どうも、ふぁもにかです。第3話で私が一番書きたかったツッキーイベントが終了しましたのでここからは本格的に巨壁魔王フミダイン討伐に入っていきます。はてさて、あと何話ぐらい消費することやら。
盗賊ツッキーから聖剣シロノアシを取り戻した刹那たち一行はその後、モンスターをバッサバッサと斬り伏せつつ一度町へと戻って時間を巻き戻し、それからナイトの案内の元で勇者城の安置されてあるオアシスへと全力疾走で赴いていた。
なおこの時、刹那は女神像に300Gを投入して時間を巻き戻してもらうついでに聖剣シロノアシをよろず屋店主に届け、泥棒を捕まえられなかったことを詫びた後に改めて聖剣シロノアシを500Gで購入していたりする。その際「わざわざお金を捨てる必要なかったんじゃないのー?」と不満げに尋ねてくる時の女神だったが、刹那としてはツッキーから取り返した聖剣シロノアシをそのまま自分のものにしたらツッキーとやってることが何ら変わらない気がして嫌だったのだ。
「これが、勇者城……」
「ふふ、やっぱり私の勇者城はいつ見ても迫力が違うわねぇ~♪」
そして、今現在。刹那は魔王フミダインに負けないほどの巨大さを誇っている勇者城を見上げて呆然と呟く。勇者城はクリスタル製のお城の部分、ショートケーキの部分、戦国時代の武者が被ってそうな兜の部分、中世のお城の部分と四層構成になっており、そんな四層構成の勇者城を五本の足がしっかりと支えている。刹那の想像を軽く凌駕する勇者城の強烈なインパクトに刹那は言葉を失くしてただ勇者城を見つめるのみだ。
「セツナさん、聖剣シロノアシをください」
「……」
「セツナさん? セツナさーん?」
「ッ! あ、はい。どうぞ」
刹那は心配そうに自身の顔を覗き込んでくるナイトを前に我を取り戻すと、手に持っていた聖剣シロノアシをナイトに渡す。
「あとはこれを足に取りつければ勇者城を動かせます。すぐに終わらせますのでちょっと待っててください」
(あ。それ足のパーツだったんですね)
「あれ? ナイトくんって勇者城の組み立てとかできたっけ?」
「はい! ダイクンさんに弟子入りして教えてもらいました! ちゃんと免許皆伝してるんで大船に乗ったつもりでいてください!」
「あら? ダイクンに弟子入りしてたの? いつの間に?」
「……『ダイクンにも寿命があるんだからダイクンが元気な今の内に弟子入りしてダイクンの技術を全部盗んじゃいなさい』って僕にダイクンさんへの弟子入りを勧めたのは女神さまじゃないですか」
「ソ、ソウダッタカシラン?」
「……女神さま」
これまた肝心なことを忘れていると気づいた女神が再び刹那からのジト目攻撃を背中に浴びているのをよそに、ナイトは勇者城へと駆け寄り早速聖剣シロノアシを勇者城に取りつけ始める。もちろん、ここでも女神は空気を読んで一時的に時間を止めているため時間は気にしなくても大丈夫である。
(……それにしても、ナイトさんってかなり強いのではないでしょうか?)
