どうも、ふぁもにかです。今回は本編最後にて衝撃の事実が発覚します。
……ま、といってもこれに関しては『 Beginning(12)』であからさまな伏線を張っていたので皆さんとっくの昔に想定済みでしょうけどね。
魔王城周辺に建つ灰色の無骨な建物、もとい人造魔王の開発者ことセラフィエント・ロールの実験施設の一室にて。時の女神はこの世界の文字を読めない刹那の代わりにセラフィエントの残した手記を翻訳する。
『ですが、世界を破滅させるにあたって様々な課題がありました。その一つが世界を破滅へ追い込む具体的な手段です。とはいえ、これについてはハメツの呪文しかないとすぐに結論が出ました。ハメツの呪文であればたったの30秒で世界を簡単に破滅へと導くことができるからです。なので私はハメツの呪文の詠唱方法を知るために世界中のありとあらゆる古文書を漁りました。そして険しい道ながら何とかハメツの呪文の詠唱方法を見つけ出すことができました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『次の課題はどうやって魔王を作るかについてです。元々この世界に存在していた魔王はすべて過去の勇者たちによって殺されてしまっていたため、魔王を絶対者として君臨させるならば私が一から魔王を造り出す必要がありました。ですが私にゼロから魔王を生み出すような真似はできなかったため、既存の生命体に手を加え魔王へと作り変える手法を採用しました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『何をベースに魔王を造るかに関しては非常に迷い所でした。古文書を漁った結果、かつての魔王はハエから人間までそれはもう様々な種類が存在していたことはわかっても、どれをベースにしたものが最も強いといった観点から言及している資料はありませんでした』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『私は手当たり次第にモンスターをかっさらっては実験を重ね、魔王へと作り変えた際の強さに関するデータを収集しました。何年も何年も実験に実験を重ね、気の遠くなるような実験と考察の末に私は魔王のベースとして人間を採用することに決めました。人は愚かさと賢さとを同時に内包した実に知性ある動物です。その特性はさぞ魔王として人々を効率的に絶望へと落としこむエッセンスとなってくれるだろうとの考えあっての判断でした』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『私は早速、世界中から適当に見繕って餞別して誘拐した老若男女、計1126人を使って実験を始めました。ですが超常の力をその身に秘める魔王を普通の、正規で人道的な実験で造れるとはとても思えませんでした。ゆえに私は敢えて実験を失敗させ続け、バグを生み出す作業から取りかかることにしました。肉体改造、精神崩壊、実験体同士での殺人ごっこに囚人ごっこなどなど。様々な観点からの実験を続け、結果としてごく稀に生じたバグをさらにバグらせ、バグにバグを繰り返してバグの塊を生み出すことに終始しました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『その結果、一研究者である私の手で人類には本来造り得ないであろう
(何が、何が快挙ですか。こんな、こんなの……ッ!)
気づけば、刹那の手は怒りに震えていた。
人造魔王。それは
(私が今まで倒してきた魔王は全員、元々は人間で……じゃあ、私は今までその人間を、それもこんな狂った人がやった実験の被害者を殺してきた、ってこと?)
「刹那ちゃんが気にすることないわ。例え相手が元人間でも、ハメツの呪文を使って世界を破滅させようとしたんだもの。これは正当防衛よ」
「で、ですが――」
刹那の手の震えが憤りによるものから罪悪感によるものへとシフトしていく中、刹那の内心を正確に読み取った女神がすかさずフォローの言葉をかかる。そして女神の意見に異を唱えようとした刹那の言葉を遮るようにして、女神はページをめくって続きを読み上げる。
