どうも、ふぁもにかです。今回の話は書いてて凄く楽しかったです。なんで楽しかったのかは本編を見れば大体わかるかと思いますので、それではどうぞ。
二つの尖塔の下でナイトと別れて左側の塔へと入った刹那。ここで脳内タイムウォッチに意識を向けると残り時間が『01’99』と、かなりギリギリになっていたので慌てて100Gを女神に直接献上して時間を巻き戻してもらう。ちなみに今の刹那の所持金は213Gである。
「女神さま、タイムストリームはどこから感じますか?」
「上からだね。最上階辺りじゃないかな?」
「わかりました」
刹那は女神の返答を受けて躊躇いなく背中の翼を展開し聖刀カナメによる斬岩剣で天井を破壊しながら上の階へと突き進んでいく。普通に階段を使ってなんていたら絶対に間に合わないとの考えの元での行動だ。まるで我が道を遮るものなど何一つありはしないとでも言わんばかりに一切勢いを減衰させずに上へ上へと飛翔する刹那の姿はまるで一筋の閃光のようだった。
そうして刹那がほんの5、6秒で塔の10階地点にまで到着した時。さらに上へと突き進まんとした刹那の視界の端に何かが映った。刹那が視線を移すと「む、きゃああああああああああああああ!!」と、甲高い悲鳴を上げて奥の階段から転がり落ちてくる一人の少女の姿があった。それは刹那にとって非常に見覚えのある人物だった。
(あ、あれは……!?)
「なに、何なの!? なんであんなにバカ強いのあいつ! ヘビのくせに! うねうねしか取り柄のないヘビのくせにヘビのくせにヘビのくせにぃぃぃいいいいいいい!!」
刹那が翼をしまってその場に降り立ち、女神が場の空気を読んで一時的に塔の外の時間を止めてハメツの呪文発動を阻止する中。少女はガバッと立ち上がると髪をグシャグシャにして苛立ちの感情を全て言葉にさらけ出す。ついさっき階段から転がり落ちてきたにも関わらずピンピンしている少女、それはついこの前勇者城のパーツである聖剣シロノアシを我が物にしようとした月詠のそっくりさんことツッキーだった。
(まさかこんな所でまた出会うとは思いませんでしたよ……)
「――って、ゲッ!? 誰かと思えばあの時のネコミミ騎士団長さん!? うぅ、ネコミミ騎士団長さんがこうも本気であたしを捕まえようとしてくれてるなんて……こういうのって盗賊冥利に尽きるって言うんだっけ? あたし感激! 超感激だよ! けど今はちょーっとばかりタイミングが悪いかにゃー、うむ」
サラシ・ホットパンツ・マント・ブーツだけという相変わらず露出度の高い服装をしているツッキーは刹那の姿を捉える。嫌そうな顔をしたかと思えば目をウルウルとさせて感激の意を示し、その数秒後には気まずそうにソローリと目を逸らす。まだ何も話していない刹那相手に何とも忙しい盗賊である。
(この人を相手にするのは非常に面倒ですし、ここは無視して最上階を目指し――)
「あ、そうだ! ねぇねぇネコミミ騎士団長さん、あたしと共闘しない?」
「え?」
と、ここでツッキーは何か名案を閃いたと言わんばかりの表情でポンと手を打ち、ニコニコ笑顔で刹那に歩み寄る。対する刹那はツッキーからのまさかの提案につい困惑の声を上げる。眼前の盗賊稼業を営むツッキーは自分のことを騎士と勘違いしておりさらには敵視までしている。そんな相手から協力要請されるとはよもや思っていなかったのだ。
「……えーと、何のつもりですか?」
「いや実はさ。この上の階にいるヘビさんが守ってるお宝ゲットしたいんだよね、あたし。でも盗もうとしてもヘビさんのガードがやたら堅くて突破できなくてさ、だから直接ヘビさん倒して強奪するしかないんだけどあたしってばか弱い乙女だからどうも決定打に欠けるのよね。でも! でもでもでーもぉ! ネコミミ騎士団長さんは巨大兵器持ってるでしょ!?」
