【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回は守護魔王セイント戦の前半部分……ですが、今回の魔王戦は最終的に今までの魔王戦とはちょーっとばかり趣向の違ったものとなりますので、お楽しみに。尤も、勇者30プレイ済みの人はもう予測済みでしょうけどね。



Undress(8)

 

 はたして刹那が魔王城の扉を聖刀カナメで斬り破った先に玉座に背中を預け狐耳をピコピコさせている守護魔王セイントの姿があった。当の魔王セイントは突如として発生した爆音とともに現れた刹那に「なッ!?」と目を見開く。

 

「こ、これは一体……!? まさか、結界を力技で破ったのですか!? あれだけ強固に作り上げたというのに――」

 

 動揺のままに声を上げていた魔王セイントはハッと我に返り自身を落ち着けるようにフルフル首を振ると玉座を足場に跳び上がりスタッと刹那の前に着地する。

 

 

「……どうやら俺は貴女を侮っていたようですね。こうなった以上、俺自身が時間稼ぎをして世界を破滅させるまでです」

「そんなこと、絶対にさせません!」

 

 刹那は足に氣を注ぎ込んで真正面から魔王セイントに迫る。とはいえ刹那に正面から魔王セイントに斬りかかろうという意図はない。あくまで超速レベルアップの恩恵を受けて莫大となった氣を存分に使った現時点における刹那の最高速に魔王セイントがついてこれるか確認するために刹那はまっすぐに魔王セイントへと近づく。

 

「ッ!?」

 

 が、ここでゾワリと背筋をほとばしる悪寒を感じた刹那はダンと床を強く踏みつけて真横へ跳ぼうとするも、いきなりの方向転換に体が上手くついていけずつい斜め前方へと転がっていく。グルグルと回転する視界の中で刹那の目が捉えたのは、もしも直進したままであれば今頃自分の首があったであろう位置にいつの間にか現れていた水色の薄い板のようなものだった。

 

 

(あれは……!?)

「へぇ、これを見切りますか。さすがは勇者さん、初見でかわされるとは思いませんでした」

 

 刹那は床についた手を起点に跳び上がり両足で着地する。そうして速やかに体勢を整え直した刹那を見据えて魔王セイントは感心したように息を吐く。

 

「今のは、一体……」

「ただの結界魔法ですよ。結界魔法とは言うなれば薄い板で空間と空間とを分断する、隔離の魔法です。ですから、ほら」

 

 魔王セイントがクイッと人差し指を動かした瞬間、またしても嫌な予感がした刹那はすぐさまバックステップをとる。すると魔王セイントから遠ざかる刹那の目についさっきまで刹那の右腕があった場所に何の前触れもなくニュッと現れた板状の水色の結界が映る。

 

「例えば貴女の右腕部分に差し込むように結界を張れば腕を切断することだってできますよ、と言うつもりだったんですが……避けられてしまいましたね」

 

 残念そうに眉を下げる魔王セイントを前に刹那は思わず身震いをする。無理もない。魔王セイントの物言いから察するに、もしも今一瞬でも反応が遅れていれば刹那の右腕がバッサリ切断される所だったし、悪寒に従って真横に方向転換しようとしなければ今頃刹那は首と胴体をと分離させられていたのだから。

 

 

(これ、魔王ヘラゼーラの腐食能力よりも凶悪な能力なんじゃ……)

「結界魔法は守護のためだけのものでなく、攻防一体の優れものです。……さて、勇者さん。貴女はどうやって俺を30秒で攻略しますか?」

 

 魔王セイントは自身を取り囲むように立方体の結界を三重に展開して自身の守りを固めながら、うっすらと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 刹那は魔王セイント相手に攻めあぐねていた。魔王セイントに接近しようとしても自身の移動先を予測した魔王セイントが刹那の体を分断せんと的確な位置に生み出す結界のせいでうかつに近づけず後退を余儀なくされる。かといって斬鉄閃や斬空閃、百花繚乱、斬空掌・散などの氣を飛ばして攻撃するタイプの神鳴流の技を使っても魔王セイントを守る三重の結界に防がれる。結果、刹那は魔王セイントをその場から一歩も動かすことすらできず、ただただ時間だけが経過していく。

 

 

(マズい……!)

 

 脳内タイムウォッチからハメツの呪文発動まで15秒を切っていることを確認した刹那の心は徐々に焦りに満たされていく。焦燥感に駆られるままに全力で突撃する刹那だったが、隙あらば刹那の体の一部を断絶せんと水色の結界をポンポン生み出してくる魔王セイントのせいでまたしても後退せざるを得なくなる。

 

 序列2位の腐食魔王ヘラゼーラを倒した刹那に過剰に警戒心を抱く魔王セイントによる、聖刀カナメの届く範囲に入らないための徹底的な刹那の進路妨害の布陣。刹那はその布陣に上手く切り込めない。突破口を見つけられない。

 

 保身と時間稼ぎを第一に考え刹那の攻撃を妨害する魔王セイントと攻撃を第一に考え保身を二の次とする刹那。これがもしも普通の戦いであれば集中力の勝負と言えるだろう。刹那が集中力を切らせば結界によって体を強制的に分断させられ、魔王セイントが集中力を切らせば結界による妨害を上手いことくぐり抜けた刹那によって三重の結界を破られかねないのだから。

 

 しかし今は事情が違う。刹那にはそもそも30秒しか猶予が与えられていないのだ。その時間ももう残り12秒にまで減っている。時の女神にはお金が足りない状態で無理を言って時間を巻き戻してもらった以上、次はない。ゆえに、悠長に相手の集中力が切れるのを待っている状況ではない。何としてでもこの12秒で勝負を決めなければならない。

 

 

「えッ!?」

 

 刹那が多少の怪我を覚悟した上で魔王セイントへ特攻を仕掛けようとした時、突如周囲の光景が灰色一色に染まり魔王セイントの動きがピタリと止まる。刹那はこの光景を知っている。かつて女神と初めて会った時に見た、女神が自分以外のあらゆる時間を止めた際に生まれる光景だ。

 

「せ・つ・な・ちゃーん♪」

 

 脳内タイムウォッチが『09’99』で停止する中。ニコニコ笑顔を顔に貼りつけて上空から舞い降りてくる女神。なぜか語尾にハートマークが三つほどつけられていそうな感じの猫なで声で刹那の名前を呼ぶ女神。何だか嫌な予感しかしない刹那であった。

 

 




 ……おや!? 時の女神さまの ようすが……!
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