらしいツッキーが顔面から派手に転んだ。ズガンと地面の岩に頭をぶつけたツッキー。その際ツッキーの手元から離れた聖剣シロノアシはクルクルと宙を舞い、追撃とばかりにツッキーの頭に突き刺さった。

 

「い、痛い。超痛いぃぃ……」

 

 頭からダラダラと血を流した状態で聖剣シロノアシの命中した頭をさすりつつ立ち上がる涙目のツッキー。偶然自分の足元に転がってきた聖剣シロノアシを拾った刹那はすっかり戦う気をなくしており、ただただツッキーを可哀想な子を見るような目で見つめるだけだ。ナイトも同様である。

 

「ふっふふふっ。ふふふふふ! 中々やるじゃない、ネコミミ騎士団長さん! このプリティなツッキー様をここまで追い詰めさらには聖剣シロノアシを取り返すなんて、あんた相当やり手でしょ? でしょ?」

「いや、今のは貴女が自分で勝手に転んだだけじゃ――」

「はぅぅ。相手の実力を読み違えるなんて、あたしもまだまだみたいね。もっと精進しないと。……さーてと、勝てない戦いに挑むなど愚の骨頂! 真の盗賊は引き際をしっかり弁えてるものよ! というわけで、この借りはいつか返させてもらうわよ、ネコミミ騎士団長さん! ……と、モブキャラ。そんじゃさいなら!」

「しまッ!?」

 

 ツッキーは涙を拭うとビシッと刹那を指差してリベンジを誓い、それからブーツに仕込んでいた煙幕を発動させて洞窟を煙で充満させる。この時ツッキーの狙いに気づく刹那&ナイトだったが、時すでに遅し。煙が徐々に晴れてきた頃には既にツッキーの姿はなかった。あれだけ大量の血を流していたにも関わらず血痕一つ残さず姿を消したツッキーの手際はさすがと言えよう。

 

 

「……何だか相手にするのが非常に疲れる人でしたね、あの人」

「会話がまるで成立してなかったものねぇ」

「うぅ、モブキャラ扱いされた……」

 

 ツッキーがいなくなったことで洞窟がやけに空虚に感じられる中。刹那は重々しいため息を吐き、ナイトはorz状態で涙を流す(※女神は平常運行である)。結果的に聖剣シロノアシを取り戻せたものの、何か大事なものを失ってしまったように感じてならない二人なのだった。

 

 




 泥棒を見事撃退し、聖剣シロノアシを取り戻したせっちゃん。
 やったねせっちゃん! さっすがせっちゃん!(笑)

ふぁもにか「ツッキーはとんでもないものを盗んでいきました。それはあなた方の精神力です!」
刹那&ナイト「「ッ!?」」
ツッキー「イェイ♪」
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