【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。突然ですが、この勇者刹那30、今の所は全80話の予定となっていますのでそのつもりでご覧になっちゃってくださいませ。



Undress(2)

 

 今現在。荒地と砂漠ばかりのはずのコルト大陸にポツンと存在していた謎の森にて。刹那とナイトは時折襲ってくるスライム型モンスターを切り払いつつ歩き、その後ろをふわふわ宙に浮いた状態の時の女神が追随する。

 

 本当ならこの森も勇者城でちゃっちゃと突っ切りたい所だったのだが、見た目以上に木々の密集度が凄まじかったために刹那たちは徒歩で森を突き進んでいる。

 

「……随分と鬱蒼とした森ですね」

「だよねー。金目のものもなさそうだし、気が滅入っちゃうわ」

 

 女神がガックリと肩を落とす中、刹那とナイトは分担してキョロキョロと周囲を見渡す。この森自体に奇妙な点は見られない。奇妙なのはやはりコルト大陸に割と大規模な森林地帯が存在するということ。そして――これだけ自然に恵まれた場所だというのに森の周囲や中に人や村の類いが一切存在しないこと。

 

(……これは一体どうなっているんでしょうか?)

「あ、見て見て! あっちから光が差し込んでるわ! あっちに行けばこのうざったい森抜けられるんじゃない!?」

「みたいですね、行きましょうか」

 

 森の沈鬱とした雰囲気にちょっと参っていた女神は森を抜けられそうなルートを見つけると興奮気味にビシッと指を差して刹那たちを置いて一人先へ向かっていく。女神ほどではないがやはり居心地の悪さを感じていた刹那とナイトは女神の後をついていくのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 森を抜けた刹那たちがまず見たものはどこか幻想的な雰囲気を醸し出す草原と湖。そしてこれらの自然と全く調和していない、というか調和する気が欠片も感じられない灰色の無骨な建物と毒々しい赤と紫を基調とした魔王城だった。

 

「ようこそここまでいらっしゃいました、勇者さん」

 

 眼前の光景のミスマッチさに何とも言えない気持ちを抱える刹那たち三名。と、その場に留まるのみの三名の前にスタスタと近づく人影が一つあった。その人影こと、狐耳と藍色の髪が特徴的な少年は優雅に頭を下げて歓迎の意を示す。

 

「そこの森はいかがでしたか? 俺の主様の実験の副産物によりできあがった、一定以上のタイムストリームを持つ選ばれし者しか認知することのできない森なんですが……心が安らぐ、いい森だったでしょう?」

「「「……」」」

「え? 何ですかその、信じられないものを見るような目? え、まさか落ち着きませんでしたか、あの森? ……おかしいですね、俺にとってはとても過ごしやすい最高の森なんですが」

 

 先ほど通った森の薄暗さや不気味さを体験してきたばかりの刹那たちは少年の発言に信じられないと目を丸くする。一方の少年も刹那たちが森に対して好印象を持っていないことがよほど意外なのか、首を捻る。

 

 

「私を勇者と呼ぶってことは、貴方も魔王ですか?」

「はい、その通りです。俺は守護魔王セイント、序列3位の中途半端な魔王です」

 

 刹那はこれまで初対面であるはずの自分のことを『勇者』と呼んだ巨壁魔王フミダインと腐食魔王ヘラゼーラを脳裏に浮かべつつ尋ねるとすぐに肯定の返事が返ってきた。

 

「……貴方は人を見下さないんですね」

「そうですね。俺にそのような仕様(・・)はありませんから。わざわざ人に嫌われるような言動を取る理由がありません。ついでに言うなら俺にはハメツの呪文を唱えて世界を滅ぼしたいなんて欲求(・・)もありません」

「……貴方みたいな魔王もいるんですね」

 

 ここまでの会話を経て、刹那の中に迷いが生じ始める。まるで敵意の感じられない魔王セイントを殺すかどうかについて刹那の心は揺れ動く。

 

 今まで戦ってきた魔王は人を見下し世界の破滅を心から望む外道だった。だからこそ刹那は『世界を守るため』や『麻帆良へ帰るため』といった大義名分のために躊躇なく魔王を殺すことができた。が、眼前の魔王セイントにはこれまでの魔王のような残虐性が存在せず、とても脅威には思えない。その事実が刹那に魔王セイントに聖刀カナメを突きつけるかどうかの判断を鈍らせる。

 

 

「不思議ですか? 世界を破滅させる気のない魔王は? ですが、これは俺だけに施されてる仕様(・・)ですから他の魔王の皆さんは喜んでハメツの呪文を唱えると思いますよ?  まぁかく言う俺もこれからハメツの呪文で世界を滅ぼすつもりですけどね」

「さっきと言っていることが矛盾してますよ。世界を破滅させる気ないんじゃなかったんですか?」

「ありませんよ。私的感情で世界を滅ぼしたいという欲求(・・)はありませんし、できるなら世界を破滅させたくありません。ですがこの建物を守るために、この建物に決して勇者を侵入させないためにハメツの呪文を唱えろとの主様の命令がありますしね」

「建物? その、魔王城の後ろにある灰色の建物ですか?」

「はい。それに、何より破滅した世界を主様はお望みです。ゆえに今から世界を滅ぼさせてもらいます」

「そんなこと、絶対にさせません」

「させるさせないじゃないですよ、勇者さん。世界の滅亡はもう決まっているんです」

 

 刹那は魔王セイントに世界を破滅させようとする意思があると知ると即座に聖刀カナメを構えて斬りかかる。続く魔王セイントの言葉を無視して上段から聖刀カナメを振り下ろす。しかし刹那の聖刀カナメは魔王セイントに届かなかった。

 

「ッ!?」

 

 バチンという音とともに聖刀カナメを弾かれた刹那は弾かれた衝撃を利用して一旦後退する。と、この時。刹那は魔王セイントと自分との間に半透明の壁のようなものを見た。

 

 

「勇者さん、貴女にはヘラゼーラさんを倒した実績があります。どうやってあの化け物を倒したのかは知りませんが、彼女を倒した貴女に俺ごときが勝てるとは思っていません。序列の差は絶対ですから。ゆえにあらかじめ魔王城の周囲50メートル範囲に結界を張らせてもらいました」

「結界?」

「はい。俺が認めないもの・認知できないもの一切の侵入を拒む特別な結界です。これがある限り貴女はこれからハメツの呪文を唱える俺を阻止できません。あくまで俺の目的は世界を滅ぼすこと。わざわざ勝てないとわかりきっている相手と戦うつもりも、その必要もありません」

「なッ!?」

「貴女にこの結界を攻略する術はありません。ただ坐して破滅を受け入れることをオススメしますよ、勇者さん。破滅した世界も住めば都。きっと悪い世界ではないでしょうしね」

 

 魔王セイントは眼前に展開済みの結界をトントンと指で叩いて己の優位性を示してフッと笑うと刹那たちに背中を向けて悠然と魔王城へと帰っていく。「待て!」と刹那が何度か聖刀カナメを結界に叩きつけるも全く効果なし。結局、魔王セイントは誰にも邪魔されることなく魔王城の中へと消えていくのだった。

 

 




 守護魔王セイントはせっちゃんと戦わずして世界を破滅させるつもりのようです。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。

~おまけ(現状で判明している人造魔王リスト)~
 序列1位 『???』
 序列2位 『腐食魔王ヘラゼーラ』
 序列3位 『守護魔王セイント』
 序列4位 『残虐魔王カマセイヌ』
 序列5位 『巨壁魔王フミダイン』
 序列6位 『惰眠魔王スリィピ』
 序列7位 『???』
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