【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。当初の想定よりマキナさんのターンが長引いてしまった件について。
……マキナさんの性格を気に入った私がやたらめったらマキナさんのセリフを増やしまくった影響ですね、わかります。



Sacred(8)

 

 刹那&マキナの攻撃により気絶し倒れたままの山賊たちを荒縄でグルグル巻きに拘束した後。刹那たちはマキナの鍛冶屋まで戻っていた。身動きが取れないまま放置されている山賊たちのことが少しだけ、ホントにほんの少しだけ気がかりな刹那だったがそれについてはマキナが後で騎士団を要請して彼らに回収してもらうらしい。それなら安心だ。

 

「おっと、礼が遅れたな。ありがとな、セツナ。セツナがいなかったらこうも上手くいかなかった」

 

 マキナがミスリル鉱石の入った袋を手に奥の工房へと進まんとした時、ふと立ち止まったマキナが振り向きざまに感謝の言葉を口にする。

 

「いえ。礼には及びませんよ、マキナさん。私は貴女が作ろうとしている聖刀が欲しかっただけですし」

「それでもだ。で、これから聖刀作成タイムに入るんだが、何か要望あるか? セツナが使う刀だ、何かデザインに希望があるなら取り入れるぞ?」

「……えと、でしたら聖刀を野太刀の形で作ってくれませんか?」

「りょーかい、野太刀だな? 5分で終わらせるから、その辺で暇潰しとけ」

「ご、5分ですか!?」

「あぁ。んじゃまた後でな」

 

 マキナの聖刀を5分で作る宣言に驚愕する刹那。対するマキナは刹那が驚く理由がよくわからず首を傾げるも特に気にすることでもないなと結論づけ、刹那を残して工房へと姿を消していった。

 

 

「……女神さま。この世界では刀は5分で作れるものなんですか?」

「うーん、あの子が規格外なだけなんじゃない?」

「なるほど」

 

 時の女神の指摘に刹那は納得するとこれからはマキナに自分の常識を当てはめないことを心に決める。その後。刹那は女神像に400Gを投入して時間を巻き戻し、それから時間を潰すためにスラキア街を一通り見て回る。

 

(……お金、足りればいいんですけどね)

 

 スラキア街を散策する今の刹那の脳裏によぎる心配事はお金についてだ。今現在、刹那の所持金は1462G。山賊と戦った際も時折お金をすり取ったおかげで割と余裕はあるものの刹那の不安は晴れない。何せ、これから刹那が購入しようとしているのは聖刀だ。それだけ大層な名前のついた刀がそう安値で買えるわけがない。

 

(3万Gとかだったらどうしましょう? 時間を巻き戻すお金のことを差し引いてもとても払える気がしません。……いっそ女神さまに借金を頼んで――あ、ダメだ。何か今凄く嫌な予感がした)

「お。いいタイミングだな、セツナ。ちょうど今できあがった所だ」

 

 唐突に理不尽に強い借金鳥という名の怪鳥に問答無用に襲われる幻覚を見た刹那は女神から借金をするという選択肢をかき消すように首をフルフルと左右に振る。5分経過を見計らって刹那がマキナの鍛冶屋へ戻ると店頭で刹那を待っていたマキナが刹那によく見えるように聖刀を掲げた。光を反射して輝く白銀の刀身と黄色と黒混じりの柄部分で構成された野太刀はまさに聖刀に相応しい輝きを見せていた。

 

「どうだ、いい出来だろ? 私がイメージした通りにはできあがってくれなかったけど、クオリティは保障する」

「どんな感じのを想像していたんですか?」

「んー、なんつうか……もっと常に黄金に光り輝く感じの奴。聖刀って大層な肩書きに負けないぐらいにさ。ま、でもいつもキラキラされててもそれはそれでうざったいし、これぐらいがちょうどいいのかもな」

 

 マキナは藍色を基調とした鞘に聖刀を収め「ほら、試しに振ってみろよ」と刹那に聖刀を渡す。聖刀を受け取った刹那はマキナから少し距離を取り、袈裟切り・切り払い・横薙ぎ・逆袈裟と一通り聖刀を振ってみる。今初めて素振りをしたはずなのに刹那はあたかも聖刀を長年愛用していたかのような錯覚を覚えていた。要は異様にしっくりくるのだ。まだ実戦で試してないからわからないが、ともすれば夕凪よりも使いやすいかもしれない。

