どうも、ふぁもにかです。せっちゃん効果で上手いこと勇者30っぽい雰囲気が醸しだせてたらいいんですけど……どうなんでしょうね、この作品。
早速時の女神にタダで時間を巻き戻してもらった刹那は脳内カウントダウンが『30’00』から着々と時間を減らしていく様を気に留めつつも、草原にて水色のポヨンポヨンとしたスライムのモンスターをデッキブラシで倒していく。もちろん、倒されたモンスターが消えるのと入れ替わりでスッと具現化するお金を手早く回収することも忘れない。女神に時間を巻き戻してもらう際の代償がお金である以上、お金を集めることは刹那にとっての生命線なのだ。
ちなみになんでモンスターを倒したらお金が生まれるのかについて尋ねた所、女神さま曰く、これもこの世界の誰もが知っている常識なのだそうだ。要するに自明の理すぎて原因不明ということである。結局刹那は気にしたら負けだと、この異世界での常識を受け入れるより他なかった。
刹那は眼前のスライムをデッキブラシの横薙ぎ一閃で一体倒す。普通ならこれでスライムを倒す際に使った労力の分だけ疲労を感じる所だ。しかし。今は違う。モンスターを倒す度に体が軽くなる。力が湧いてくる。軽く人間離れした動きができるようになる。不思議な感覚だった。気づいた時、刹那は最初は氣をこめたデッキブラシで三回攻撃を入れなければ倒せなかったスライムを氣を使用していない純粋なデッキブラシの一撃だけで倒せるようになっていた。これが『超速レベルアップ』とやらの恩恵なのだろうか。
軽くなった体で風を切って駆ける感覚のあまりの心地よさに夢中になりつつモンスターを狩っていた刹那。ハッと我を取り戻した時、脳内タイムウォッチの示す残り時間は10秒を切っていた。そろそろ女神像の元に行かないと間に合わないかもしれない。刹那は最初に魔王カマセイヌに挑もうとした時には見向きもしなかった村へとダッシュで向かうことにした。
◇◇◇
刹那が村に着いた時、残り時間は5秒を切ろうとしていた。急いでどこかにある女神像を見つけてお金を捧げて祈らないといけない。刹那は100Gを取り出しつつ視線をさまよわせて女神像の捜索を開始する。と、その時。刹那は気づいた。いつの間にか脳内タイムウォッチのカウントダウンが止まっていることに。
「え、あれ……?」
刹那は思わず困惑の声を漏らした。確かに時間は止まっている。だけど、決して世界は灰色一色に染まってなどいないし、村人も誰一人静止していない。自分と女神さまだけが動くことを許されていたさっきとは違う。先とは異なる状況に思わず立ちつくしていると刹那の様子に違和感を抱いた女神がスーと上空から降臨してきた。余談だが女神の姿は刹那にしか見えていなかったりする。
「どうしたの刹那ちゃん? いきなり呆然としちゃって」
「あ、女神さま。これは一体どういう状況でしょうか?」
「どういう状況って……あー、なるほど。そういうこと。そうそう。そういえば刹那ちゃんが村や街に入った時は外部との繋がりを断絶するようにしたんだった。すっかり言い忘れてたわ」
「え、えーと、それはつまりどういう意味ですか?」
刹那は女神の返答を受けて頭の中に大量のクエスチョンマークを浮かべる。元々刹那は戦闘方面に時間の大半を注いできた類いの人間なのであまり頭がよろしくないのだ。とはいえ、決して刹那は頭の回転自体が遅いわけではない。それがせめてもの救いだろうか。
「んーとね。簡単に言っちゃうと、刹那ちゃんが村や街の中にいる間は外部の時間を止めてるから時間を気にする必要はないってこと。わかった?」
「ッ! 本当ですか!?」
「うん。刹那ちゃんだってそっちの方が気が楽でしょ? あんまり時間に急かされるのは精神的によろしくないものね」
「め、女神さま……!」
ウインクとともに刹那を気遣う発言をした女神。刹那の女神への好感度が上がった瞬間だった。ちなみに女神が続けてボソリと言い放った「折角見つけた金づるだし末永く活用していかないとだもんね♪」との言葉は刹那のネコミミに届かなかった。知らぬが仏とはこのことか。
◇◇◇
「さて。どうお金を払えばいいのでしょうか……?」
説明責任を果たした女神がスィーと上空へと去っていった後。ゆっくりと村を探索して全長3~4メートル台の女神像を見つけた刹那は当惑の表情で銀の女神像を見上げる。女神像の前でお金を払って祈れば時間を巻き戻してくれるとは言っていたものの、どうお金を払えばいいのかがわからないのだ。
女神像の前にお金を置いて祈ればいいのか。お金を女神像の手に乗せればいいのか。はたまたどこか別の所に置く必要があるのか。どうしたものかと刹那が困った眼差しを女神像に向けていると、ふと女神像の胸の部分にちょうどお金が入りそうなほどの縦長の穴が開けられてあることに気づいた。
(もしかしてあの穴にお金を入れるのが正解なのでしょうか? まるで貯金箱みたいですね……)
刹那の身長ではいくらグイーッと背伸びをしても女神像の胸の部分に手が届かないので刹那は穴に目がけて「えいッ」と100Gを投げ入れる。チャリンと女神像の内側から音が鳴る中、刹那は目を瞑って両手を組んで祈りを捧げる。
(ま、眩しッ!?)
すると女神像がこれでもかと金色に光り輝き始める。目を閉じた状態でも目を焼かんばかりの輝きを見せる光を前に、太陽をジッと凝視したかのような錯覚を覚えた刹那は思わず閉じたままの目をさらに両手で覆う。数瞬の時を経て。光が収まった時を見計らって刹那が恐る恐る目を開けると、視線の先に女神像が何事もなかったかのようにその場に鎮座していた。それから刹那が脳内タイムウォッチへと意識を移すとちゃんと『30’00』に戻っていた。
こんなものか。女神像がいきなり光り輝いたのには驚いたけど、終わってみれば大したことないな。少々拍子抜けした刹那は「ふぅ」と一つため息を吐いた。
せっちゃんを金づるとして長持ちさせる気でいる時の女神さま。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。