どうも、ふぁもにかです。前回に引き続き腐食魔王ヘラゼーラ戦です。今回はいつもと比べてやたら地の文が多いですので適度に読み飛ばしながらの閲覧推奨です。
魔王城2階部分にて。聖刀カナメに魔王ヘラゼーラの腐食が通用しないことを知り勝利への道筋を見出した刹那は蹴飛ばした魔王ヘラゼーラにさらなる追撃を加える気で駆けようとして、しかしまるで糸の切れた操り人形のようにその場にペタンと座り込む。と、ここで唐突に刹那に吐き気やめまいの症状が襲いかかる。
「ぇ?」
「
「な、何を……」
「貴女を相手している間にここの空気をこっそり腐らせてたノ。つまり、ここはもう毒ガス塗れでとてもニンゲンの生きられる場所じゃないってことヨ!」
魔王ヘラゼーラは両目を見開き愉悦に満ちた笑みを形作ると右手に収束させた漆黒のオーラを上空へと撃ち出す。撃ち出された球体型のオーラは刹那の上空でピタリと止まるとドゥンと容易に刹那を呑み込めるサイズにまで膨張。そのまま刹那目がけて垂直に落下してきた。
直撃すればあっという間に体全身を腐らされてしまう。急いで回避しようとする刹那だったが、刹那の意思に反して刹那の体は俊敏に動かない。ここまで魔王城2階に充満する毒ガスを吸い続けてきた影響で体に思ったように力が入らないのだ。
(マズいッ!)
どす黒い塊の範囲から逃れられないことを悟った刹那は苦し紛れに聖刀カナメを上にかざし腐食作用付きオーラを受け止める体勢に入る。対する魔王ヘラゼーラは口角をニタァとさらに吊り上げる。いくら刀に腐食作用が効かずともあれだけ大量のオーラをぶつければ物理的に刹那自体が自身の腐食作用付きオーラに呑み込まれるとわかりきっているからだ。
(
案の定刹那の姿がどす黒いオーラに呑み込まれて見えなくなる中、魔王ヘラゼーラはワクワクとした心持ちで自身の放ったオーラが晴れるのを待つ。一秒にも満たない時間の後。魔王ヘラゼーラの真紅の瞳に映ったのは自身の攻撃で腐りきった床の真ん中にて、聖刀カナメをかざしたままの刹那と聖刀カナメを起点として刹那を中心に半径1メートル範囲に張られた球状の薄白い膜だった。
「な、何なのヨ。何なのよ、その刀ァ!?」
「……ただのマキナさん作の刀ですが何か?」
「私が聞いてるのはそんなことじゃなイ! てかマキナさんって誰!?」
まるで刹那をどす黒いオーラの奔流から守るように薄白い膜を展開する聖剣カナメを指差して動揺のままに声を荒らげる魔王ヘラゼーラ。一方で聖刀カナメの思わぬ性能のおかげで命拾いした刹那は依然として厳しい表情を崩さない。
どうやらこの薄白い膜は魔王ヘラゼーラの腐食作用付きオーラを防ぎきるだけでなく膜の範囲内の穢れた空気の浄化もしてくれるらしい。おかげで今の私に吐き気やめまいの症状はない。
だけど状況は依然として不利だ。今私の身を守ってくれているこの薄白い膜の発動条件がわからないからだ。今は偶然にも発動されたままだがここから一歩でも動けばこの薄白い膜は解除されるかもしれない。そうなれば私は腐食しきった周囲の空気を前にたやすく戦闘不能になってしまう。
脳内タイムウォッチの示す残り時間が『7’82』なのを踏まえるなら息を止めて短期決戦に臨むのも手だが、周囲の腐った空気への対処なしに特攻するのはさすがに無謀すぎる。より確実に勝利を掴み取るにはまずどうにかしてこの腐った空気の充満した空間から逃げ出さないといけない。
(それなら――)
「斬岩剣!」
未だ動揺冷めやらぬ魔王ヘラゼーラをよそに刹那は足に氣を込めて一気に魔王ヘラゼーラの元まで駆け寄るとありったけの氣を聖刀カナメに移して魔王ヘラゼーラの足元の床に叩きつける。氣のこもった刹那渾身の一撃に床の耐久度が勝るわけがないため床は瞬く間に崩壊し刹那と魔王ヘラゼーラはともに下層へと落ちていく。この時、刹那を守るように展開されていた薄白い膜は何事もなかったかのようにスッと解除された。
「ッ!?」
(ま、まさか床を破壊して下に逃げることで腐食された空気から逃れる気!?
