【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回から第5話突入です。ここから勇者刹那30は後半戦へと突入していくんですが、第5話は第4話に比べるとちょーっと盛り上がりに欠けるかもしれません。もしもそのように感じたら『これはきっと第6話への布石なんだ!』と無理やり納得するようお願いします。いや、ホントお願いします。今回はあくまで繋ぎの第5話って感じですし。



第5話 守護魔王セイント
Undress(1)


 

 とある研究所の一室にて。一人の青年が棺桶型の冷凍装置の中で眠っている。体つきは細く顔も痩せこけていて青白くいかにも不健康そうな青年が永遠の眠りについている。

 

「主様……」

 

 安らかな寝顔を見せる青年を見下ろすのは狐耳が特徴的な一人の少年。少年は悲しみに満ちた眼差しで青年を呼ぶ。もちろん青年が少年の声に反応することはない。

 

「俺が、主様の目となります。俺が必ず、主様が見届けたいと願った世界を見届けてみせます。破滅した世界で起こる一部始終を余すことなく見届けてみせます。……だからどうか、どうか安らかにお眠りください。主様」

 

 少年は青年を失った悲しみと青年への深い愛情とが混ざったような声色で優しく青年に語りかける。青年はつい先日、息を引き取った。薬では治せない奇病のせいだ。しかし少年は青年の遺体を冷凍装置に保存した。理由は簡単、こうして体を新鮮なまま保っていればいつか、いつの日か死人を生き返らせる術が見つかるかもしれないとのわずかな希望に縋りついているからだ。

 

(尤も、世界を破滅させれば主様を蘇らせることは限りなく不可能になるでしょうが……)

 

 少年は陰鬱なため息をつく。無理もない。他の人造魔王と違いとある欲求(・・)を解除されている少年にとって世界の破滅は望む所ではない。世界の破滅はそのまま文明の破滅を導く。それはすなわち死人を蘇らせる素地となり得るであろう技術までも消し去ってしまう可能性が否めないからだ。

 

 しかし少年はもうじき世界滅亡のためにハメツの呪文を唱えるだろう。なぜなら今少年のいる研究所に勇者が足を踏み入れないようにするためにハメツの呪文を唱えることが少年に新たに付け加えられた仕様(・・)であり、世界の滅亡こそが少年が主様と呼ぶ青年の望みだからだ。

 

「ヘラゼーラさんがやられた場所から察するに、勇者さんがここにやって来るのも時間の問題でしょうね。……そろそろ準備をしておきましょうか」

 

 少年は青年の遺体をしばし見つめると、名残惜しい思いを断ち切るようにクルッと踵を返して研究所の外へと向かう。

 

(――さて、始めましょうか。主様が望んだ、世界の破滅を)

 

 そして。研究所の外へと出た少年、もとい守護魔王セイントはハメツの呪文詠唱に必要となる魔王城を出現させる作業に入るのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 時は少しさかのぼる。

 

 

(ここをこうして、と)

 

 腐食魔王ヘラゼーラ討伐から3日後。刹那は今現在、コルト大陸の荒野を東に突き進むために勇者城を操作していた。勇者城は刹那の操作に連動して六本足を動かし、ドッスドッスと地響きを生み出している。

 

(……勇者城の操作って結構楽しいですね。何だか新しい自分に目覚めてしまいそうです)

 

 自分の思い通りに動く勇者城。自分が手に持つハンドル一つで自在に巨大な物体を操作できることにそこはかとなく快感を抱きつつある刹那はふと勇者城をジャンプさせてみる。その心境はラジコンの魅力に気づいた少年のものとよく似ている。

 

 ピョイーンと空高く飛び上がりズドンと着地する勇者城。しかし足場が脆かったのか、六本足の内の二本の着地点がそのまま陥没し、刹那たちに思わぬ揺れを提供することとなった。

 

「うわッ!?」

「だ、大丈夫ですか、セツナさん?」

「は、はい。大丈夫で――」

 

 刹那の想定外の衝撃。そのあまりの大きさに刹那の体は軽く吹っ飛ばされ尻餅をつく。即座にナイトから心配された刹那は返事をしようとして、ナイトの声が自分の真下から聞こえてきたことに気づく。嫌な予感のした刹那が下に視線を向けた所で、刹那は自分がナイトを下敷きにした上で尻餅をついていることを知った。

 

 

「す、すすすすみませんナイトさん! 下敷きにしてしまって――」

「いえ。気にしないでください、セツナさん。僕こういう扱い慣れてますから、アハハ」

「慣れてる慣れてないの問題じゃないですって。どこか怪我してないですか? 本当に大丈夫ですか?」

 

 刹那は即座にナイトから飛びあがり、ナイトに手を差し伸べてナイトを立ち上がらせるとペコペコ頭を下げる。一方のナイトは刹那が罪悪感を抱くことのないようヘラヘラ笑ってどうにか刹那の謝罪を止めようとするもあまり効果はないようだ。

 

(あらぁ? あらあらぁ~? もしかしてこれってラブコメ展開って奴? てことは、これで刹那ちゃんがナイトくんを意識し始めて『ナイトくん×刹那ちゃん』の図式ができあがっちゃう感じ? でもってそのまま18禁ルート突き進んじゃう感じ? ……この場合、どっちが受けでどっちが攻めかしら? う~ん、刹那ちゃんもナイトくんも色恋に疎いみたいだし真面目さんだからあんまりそういうの想像つかないわね」

「……女神さま、全部声に出てますよ」

「ち、ちちちちち違います! 違いますよ、女神さま! 確かにナイトさんは優しいいい人ですけど! わ、わわ私には、このちゃんが! このちゃんがいますからぁ!!」

「……いやいや、それはマズいでしょ刹那ちゃん。主に倫理的に、あと社会的に」

 

 と、ここで例のごとくダダ漏れな時の女神の思考により刹那はナイトとそういう関係になることを想像し、ボフンと頭から煙を噴出させる。どうにか女神の誤解を解かないといけないという思いの元、赤面状態で勢いのままにナイト×刹那があり得ないことを主張する刹那だったが、それゆえに今自分がさらっと爆弾発言をしたことに気づくことはなかった。

 

 

「もしかして刹那ちゃんの世界だと女の子同士の恋愛は問題ないってことになってるのかな? むしろ推奨されてたりして」

「かもしれませんね、この反応だと」

 

 刹那からススッと距離を取りコソコソと話し合う女神とナイト。と、その時。ふと視線を勇者城の外へと向けたナイトは「あれ?」と首を傾げた。

 

「どうしたの、ナイトくん?」

「……あれを見てください、女神さま」

 

 ナイトの指し示す先。そこには辺り一面に広がる新緑の森があった。何をナイトは疑問に思ってるのかと女神は考えて、そして現状のおかしさを悟った。今自分たちのいるコルト大陸は荒地や砂漠ばかりの大陸で、緑といっても精々オアシスが点々と存在しているぐらいだ。なのに眼前には青々とした森が確かに存在している。これは異常というより他なかった。

 

「まるでここだけコルト大陸じゃないみたいね。どうなってるのかしら?」

「……行ってみますか、女神さま?」

「うん、ちょっと寄ってみましょうか。魔王絡みの何かかもしれないしね」

「わかりました」

 

 と、ここで落ち着きを取り戻した刹那も同じく現状の不気味さに気づき、女神に森へ向かうかどうか尋ねる。その後、刹那は勇者城のハンドルを握り森へ向けて勇者城を前進させるのだった。

 

 




 相変わらず考えてることがダダ漏れな時の女神さま。
 時の女神さまマジ時の女神さま(笑)
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