どうも、ふぁもにかです。ここからは第5話エピローグ、という名の物語全体に関わる重要な繋ぎ回となっております。ホントにここらが最も重要な箇所となっていきますので私もちょっと本腰入っちゃってます。起承転結で言うなら『転』ですかね、うむ。
Note(1)
時の女神に服を強制的にひん剥かれ全裸を魔王セイントに晒された羞恥心による暴走からしばらくして。どうにか我を取り戻した刹那は相変わらず全裸状態で歩く。どうか誰もいませんようにと内心で祈りつつ、自身の体を覆い隠すように翼を展開しつつ刹那は歩く。ちなみに今の自分の格好を見られたくないとの理由でただいま絶賛気絶中のナイトをそのまま魔王城に放置している刹那である。哀れナイト。
(まさか翼をコート代わりに使うことになる日が来るとは思いませんでした……)
今現在。刹那は魔王城周辺に建つ灰色の無骨な建物を探索していた。守護魔王セイントが『主様』とやらの命令の下、ハメツの呪文を唱えてまで刹那を侵入させまいとした建物である。興味を抱かない方が無理というものだ。
「……何にもありませんね」
「何にもないわねぇ」
ただ延々と続く薄暗い廊下を刹那は周囲に気を配りつつ歩いていく。嫌に殺風景で、ひんやりとした冷たい雰囲気を醸している廊下を刹那はスタスタと歩いていく。と、ここで刹那は前方の薄茶色のドアの存在に気づいた。
何が待ち受けているかわからない。臨戦態勢のまま慎重にドアを開いた刹那の視界に入ったのは雑然とした部屋だった。足元には床の色が見えないレベルに書類や本が散乱していて足の踏み場がなく、部屋の周囲をグルリと囲うように設置された、天井に届かんばかりの高さの本棚は刹那にそこはかとなく圧迫感を与えてくる。
「ここは……」
「あらら。随分と散らかってるわねぇ」
さっきまで刹那の歩いていた何にも置かれていない空虚な廊下とまるで印象の違う部屋に刹那は足を踏み入れる。今の刹那は裸足のため慎重に足場を選びつつ部屋の中へと進む。そうしてキョロキョロと視線をさまよわせていると、ふと刹那は机の上に置かれた一冊のノートを見つける。何となく気になった刹那はノートを開き、刹那の知らない言語でビッシリと埋め尽くされたそれに思わず「うッ」とうめき声を上げた。
「翻訳しよっか?」
「……お願いします」
刹那から差し出されたノートを手に取った女神は軽く文字に目を通した後にノートの内容を読み上げ始める。そこには刹那と女神にとって驚愕の事実が綴られてあった。
『初めまして。今君がこれを読んでいるということは私はもう既に死んでいるのでしょう。今が女神歴何年で、君が一体何者なのかはわかりませんが、せっかくなので私がどのような存在で何を成し遂げたかについてここに記しておきます。私はセラフィエント・ロール。女神歴1400年の世界で人造魔王を造り出し世界の破滅を図った、ただのしがない研究者です』
「……女神さま、これはまさか――」
「うん。どうやらこれは人造魔王の開発者の手記みたいよ。となると、さしずめここはセラフィ何とかの研究施設って所かしらね」
「ッ!?」
「続きを読むわよ」
何気なく手に取ったノートが人造魔王の開発者と密接に関わるものだとは露にも考えてなかった刹那が驚きに目を見開く中、女神はページをめくって続きを読み上げる。
『私がなぜ世界の破滅を企んだのか。なに、簡単な理由です。……この世界は綺麗です。綺麗で実に美しいです。人々を脅かす魔王も神もいない、脅威という脅威が全てもれなく消え失せた世界。それは輝かしい光に満ちあふれた世界であり、人々が希望を胸に日々を生きている世界です』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『なんと素晴らしいことでしょうか。あらゆる脅威に敢然と立ち向かっていったであろう先人たちが求めてやまなかったものを女神歴1400年の人々は何の代償もなしに享受することができるのです。誰もが願ってやまなかった理想的な世界が今、女神歴1400年に実現されているのです。なんという幸せでしょうか。何という幸福でしょうか』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『……ゆえに、壊したくなるのです。平和とは退屈と同義です。24時間ずっとぬるま湯に浸かったままみたいで気持ち悪くて仕方ありません。とても刺激がなければつまらなすぎてやってられません。ゆえに、ある時私は世界を壊そうと決めました。幾多の先人たちの屍の上に実現された平和で素敵な世界を完膚なきまでに打ち砕くと決めました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『平和な世界がある日突然跡形もなく壊れゆくと知った時、人々は何を思うのでしょうか? 泣き叫ぶのか、狂うのか、暴れるのか、祈るのか、笑うのか、逃げるのか、自殺するのか、諦めるのか、固まるのか、愛しい誰かと一秒でも長く一緒にいようとするのか。想像すれば想像するほど実際に世界が破滅していく際の人々の反応を知りたくなってしまいました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『しかし実際に世界を破滅させるといっても私はただの一研究者、世界を蹂躙できるほどの圧倒的な力など持ち合わせていません。そのため世界を絶望に陥れるには世界を破滅へと導くための役割が必要だと、人々に抗えぬ絶望を与える絶対者が必要だと思い至りました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『絶対者として何を据えるべきか。色々な絶対者を想定してシミュレートを繰り返した末に私は魔王を作ることを決めました。かつてハメツの呪文で手っ取り早く世界を滅ぼそうとした魔王に世界の破壊者と、ついでに創生者となってもらおうと考えました。壊れきった世界がゼロからまた始まっていく光景を見るのもまた別の趣があってきっと楽しいだろうと何となく思えたからです』
と、ここまで女神が手記の内容を翻訳する中で刹那はセラフィエントの心情について理解する努力をやめた。これはとても自分には理解できない、狂いに狂った人間の考えと結論づけた刹那は手記の続きを女神に目線で催促する。女神は刹那の視線に答えるように一つうなずき、また一つページをめくって続きを読み上げるのだった。
ここで終わらせるのは非常に区切りが悪いのですが、2話に分けないと文字数がやたら長くなっちゃうのでここで一旦切らせてもらいます。