挙動不審な女神から作業中のナイトへと視線を移した刹那の脳裏にふとナイトの強さについての疑問がよぎる。当然だ。何せ今の刹那の身体能力はモンスター討伐による超速レベルアップを通して尋常でないほどにまで上昇したにも関わらず、ナイトはこれまで息切れ一つなしに刹那のスピードについてきたのだから。
(魔王を倒し終わったら模擬戦を申し込むのもいいかもしれませんね)
「できましたよ、セツナさん! 女神さま!」
「え、もうですか!?(まだ一分ぐらいしか経ってませんよ!?)」
「はい! 終わりましたので早速勇者城を起動しましょう!」
驚愕に目を見開く刹那のことなどいざ知らず、ナイトは刹那を勇者城の入口へと案内する。かくして刹那は晴れて六本足となった勇者城へと乗り込むこととなるのだった。
◇◇◇
勇者城に乗り込んだ刹那はきょろきょろと勇者城の内装を見渡しながらナイトについていく。いかにも高級そうな赤いカーペットや独特の模様の描かれた青い垂れ幕で飾られている勇者城内装は刹那に西洋の王城を想起させるのに十分すぎるものだった。
「セツナさん、これを両手に持ってください。それで勇者城を起動できます」
「はい、わかりました。……こ、こうですか?」
十数秒後。レンガを積み上げる形で作られたらしいデルタ型の土台にくっついているハンドルを前にしたナイトがハンドルを持つように刹那に指示する。それにうなずいた刹那がおずおずとハンドルを握った、その時。ガクンと、床が上に揺れた。
「ッ!?」
まるでトランポリンにはね飛ばされるようにして宙に吹っ飛ばされた刹那とナイトは、しかし持ち前の身体能力で体を捻って足からしっかりと着地した。
「ナイトさん!? 今のは――」
「外から下を見ればわかりますよ、セツナさん」
ナイトの言葉に従って勇者城の窓枠から半ば身を乗り出すようにして下を見やった刹那は先ほどまで折れ曲がっていた六本の足がピンと伸び上がっていることに気づいた。
「今のは勇者城が勢いよく立ち上がった衝撃ってことですか……」
「はい。これで起動が終わったのでこれからは勇者城を自由に動かせますよ。まずは色々試してみたらどうですか?」
「いえ、どうですかと言われましても……」
再びハンドルを握った刹那は何をどうすればいいのかわからずにただ立ち尽くす。これまでラジコンやゲームと無縁の生活を送り、それ故に操縦プロポやコントローラーなどを使って何かを操作した経験がないことを考えれば刹那が不安がるのも宜なるかなである。
「そうですね。それでは今から僕がお手本を見せますので参考にしてください」
「あれ? ナイトくんも勇者城操作できるの? 勇者じゃないのに?」
「はい。動かせるみたいです。この前気づきました。多分、僕も一時は賢者さまの騎士として世界を救う手助けをしてきたからだと思います」
「それならナイトさんが勇者城を操作して魔王を倒した方がいいのでは? 私、これを上手く操作して魔王を倒せる自信なんてありませんよ」
「……えーと、セツナさんの気持ちはよくわかるんですが、僕だと勇者城が基本動作しか受け付けてくれないんですよ。起動もしてくれませんし。きっと勇者城の求めるタイムストリームと僕のとの間にズレがあるからでしょうね。だからセツナさんに操作してもらった方がいいんです」
「大丈夫大丈夫。今までの勇者たちだってみーんな勇者城の操作はド素人から始めたんだもの。刹那ちゃんだってすぐに使いこなせるようになるわ」
「そう、でしょうか……」
楽観的に笑う女神だったが、刹那の不安は中々消え去ろうとしなかった。
「それじゃあ見ててください、セツナさん! 僕の華麗な勇者城操作テク!」
刹那にハンドルを譲られたナイトは自信満々な声とともに手慣れた手つきでハンドルを回す。直後、勇者城は足を滑らせて真横に転び、いきなりの転倒を予測できていなかった刹那とナイトはバランスを崩して尻餅をつく。
「……ナイトさん?」
「……ナイトくん?」
「あれ? ちょっ、おかしいな?」
刹那と女神から疑念に満ちた眼差しが注がれる中、勇者城を立ち上がらせたナイトはこれまた熟練者を思わせる手つきでハンドルを回すも、今度は勇者城は前方へと転倒する。結果、ナイトは頭から派手にすっ転び、勇者城の転倒を警戒していた刹那は持ち前の身体能力で転びそうになるのをどうにか持ち直した。
「……」
「……」
「……」
「……ナイトさん」
「……ナイトくん」
「……すみません、調子乗りました! ごめんなさい! しばらく動かしてなかったから操作方法とかすっかり忘れました! ホントごめんなさい!」
「……それじゃ刹那ちゃん。まずはその辺のモンスターを蹴散らしながら操作方法を覚えましょ。私も過去の勇者たちの操作を見てるから少しはレクチャーできると思うしね」
「よろしくお願いします、女神さま」
三人の間に得も言われぬ沈黙が流れていく中、ナイトはごく自然な所作でその場に正座すると深々と頭を下げる。一方の刹那は土下座ナイトを軽くスルーして女神の提案を受け入れる。かくして刹那は女神のチュートリアルを元に勇者城の操作方法を学んでいくのだった。
ついに勇者城を操作することとなったせっちゃん。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。あとナイトくんマジナイトくん(笑)