【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。……さて、今の内に言っておきます。私は別にせっちゃんいじめが大好きなわけではありませんので、あしからず。



Tragedy(2)

 

 コノハに導かれるがままコノハの家へとお邪魔した刹那。「ちょっと座って待ってて」とのコノハの言葉に従い椅子に座って少しばかり待機していると台所からコノハが紅茶の入ったティーカップを両手に現れ、刹那に「はい、どうぞ」とその内の一つを差し出す。ティーカップを受け取った刹那とテーブルを介した向こう側の椅子に座ったコノハはひとまず紅茶を飲んで一息つく。そうした経緯を経て、コノハは刹那を本題へと誘導するための言葉を投げかける。

 

 

「それで? 大事な話って何かな、せっちゃん?」

「……コノハちゃん。私、今からコノハちゃんに凄くバカな質問をしますので、答えてくれませんか?」

「うん、いいけど?」

「……」

 

 刹那はコノハを前につい無言になってしまう。さっさと質問をしてコノハが予知魔王コノハじゃないことを確認すればいいだけなのに、中々刹那の口から問いかけの言葉が出てこない。この期に及んで刹那の脳裏にはびこる『もしも』の3文字が刹那の行動を妨害しているからだ。

 

 何せ、もしもコノハが本当に予知魔王コノハだったら。刹那はもう後に引けなくなる。コノハとの今の関係が粉々に砕け散ってしまう。それが、刹那には怖くて仕方ない。

 

 

「せっちゃん、大丈夫? 顔色悪いよ? 何の話かわからないけど無理して言わなくても――」

「……だッ、大丈夫です。心配しないでください」

「う、うん……」

「……」

「……」

「………………コノハちゃん。貴女は予知魔王コノハですか?」

 

 十数秒の沈黙の果てに、刹那はついにコノハに問いかけた。

 

 

 お願いだから、どうかこの質問の内容を理解しないでほしい。「予知魔王? 何それ?」って言ってほしい。そしたら「そうですよね。変なこと聞いてすみません」って謝って、そして予知魔王コノハじゃないと証明されたコノハちゃんといっぱい話をして、コノハちゃんが迷惑じゃなかったら一日二日ぐらいここに泊めてもらって、また人造魔王討伐の旅を始めればいい。

 

 いくら相手が狂った人間の実験の被害者であっても欲求に負け魔王化してしまった人を元に戻す方法がわからない以上、世界の破滅を目論みハメツの呪文を唱える魔王は討伐するしかない。そうして、全ての人造魔王を倒した私は元の世界に帰る。ただそれだけの話だ。

 

 

「……」

(どうして、どうして何も言ってくれないの? ……ウソ、ウソだよね、コノハちゃん?)

 

 しかし、刹那の望みに反してコノハは答えない。最初は刹那の問いにポカンとするコノハだったが、すぐにハッとした表情を浮かべ、今では全てを悟ったようにため息を吐いている。まるで図星を突かれたかのような反応に刹那は内心で酷く動揺する。動悸が段々と激しくなっていく。

 

 

「そっか。気づいちゃったんだね」

「あ、ぁ……」

 

 そして。コノハは一言、儚い笑みとともにポツリと呟く。その一言は刹那を絶望の闇に叩き落とすのに十分すぎるものだった。

 

 

「そうだよ。私はセラフィエントによって造られた人造魔王の一人、序列7位の予知魔王コノハ。その名の通り、あらゆる生物の未来を予知する能力を持ってるんだ。といっても、今は人間の状態だから自在に能力を操れるわけじゃないんだけどね。今はただランダムで発動するだけ。まぁ序列7位だから最弱なんだけど、あくまで他の人造魔王と比べて最弱ってだけだから身体能力は人間の比じゃないよ」

 

 と、ここでコノハはバサッと二対の羽を展開させる。コノハの背中から飛び出たのは刹那の持つ烏の翼とは違う、蝶の白い羽。

 

 

「これが、私の本当の姿。あの男のせいで生まれた、化け物としての私。どう? 中々醜いと思わない?」

「コノ、ちゃ……」

 

 自身の本当の姿を刹那に晒し悲哀に満ちた表情でコノハが笑いかける。刹那はロクに言葉を紡げない。コノハが予知魔王コノハだということを羽を持つコノハの姿で否応なしに認識せざるを得なくなった刹那は消え入りそうな震え声でコノハの名前を呼ぼうとするだけだ。

 

 

「せっちゃん。私は今からハメツの呪文を唱える。西の海の方に魔王城を作って、ハメツの呪文を唱える。だから、せっちゃん。お願い。私を殺しに来て。私が、私である内に」

「……え?」

「その様子だと、せっちゃんはもう全部知ったんでしょ? 人造魔王の仕様を。人造魔王を縛りつけるシステムを。……私さ、実はもう限界なんだ。世界は綺麗で、皆は優しくて、そんな世界をいくら滅ぼしたくないって思っても、ダメなんだよ。体の疼きが止まらなくて、心が渇いて渇いて仕方なくて、世界を壊したい衝動に呑まれちゃいそうなんだ。徐々に理性が食い潰されていくのが、闇に染まっていくのが、手に取るようにわかっちゃうんだ。『私』はもうもたないんだよ」

「そ、んな……」

「でも、良かった。今、せっちゃんが私に会いに来てくれて。私たち人造魔王はどう足掻いても自殺できない仕様だからね。誰かに殺してもらわないと死ねないんだ。だけど、欲求に呑まれてハメツの呪文を唱える段階になっちゃったらもう人間を下等生物として見下すよう洗脳がかかってるから、弱い人が相手だと下等生物に殺されるなんてゴメンだって返り討ちにしちゃうんだ。……でも、せっちゃんなら心配ないね。私よりも強い人造魔王をいっぱい倒してきたんだもん。きっと私なんて楽に倒せると思う」

「…ノハ、ちゃん……」

「待ってるからね、せっちゃん」

 

 コノハからの自分を殺してほしいとのお願い。想定外極まりないコノハのお願いに刹那は見開いた目をそのままに呆然とする。コノハはとても話の聞ける状態じゃなさそうな刹那をまっすぐ見据えて言いたいことを全て言い終えると、羽を羽ばたかせて天井へと飛翔する。そうしてコノハは眼前の天井を拳で粉砕する形で上空へと飛び去っていった。

 

 

「……なんで、こんな。どうしてッ……」

 

 刹那はコノハがぶち開け出ていった天井の穴をただただ見つめることしかできなかった。

 

 




 せっちゃんの精神状態がマッハでヤバい件について。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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