【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

4 / 81

 どうも、ふぁもにかです。今日は何と一日に二話連続投稿です。まぁ連続投稿と言っても一話平均がたったの2000字だから大して凄いことじゃないんですけどね。ええ。それにしても、いざ二次創作として書いてみると案外せっちゃんの性格って把握しずらいですね。こんな感じでいいのでしょうか。



Beginning(4)

 

 それから。時間の経過とともに落ち着きを取り戻した刹那はひとまず時の女神へ向けて自己紹介をした後、女神の話に耳を傾けることにした。食べ物を与えるという形でボロボロだった自分の体を治してくれたことや、時間を止めてハメツの呪文が発動するのを阻止してくれていることから、時の女神に自身への害意はないと判断したからだ。

 

 時の女神の話は刹那にとって簡単に信じられる類いのものではなかった。かつてハメツの呪文や詩で世界を滅ぼそうとした魔王や神の存在に、そんな世界滅亡を企む超常の者たちを倒して世界を救うために尽力した勇者たちの存在。その上、ここでは西暦ではなく女神歴が使われていることや、女神が麻帆良や日本を知らないという事実。

 

 とりあえず女神の話を聞き終えて頭の中をどうにか整理した刹那は、女神への質問を通して今自分が立っている場所が麻帆良とは全く異なる異世界だと理解した。一方、時の女神も目の前の黒髪黒目のネコミミ少女がこことは違う世界からやって来た異世界人だと認識した。なぜ自分が別世界にネコミミがついた状態で降り立ったのかや麻帆良へ帰る手段についてはわからないままだが、自身を取り巻く環境についての情報をある程度入手できた刹那は、今の所はそれでよしとした。

 

「いやぁー。それにしても、これも何かの縁なのかしらね。こんな所で面白そ……ゴホン。金づ……じゃなくて。勇者の資質を持つ選ばれし人に出会っちゃうなんて」

「ゆ、勇者!? そ、そんな! 私が勇者の資質を持っているだなんてとんでもありません! 私はそんな大した人間ではありません! むしろ勇者なら私なんかよりもネギ先生の方がお似合いです!」

 

 刹那は女神の言った『勇者』の言葉に過敏に反応し、かぶりを振って否定する。どうやら女神がつい口に出してしまった本音は刹那の耳に聞こえていなかったようだ。ネコミミの割には集音能力が備わっていないことに女神は内心で安堵した。同時に、女神は己を卑下する刹那の態度にちょーっと気に入らないなと眉を潜めた。

 

 一方。刹那は勇者というワードから自身の担任の姿を想起した。自分よりも小さくて、頼りなく見えるのに、あの日このちゃんを救ってくれた魔法使い。まだまだ未熟ながら己の持てる力を最大限駆使してこのちゃんを助けてくれた勇者で優者な先生。そんなネギ先生の存在を知っている刹那なだけに、女神に『勇者の資質を持つ選ばれし人』と表現されてもそれを素直に受け入れることができなかった。

 

 尤も、女神にとっての『勇者の資質を持つ選ばれし人』とはモンスターをバッサバッサと倒してお金をじゃんじゃん稼ぎ、手に入れたお金を惜しみなく自身に捧げてくれる人のことを指しているのだが。

 

「それに――」

「はいはいそこまで。そのネギせんせーとやらがどんな出来た人間なのかは知らないし謙虚は美徳って言うけど、あんまりやると嫌われちゃうわよ~?」

「えッ!? き、嫌われる!?」

「うん。まず間違いなく嫌われるわね」

 

 「うんうん」と腕を組んでうなずく女神を前に刹那は頭が真っ白になった。脳裏に思い浮かぶのは自分が命を賭してでも守りたいと思っている幼なじみ:近衛木乃香の姿。烏族のハーフたる自分の白い翼を見ても嫌わず、それどころか綺麗だと言ってくれた心優しい少女の姿。その少女が自分の元から離れていく光景を刹那は一瞬だけ想像してしまった。刹那の心を揺さぶるにはその一瞬だけで十分だった。

 

「だから刹那ちゃんはもっと自分に自信を持って――」

「そ、そんな……。うぁ……」

「――って、え? 待って、ちょっと待って!? どうして泣いてるの、刹那ちゃん!? いきなりすぎて理解が追いつかないわよ!?」

「ウグッ、ヒグ」

 

 刹那はボロボロと涙を零す。いきなり泣き出した刹那を前にしてわたわたと狼狽する女神をよそに刹那は泣き続ける。正直言って刹那は参っていた。気付いたら見知らぬ場所にいて。早速世界を滅ぼそうとする魔王にボロボロにされて。この場が麻帆良とは違う異世界だと知って。時間を操れる時の女神でさえも、世界を越えて麻帆良へと到達する手段を知らなくて。

 

 いくら強くても。京都神鳴流を修めた剣士であっても。桜咲刹那はあくまで中学三年生の女の子なのだ。今まで押さえつけていた様々な気持ちが女神の何気ない言葉を契機に涙という形であふれ出てしまうのは仕方ないと言えた。

 

「ああもう。よしよし、刹那ちゃん。時の女神さまの愛の抱擁だよ~。お金はさっきあげたお菓子代や刹那ちゃんの質疑応答代含め後払いできっちり払ってもらうけど、今は私の体の温もりを堪能して楽になりなさいな♪」

 

 止まる気配のない涙を何度も何度も拭いながら幼子のように泣きむせぶ刹那にふと母性本能を刺激された女神は「地雷踏んじゃったのかなぁ?」と考えつつ、エグエグ泣く刹那を優しく抱き止めてその小さな背中をゆっくりとさする。時の女神が珍しく女神らしい働きを見せた瞬間であった。

 




 異世界に来て早速泣いちゃうせっちゃん。せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
 ちなみに時の女神が時間を司る超常的存在だと知って以降、せっちゃんは何気に時の女神さまに丁寧語で接しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。