どうも、ふぁもにかです。今回はちょいとグロ注意です。といっても魔王の二つ名でもう大体の想定はついてるでしょうけどね。
魔王ヘラゼーラは口裂け女を彷彿とさせるような狂気の笑みを保ったまま刹那へと接近し黒く脈打つオーラを纏った右手を繰り出してくる。魔王ヘラゼーラの動きが早すぎるせいで手に持つブロードソードで魔王ヘラゼーラの右手を受け止めるので精一杯な刹那。
しかしブロードソードが右手に当たったにも関わらず魔王ヘラゼーラの右手がバッサリ斬れることはなかった。それどころか刹那のブロードソードが魔王ヘラゼーラの右手に接触した刃の部分から徐々に黒ずんでいき、ボロボロと崩れていく。
「なッ!?」
「
刹那はもはや使い物にならなくなったブロードソードを素早く手放して魔王ヘラゼーラから距離を取ろうと後ろへ跳ぶ。しかし。刹那の後退と同時に前へと跳躍した魔王ヘラゼーラによって距離は瞬く間に詰められ、刹那は右腕をガシッと掴まれる。すると刹那の右腕が見る見るうちに黒く染まっていく。
(腕が、私の腕が腐ってる!?)
「紅蓮拳!」
刹那は魔王ヘラゼーラから自身の体を引きはがそうと魔王ヘラゼーラの顔面に氣を纏った左拳をぶつける。このタイミングで刹那が攻撃してくると予測していなかったらしい魔王ヘラゼーラはセツナの繰り出す重い拳をモロに受けて後方へと吹っ飛ばされた。
「レディの顔面を殴るとか……思ったより容赦ないわねェ。今のは割と効いたわヨ」
「……ッ」
ギロリと刹那を睨む魔王ヘラゼーラ。刹那は今の内にさらなる攻撃を叩きこもうとするも魔王ヘラゼーラに射竦められ動けなくなる。この時、刹那の体から先ほど腐らされた右腕がボトリと千切れ落ちた。
幸いにも痛みはない。おそらく腐るという特殊すぎる状況下にて腕を失ったからだろう。それはいいのだが、問題なのは今の自分が片腕だということ。ただでさえ勝てそうもない相手に右腕がないというハンディキャップを背負った状態ではいくらなんでも勝機が無さすぎる。
(それに……)
刹那がチラッと右肩に視線を移すと、どす黒い何かがじわりじわりとその範囲を広げている様子が見て取れる。今は右肩に差しかかっている程度だが、このままでは全身に腐食作用が浸透してしまいかねない。そうなれば待っているのは、逃れようもない死。
「
あまりに絶体絶命な現状に刹那が心の中でマズいと連呼している中。魔王ヘラゼーラは刹那に右手を向ける。すると右手にどす黒いオーラが収束し、レーザービームのごとく刹那に撃ち放たれた。
(――神鳴流対魔戦術絶待防御! 四天結界独鈷錬殻!!)
回避が間に合わないと悟った刹那はとっさに独鈷を4本使って自分を中心に正四面体の結界を作ってどす黒いオーラのビームを防ぐ。しかしどす黒いオーラを受け止めていく内に結界が少しずつ黒く染まり綻びを見せ始める。
(な、なんてデタラメな!?)
ブロードソードや自分の腕のような物質のみならず結界すらも腐らせることができる。刹那は魔王ヘラゼーラの能力の凶悪性に戦慄を隠せないながらもすぐさま結界を放棄し真横に跳んで緊急回避する。刹那が魔王ヘラゼーラの位置を確認しようと前を向いた瞬間、目と鼻の先の魔王ヘラゼーラと目が合った。
(いつの間に距離を詰められた!?)