自分の体を支える床を失い重力に任せるままに落下するしかない魔王ヘラゼーラは刹那の思惑を読み取り、その甘さにニタリとほくそ笑む。
先ほどは決して悟られないようじっくり時間をかけてじわりじわりと空気を腐らせたために相手が腐った空気の被害を受けるまでに時間差が生じてしまったが、それなら今度は一気に腐らせばいい。一瞬で周囲の空気を完全に腐らせニンゲンが一秒も生きられない世界を構築すればいい。それを可能にするだけの力を自分は持っているのだから。
「
右手に生み出したどす黒いオーラを起点として己の腐食能力を最大限発現させようとした魔王ヘラゼーラ。しかし魔王ヘラゼーラの狂気に満ちた笑みは自分と同じく為すすべもなく下へと落ちているはずの刹那を見た瞬間驚愕へと移り変わった。
「なッ!? と、飛んでル!? 翼が生えてル!? ちょっ、何がどうなってるのヨ!?」
魔王ヘラゼーラが自身の想定をはるかに超える異常事態に目を見開く一方、烏族にとっての禁忌の象徴たる白い翼を解き放ち制空権を獲得した刹那は落ちゆく魔王ヘラゼーラの背後を取る。
刹那が床を叩き壊した理由。一つは魔王ヘラゼーラが予測した通り、刹那にとって有害極まりない腐った空気から逃れるためだ。しかし床の破壊にはもう一つ理由があった。――空を飛ぶ手段を持ち合わせていなさそうな魔王ヘラゼーラの身動きを封じた上で自在に連撃を加えるためだ。
(この魔王はやっぱり空を飛べない! 叩き込むなら今しかない!)
「ハァアアアアアアア!!」
床の破壊により己の危機を脱するとともに絶好のチャンスを掴んだ刹那はここぞとばかりに斬空掌・散、斬岩剣、斬空閃、百烈桜華斬、雷鳴剣、斬鉄閃と立て続けに神鳴流奥義を魔王ヘラゼーラに放っていく。超速レベルアップの恩恵により爆発的に増加した氣に加えて翼の解放により使えるようになった妖気をも聖刀カナメに注ぎ込んだ上での刹那の攻撃は容易に魔王ヘラゼーラに深手を与えていく。
人間であればとっくに死んでいるであろう連撃を受けて腕も足も斬り飛ばされ右目まで抉られ、見るも無残なほどにボロボロと化した魔王ヘラゼーラ。しかしハメツの呪文発動までの残り時間の関係上攻撃の手を緩める気のない刹那はすかさず百花繚乱を放ち、それを喰らった魔王ヘラゼーラは真下へと吹っ飛ばされる。そのまま魔王城1階の床へと仰向け状態でぶつかった魔王ヘラゼーラは「カフッ」と思わず肺の空気を全て吐き出した。
「これでとどめです!」
「ヒゥ!?」
「極大雷鳴剣!」
床に叩きつけられた魔王ヘラゼーラを一瞥した刹那は翼を大きく羽ばたかせて一度バランスを取ると重力を完全に味方につけて魔王ヘラゼーラへと一直線に降下する。そして刹那は莫大な電気エネルギーを帯電させた聖刀カナメをためらいなく魔王ヘラゼーラの額に突き刺した。
ズドォォオオオオ! と特大サイズの雷が落ちたような爆音と衝撃。電気エネルギーは瞬く間に床を伝播し衝撃は魔王城2階から降り注ぐ瓦礫の量をさらに増加させる。刹那と魔王ヘラゼーラとの戦いによりもはや倒壊一歩手前な魔王城内部にて。頭を聖刀カナメで貫かれ電気エネルギーで脳を焼かれた魔王ヘラゼーラは「ぁ、く……」と声にならない言葉を残して跡形もなく消滅した。
かくして。刹那は一度は敗北を喫した相手:序列2位の腐食魔王ヘラゼーラの打倒に見事成功した。それは残り時間『00’65』の出来事であった。
烏族の力を解放して腐食魔王ヘラゼーラに勝利したせっちゃん。
キタ! せっちゃん天使モードキタ! これで勝つる! ……もう勝ったけど!
にしても、巨壁魔王フミダイン戦や腐食魔王ヘラゼーラ戦を通して困った時はとりあえず斬岩剣で地面や床を割るのが刹那流となりつつあるせっちゃん……(´・ω・)