「巨大兵器? ……勇者城のことですか?」
「そうそれ! 多分それ! それ使ってこの塔に突っ込めばヘビさん楽に倒せるじゃん? もちろんタダで協力しろとは言わないよ? ゲットできた暁にゃお宝山分けする。きっちり半分こにする。だからお願い、ネコミミ騎士団長さん! あたしと協力してヘビさん倒してお宝ゲットしようよ! あたしを捕まえるのはその後でも全然遅くないんだしさ。ね? ね? いいでしょ?」
「……その話、本当ですか?」
以前巨壁魔王フミダインを圧殺した勇者城パワーを当てにして刹那に協力を持ちかけるツッキー。普段の刹那であれば金目のものに釣られてツッキーの提案に食いつくなんてことはなかっただろう。しかし今現在、時間を巻き戻すお金が足りなくなるのではないかと不安を抱いている刹那が『お宝山分け』という言葉に反応しないわけがなかった。
「うん! 本当! プリティでレジェンドなこのツッキー様はウソを吐かないことを信条にしてるからね!」
「ならその話、乗りましょう。ですが勇者城は使えません」
「え、えええええええええ!? ちょっ、なんで!? どゆこと!? もしかしてあれ他の誰かに盗まれちゃったりしたの!?」
「いえ、ここ近辺の森の密集度が凄くて勇者城じゃここまで来れないんですよ」
「あぁー、にゃるほどねぇ。この辺ホント気持ち悪いぐらいに木が密集しちゃってるもんね。日光もほとんど届かないし。てことは生身であのヘビさんと戦うのかぁー。マジかぁー、う~む……ま、ネコミミ騎士団長さん強いし二人なら何とかなるかな、うん!」
刹那から勇者城を使えないと言われ一時はガックリとうなだれるツッキーだったがすぐにポジティブ具合を取り戻す。そういった気持ちの切り替えの早さには内心で素直に感心する刹那だった。
「ですが、一つ条件があります」
「ん? なになに? 何でもどーぞ」
「私のことはセツナと呼んでください。ネコミミ騎士団長さんではなく」
「えー? ネコミミ騎士団長さんはネコミミ騎士団長さんじゃん。なんでわざわざ別の名前で呼ぶ必要あるの?」
「……そうですか」
「ッ!? じょ、冗談! 冗談冗談! ほんのジョークだってば! だから何事もなかったかのように帰ろうとするのやめて! セツナっちストップ! 待て! お座り! お手! 伏せ!」
「私は犬か何かですか。というか、セツナっちですか……」
『ネコミミ騎士団長さん』という長ったらしいあだ名じゃなくて名前で呼んでほしいとの意思を伝えるもツッキーに受け入れられなかったため、刹那はごく自然な所作でツッキーの前から姿を消そうとする、フリをする。するとツッキーは刹那の腰にガシッと抱きつき刹那を逃がさないように奮闘しつつ刹那の名前を呼ぶ。よほど刹那という協力者を失いたくないのだろう。
本当なら『セツナっち』という呼ばれ方も個人的に微妙だったのだが『ネコミミ騎士団長さん』と呼ばれることはなくなったので刹那は妥協することにした。
「まぁいいでしょう。短い間でしょうが、よろしくお願いします」
「うん! よろしくね、セツナっち! あ、そういやあたしの自己紹介ってしたっけ? してないよね? それじゃ……コホン。あたしはナツキ! いずれこの世の全てを盗みきるプリティーでレジェンドな盗賊だよ! 気軽にツッキーって呼んでね、ネコミ――じゃなくてセツナっち!」
ツッキーことナツキは刹那から差し出された手を見やるとニッと眩いばかりの笑みを浮かべて刹那の手を両手で掴み取り、自己紹介をするのだった。
ツッキーもといナツキが再登場しました。アホっぽさは健在の模様。
せっちゃんガンバッ、超ガンバッ(精神的に)