「さっきのは囮。こっちが本命ヨ」
「カフッ!?」
魔王ヘラゼーラは刹那の鳩尾目がけて拳を抉りこむ。魔王ヘラゼーラの拳打、そのあまりの威力に刹那は血の塊を吐き、そのまま為すすべもなく遥か彼方へと吹っ飛ばされていく。
「
鳩尾に腐食作用付きの拳を打ちこみ、ナイトと同様の形で刹那を吹っ飛ばした張本人はどんどん小さくなっていく刹那の姿を見上げてケタケタと愉悦の笑みを上げる。その姿はまさしく人々が恐れてやまない魔王そのものと言えた。
◇◇◇
あれから。魔王ヘラゼーラに思いっきり吹っ飛ばされた刹那の体はオアシスに安置中の勇者城に激突し、勢いのままに外装を突き破り、床に容赦なく叩きつけられる形でようやくストップした。
体全身に筆舌しがたい激痛が襲う中、右肩だけでなく魔王ヘラゼーラに殴られた腹部からも腐食作用が侵食していくのを確認して本気で死を覚悟した時。刹那の脳裏によぎったのは時の女神と最初に出会った時のこと。当時ボロボロだった自分の体が女神に食べ物を無理やり食べさせられたことで完治したことを思い出した刹那は急いで所持していた薬草を食べて死を回避。
しかし腐食作用を無効化し体を完治させても服の腐食作用は防ぎようもない。そのため腐食作用を受けてボロ布と成り果てた服を別の服へと着替え、さらにご愁傷さまとなってしまったブロードソードの代わりにバトルアクスを装備した刹那は今、スラキア街へと急いでいる。
桜咲刹那という脅威を排除したと思い込んでいるであろう魔王ヘラゼーラがいつハメツの呪文を唱えるかわかったものではないからだ。もちろん、女神は現時点で刹那が超速レベルアップできるように既にタイムストリームをいじり終えている。
(この世界が美味しい食べ物を食べたらすぐに全回復できるシステムでホントに助かりましたよ。……別に薬草は美味しくないただの回復アイテムですけど)
「うんうん。今回ばかりは私もさすがに肝を冷やしたわ」
もしも今の戦闘が麻帆良で行われていたとすればまず間違いなく腐って死んでいただろう。眼前の全長1メートルはありそうな大きなハエのモンスターをバトルアクスで斬り払いつつ刹那が考えているとナチュラルに刹那の心を読んだらしい女神がコクコクと同意の意を示す。
(にしても、あれだけ強力な魔王……一体どうしたら倒せるんでしょうか)
刹那の思考は先ほど戦った相手へと移っていく。腐食魔王ヘラゼーラ。奴の実力は序列2位に相応しいぐらいに凶悪で、そのたたずまいから身に纏うオーラまで、奴を構成するあらゆるものが恐ろしくてたまらなかった。
そして何より恐ろしいのが奴への対処法がわからないことだ。物体だけでなく結界すらも腐らせてしまうほどに強力な能力だ、例え勇者城で突っ込んでいっても勇者城ごと腐らされて終わりなのが目に見えている。遠距離攻撃が可能でかつ強力な武器を使って奴が近づく前に勝負を決めるか、腐食作用の効かない武器で戦えば話は別だろうが――
(……)
刹那はふと足を止める。今回は奇跡的に命拾いできたが次はないという事実に刹那は立ち止まる。魔王ヘラゼーラによる一方的な蹂躙劇は刹那の心に確かな傷痕を残していた。
「ま、とりあえず街に行きましょう、刹那ちゃん。スラキア街は『鍛冶の町』。あの魔王を倒せる武器の一つや二つ、絶対にあるはずよ」
「……そうですね、急ぎましょう」
と、ここで女神から相変わらずの軽い口調で声がかかってくる。きっと今回も女神的超展開が発生すると考えていそうな女神に刹那はつい苦笑をこぼす。そして、今回ばかりは女神さまの楽観論に身を委ねてみよう。大丈夫、次は何とかなると考えることで刹那は傷ついた心をどうにか立ち直らせることに成功した。
『
かくして。魔王ヘラゼーラの世界滅亡宣言が高らかに為され刹那の脳内タイムウォッチがカウントダウンを始める中、刹那はスラキア街へと道のりを急ぐのだった。
ヤベェ、腐食魔王ヘラゼーラの強さが超ヤベェ。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
……あと、ナイトくん。しばらく君の出番ないからスタンバッてなくていいからね☆
ナイト「えッ!? ちょっ!?」