『私はできあがった人造魔王たちを人間の形で世界に送り出す前に、最後の仕上げとして完成した人造魔王の心にハメツの呪文を唱えたくて唱えたくて仕方なくなるように欲求を植え付けました。欲求に耐えられる者は耐えられるでしょうが、いくら強靭な精神を持っていようと生涯欲求を我慢し続けられる人造魔王など存在しえないでしょう。そして人造魔王にはハメツの呪文を唱えたいという願望に理性が押し潰された時にその身を魔王へと変質させ、召喚した魔王城を媒介としてハメツの呪文を唱え、本気で世界を滅ぼしにかかる仕様を施しました』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『またこの時にはもう人造魔王こそが何よりも高尚な存在で人間なんてただの下等生物に過ぎないと思えるような、ついでに私を創造主として最大限の敬意を払わずにはいられなくなるような仕様をも施しました。これで人造魔王でありながら世界の破滅を望まず、あくまで人間としての平穏な生活を望む人造魔王たちに確実にハメツの呪文を唱えさせることができます』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『さらに自殺もできなくしました。世界を破滅させ人々に絶望を与えんがための絶対者が世界を滅ぼしたくないと逃げることを許さないための仕様です。あぁ。仕様から逃れられず絶望したまま世界を滅亡したいという欲求に呑まれる人造魔王たちの姿が目に浮かびます』
女神はページをめくって続きを読み上げる。
『世界の破滅のためにここまで頑張ってきた以上、滅んだ世界をぜひ見てみたかったのですが……私は寿命を迎えつつあります。実に残念です。それもこれも、ここ最近無駄に頑張ってくれている勇者のせいです。あの勇者さえいなければ世界の破滅をこの目で見れたのでしょうが……たらればを考えても仕方ありません。これが私の運命なのでしょう。世界の破滅を誰よりも望んでいる私が世界が破滅を迎える前に死ぬことになるとは、運命とは何て皮肉なものなのでしょう』
「「……」」
もはや刹那は何も言えなかった。女神も刹那にかける言葉を失っていた。
人造魔王は元人間でかつれっきとした被害者だった。それゆえに刹那が元の世界に戻るための魔王討伐は、世界を破滅させないため・世界を救うためという大義名分こそあれ、結局はただの罪のない実験の被害者の殺害行為と変わりなかった。
刹那の脳裏に今まで倒してきた魔王たちの姿が次々とフラッシュバックする。
彼らは刹那を円状に取り囲み一斉に刹那を指差す。
残虐魔王カマセイヌが「我と貴様とで何が違う。同じであろう?」と問いかける。
惰眠魔王スリィピが「死にたくなかったの」とポツリと本音を口にする。
巨壁魔王フミダインが「പൈ49ൂരോ0ജു」と非難の目を向ける。
腐食魔王ヘラゼーラが「この人殺しィ♪」とヘラヘラ嗤う。
守護魔王セイントが「貴女は
(――違う! 違う違う違う!! 私は! 私はッ!!)
刹那は脳裏の映像を全て振り払おうと頭をブンブン振る。何度か呼吸を繰り返すことで刹那が徐々に落ち着きを見せ始めてきた頃を見計らい、女神はページをめくって続きを読み上げる。
『さて、最後です。今私の手記を読んでいる君が何者で、何を求めてこれを読んでいるかはわかりませんが、ここらで私がこの手で造り上げた人造魔王の一覧を、幾多の実験の中を奇跡的に生き抜き、1119人もの屍の上に立った私の最高傑作たちを、純粋戦闘能力・特殊能力の凶悪性・頑丈性・潜在能力の観点からランク付けした7人の人造魔王の一覧を記すことにします』
女神はページをめくって続きを読み上げる。どうやら次が最後のページのようだ。
『序列1位 創生魔王マギ
序列2位 腐食魔王ヘラゼーラ
序列3位 守護魔王セイント
序列4位 残虐魔王カマセイヌ
序列5位 巨壁魔王フミダイン
序列6位 惰眠魔王スリィピ
序列7位 予知魔王―――』
「……え?」
刹那は女神の口から飛び出してきた言葉に驚愕を顕わにした。その言葉は刹那の、ここまで女神が手記を翻訳する中で生まれたセラフィエントへの憤りや元人間の人造魔王を殺害したことへの罪悪感を一瞬で吹き飛ばしていった。
「……め、女神さま。今の所、もう一度お願いします。ちょっと、よく聞こえませんでした」
「刹那ちゃん……」
女神の翻訳内容が信じられなかった刹那は上手く聞き取れなかったことを理由にもう一度女神に人造魔王の一覧の翻訳を頼む。女神は一瞬刹那を憐憫の眼差しで見やり、再度人造魔王の一覧を読み上げる。しかし二度目の読み上げだろうと、その内容が変わることはなかった。
『序列1位 創生魔王マギ
序列2位 腐食魔王ヘラゼーラ
序列3位 守護魔王セイント
序列4位 残虐魔王カマセイヌ
序列5位 巨壁魔王フミダイン
序列6位 惰眠魔王スリィピ
序列7位
(……コノハ、ちゃん?)
この時。刹那の頭の中が真っ白になった。
かくして物語は徐々に佳境へと向かう。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
~おまけ(人造魔王たちの人間だった頃の特徴を簡単に表現してみるテスト)~
序列1位 創生魔王マギ→???
序列2位 腐食魔王ヘラゼーラ→腐女子。
序列3位 守護魔王セイント→思春期。
序列4位 残虐魔王カマセイヌ→中二病。
序列5位 巨壁魔王フミダイン→脳筋。
序列6位 惰眠魔王スリィピ→睡眠厨。
序列7位 予知魔王コノハ→???