 

「……凄いですね、これ」

「そっか。満足いったみたいで何よりだ」

 

 聖刀の試し振りをやめた刹那が感嘆のため息を吐くとマキナは心底嬉しそうに笑う。できればこのまま現実逃避していたかった刹那だったがいつまでも聖刀の凄さに感心しているだけではいられない。刹那はついに己にとっての懸案事項たるお金の話に踏み込むことにした。

 

 

「マキナさん、この聖刀はいくらですか?」

「あぁいや。金はなくていい。私からの餞別だ」

「え!? でも、そういうわけには――」

「私が『金はいらない』っつってんだ、素直に受け取っとけ。……あんたがいなかったら当分は聖刀作れなかったろうし、邪魔で邪魔で仕方なかったバズバ山賊団をフォルス鉱山から追っ払うこともできなかった。だからこれはその感謝の印だ。ホントは街の皆から謝礼金かき集めたいぐらいなんだがな」

「い、いいいいいいりませんよ謝礼金なんて! そこまで感謝されることしたつもりなんてありませんし!(それに仮にもらったとしても女神さまに全額回収される未来が透けて見えますし!)」

「――とか、セツナなら言うだろうなぁって思ったからな。だからその聖刀をタダにすることにしたんだ。でもそれだけじゃまだ私の気が済まないから……そうだな。またどこかで会う機会があればそん時は別の武器をプレゼントしてやるよ。その聖刀よりももっと凄い最高の逸品をな。楽しみにしとけよ、セツナ」

「……はい」

 

 聖刀の値段に懸念を抱いていた刹那だがだからといってタダでもらうのは申し訳ない。そのような感情の元でマキナの申し出を断ろうとした刹那だったがマキナに良いように話を纏められたため、もはやうなずくより他はなかった。

 

 

「で、今度は私からのお願いなんだが……名前をつけてやってくれないか?」

「名前、ですか?」

「あぁ。武器ってのは名前を付けられて初めて完成するもんだと思ってる。ま、その辺の個人的な考え差し引いてもせっかくの聖刀なのにそれっぽい名前がないってのはなんか寂しいだろ」

「……それもそうですね」

 

 マキナから聖刀の命名を頼まれた刹那は頭を悩ませる。自身のネーミングセンスに全く自信がないながらも刹那は目の前の聖刀に似合いそうな名前を模索する。

 

「カナメ、というのはどうでしょうか?」

 

 刹那の脳裏に思い浮かんだ案は『カナメ』という名前。魔王ヘラゼーラを倒せるかどうか、その可能性はこの聖刀が腐食作用の効かない代物かどうかで随分と違ってくる。ゆえにこの聖刀の性能は魔王ヘラゼーラ討伐の(カナメ)となる、といった考えから生まれた聖刀の名前候補である。我ながら安直なネーミングセンスだと思わずにはいられない刹那だったが、存外悪い気はしなかった。

 

「カナメか。聖刀カナメ。うん、いい名前じゃないか。気に入った、今からそいつは聖刀カナメだ。そんじゃセツナ、そいつを大事にこき使ってやってくれよ」

「『大事にこき使う』? ここは『大事に使う』じゃないんですか?」

「いやだってさ、カナメを大事にしようとして家の壁に飾って放置じゃ意味ないだろ? 刀は何かを斬るための物だ、それ相応の使い方をされないのは刀が可哀想だ」

「刀が可哀想、ですか……」

「そーゆーこと。だからじゃんじゃんこき使ってくれ」

「はい、わかりました」

 

 その後。刹那とマキナは別れの言葉を交わしマキナは奥の工房へ、刹那は街の外へと向かう。かくして。刹那は腐食魔王ヘラゼーラ打倒の切り札になり得るかもしれない野太刀:聖刀カナメを手に入れるのだった。

 

 




 ようやく野太刀を手に入れることができたせっちゃん。
 やったねせっちゃん。さぁリベンジタイムだ。
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