どうも、ふぁもにかです。おそらく今回までで説明回は終了でしょうね。あー、早くせっちゃんにモンスター狩りやらせたいなぁ……
「先ほどはお見苦しい所を見せてしまって誠に申し訳ありませんでした。女神さま」
しばらくして。時の女神さまと刹那しか動くものが存在しない静止世界で感情を爆発させて泣くだけ泣いた後、泣きやんだ刹那がまず最初に取った行動は膝を正座の形に折りたたんで女神へと深々と頭を下げることだった。要するにジャパニーズ土下座である。
「あー、別にいいから。土下座とかいいから。そんな無駄に洗練された無駄のない綺麗なフォームで土下座とかしなくていいから。後でたくさんお金もらうし。それより気持ちの整理はついたのかしら、刹那ちゃん?」
「はい、おかげさまで。ところで女神さま、貴女に尋ねたいことがあるのですが」
「ん、何かな? 私の知ってることなら何でも答えるけど? あ、やっぱ私のスリーサイズはなし。聞かないでね」
「聞きませんよ、興味ありませんし」
「きょ、興味ないって……ムキャー! 何よ刹那ちゃん! 自分のスタイルに自信でもあるわけ!? ちっぱいのくせにぃ!」
「ち、ちっぱ……ゴホン。私が聞きたいのは今回ハメツの呪文を唱えて世界を滅ぼそうとしている残虐魔王カマセイヌとやらについてです。貴女の話だと、魔王は勇者によって滅ぼされたのではないのですか?」
「あー、あれね。あそこにふんぞり返ってる魔王ね」
刹那は正座したまま居住まいを正すと、ふざける女神をどうにかスルーして魔王カマセイヌについての疑問を率直に尋ねる。すると女神は不思議なものを見るような瞳を、刹那によって扉が破壊され内装が丸見えな魔王城へと向ける。
「あれなんだけど……な~んか今まで出てきた魔王とは波長が違うのよねぇ。カテゴリー的にはあれは魔王だし、見た目も魔王のそれに変わりないんだけど、本物と比べるとどこか異質でね。まだ確信は持ててないんだけど……あれはさしずめ何者かが作った人造魔王って所じゃないかしら?」
「……人造、魔王」
刹那は女神の言葉を反芻する。魔王カマセイヌを倒す気でいる刹那は時間と精神的に余裕があることもあってか、考えにふける。人の手によって造られた魔王ならさすがに天然モノの魔王よりは劣っていることだろう。少なくとも天然の魔王より実力が上だとは思えない。でも、私はあの魔王に勝てるだろうか。魔王の咆哮一つで殺されかけた私にあの魔王を倒す術はあるのだろうか。
いや、勝てる勝てないじゃない。勝たなきゃいけないんだ。今私のいる世界が麻帆良とは違う異世界なのはわかった。だけど。だからといって、魔王カマセイヌの唱えているハメツの呪文の効果が麻帆良まで及ばないとは限らない。そもそも魔王カマセイヌをどうにかしなければハメツの呪文が発動してしまう。そうなれば現時点でこの異世界にいる私はまず間違いなく死んでしまう。
死にたくない。今はまだ死にたくない。色々あって、このちゃんと一緒に日々を過ごせるようになってからまだ日が浅いんだ。もっとこのちゃんと一緒に色んな経験をしたい。もっともっと思い出を作りたい。このちゃんだけじゃない。あの時お世話になったネギ先生や明日菜さん、それに日頃から私を支えてくれた龍宮とももっと話がしたい。他にもまだ麻帆良でやりたいことはたくさんある。数えればキリがない。
だから。ここで負けるわけにはいかないのだ。どうにかして勝利をもぎ取らないといけない。魔王を超えないといけない。尤も、ハメツの呪文発動まであと0,03秒なため、まずは目の前の時の女神さまに時間を巻き戻してもらわないと話にならないのだが。
「そそ。といっても相手は魔王。人造とはいえれっきとした魔王よ。だから実力は折り紙つき。ただ立ち向かった所で勝ち目はないわ。ここ一帯のモンスターを倒してレベルを上げてから挑まないとさっきの二の舞になっちゃうわよ」
「で、ですが女神さま。そんな呑気なことをしていたら時間が――」
「ふっふっふっ。そうよね? 30秒なんてあっという間に経っちゃうわよね? そ・こ・で! 『時』の女神たる私の出番ってことよ。危なくなったら何度でも時間を巻き戻してあげるから、安心してレベル上げに専念しなさいな。時間を巻き戻すついでに刹那ちゃんのタイムストリームを弄って超速レベルアップができるようにしておくからほんの30秒でも十分レベル上げができると思うわよ?」
「……何が目的ですか?」
女神からの提案に刹那はしばし沈黙し、一つの問いを投げかける。女神を見つめる漆黒の瞳には女神に対する警戒の念が宿っている。時間を巻き戻してくれるのはありがたいし願ってもないことだが、あまりに話が旨すぎる。女神さまは一体、何を企んでいる? 女神の意図が読めない刹那は女神に懐疑の視線を送る。すると女神は一瞬きょとんとした表情を浮かべたかと思うとニコッと満面の笑みを浮かべた。何だか全力で逃げ出したくなるような笑みだった。
「あら? 話が早くて助かるわ。賢い子は好きよ? 私は時の女神さまだけど時間を巻き戻すのも楽な作業じゃないのよね。だから今回は初回サービスってことで特別にタダにしておくけど、次からはちゃんと村にある女神像の前でお金を払って時間を巻き戻してくださいって祈ってね。一回目なら100G、二回目以降は前回払ったお金に100Gを上乗せして払ってもらうよ」
「お金、ですか……」
「うん。あ、お金はモンスター倒せば手に入るから心配ないよ。しっかり回収してね。別にお金が足りなくても一回だけなら時間を巻き戻してもいいけど、その時は途中で身ぐるみはがしてすっぽんぽんにするから覚悟してね。女の子だからって容赦しないから♪」
女神はテヘッと舌を出して愉快そうに笑う。しかし目は全然笑っていなかった。女神さまならやりかねない。女神を前に戦慄を覚える刹那だった。
お金の払えない子には誰だろうと容赦のない時の女神さま。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。