どうも、ふぁもにかです。最近リアルが急に忙しくなったせいで一気に更新速度が落ち込みましたね。どうにか完結まで頑張りたい所なんですが……はてさて、どうなることやら。
Awakening(1)
「……」
コノハを殺した、その夜。刹那はアレイヤの村の西の海にて両膝を抱えていた。無言のまま、両膝を抱えて座っていた。かれこれ半日、座り込んだままの刹那の視線の先には、木で作られた簡素なお墓がある。コノハの死を悼むためのお墓である。尤も、お墓にコノハの名前は刻んでいない。アレイヤの村の住民にはコノハを悪者にしたくない一心でコノハは旅に出たと説明したためにコノハの名前を残すわけにはいかなかったのだ。
「……」
刹那はコノハが造り上げた魔王城跡に作ったお墓を見つめる。ハイライトの消え去った、感情を何一つ映さない瞳でお墓をただ眺める。西の海。そこで刹那とコノハはいっぱい遊んだ。たかが一日だけだったけど、それでも充実した一日を過ごした。そんな思い出深い場所に留まっているせいか、その時のコノハの言葉が、幸せそうな顔が、刹那の脳裏に次々とフラッシュバックする。
同時に。コノハちゃんを救えなかった、助けられなかった、むしろ私がコノハちゃんを殺した、といった事実が鋭利な刃物へとその姿を変えて刹那の心に深く突き刺さる。そうして。幾度もなく突き刺さってくる刃物により傷つき続けた結果、傷だらけの心からじわじわとあふれた負の感情が刹那を蝕み続けた結果、いつの間にか刹那の瞳はお墓を見つめているようで何も見つめなくなっていた。刹那の心はまるで機能しなくなっていた。
「こんばんは、セツナさん。調子はどうですか?」
完全に砂浜に座り込む置物と化している刹那の元に全身を鎧装備で覆った茶髪の青年が近づき気さくに声をかける。もちろん、ナイトである。しかし刹那はナイトの声が聞こえていないのか、ナイトの言葉が完全に右から左へ流れているのか、ナイトの呼びかけに欠片も反応しない。
「……」
「セツナさん、お腹すきませんか? さっきそこで釣った魚を焼いてみたんですけど、セツナさんも一緒に食べませんか?」
「……」
「あ、あのー、セツナさん?」
「……」
「あ、そうそう! セツナさん。僕、セツナさんに似合うかなぁって思って、近くの森に咲いてた花で花冠作ってみたんですよ。はい」
「……」
「どうですか? よく出来てますよね、これ?」
「……」
「うん、やっぱり似合ってますね。剣を持ったセツナさんもキリッとしててカッコいいですけど、こうして女の子らしく飾ったセツナさんも年相応って感じで可愛いですね」
「……」
「え、えーとですね! セツナさん! とりあえず空を見上げてみましょう!」
「……」
「普段、空を見ることなんてあんまりないでしょう? 僕は昔は賢者さまを守るためによく徹夜してモンスターを欺く罠を作ってたから気晴らしに夜空を見ていたんですよ、こう見えて」
「……」
「いつも前や下を見ていれば見ているほどふと上を見上げた時に新たな発見があるものです! 視点を変えるって結構面白いですので、セツナさんも是非試してみるといいですよ?」
「……」
「え、えーと……」
「……」
「し、失礼しましたー」
様々なアプローチで刹那をどうにか励まそうとしたナイトだったが、ナイトに目線を向けずただ沈黙を貫く刹那の興味を引けそうな話題を出し尽くしてしまったがために見事に轟沈した。結果、ナイトはペコリと刹那に頭を下げると逃げるように刹那から離れ、背後で二人の様子を眺めていた時の女神の元に涙目で駆け寄っていった。
「め、女神さまぁ! やっぱり無理です! 僕に今のセツナさんを励ますなんて荷が重すぎます! 無茶が過ぎますよ! 選手交代してください、どうかこの通りです!」
「んー。仕方ないわね、わかったわ」
「め、女神さまぁ……!」
「ま、最初からナイトくんには刹那ちゃんを立ち直らせることなんてできないって思ってたしね。ここは私が一肌脱ぎましょうか」
「ひ、酷いですよ、女神さまぁ! でも一体何をするつもりですか?」
「それは内緒」
ガーンという効果音が似合いそうな表情で目に見えて落ち込むナイトをよそに、女神はふわふわと宙に浮かびつつ刹那へと近づく。そして女神はおもむろに懐から10Gを取り出すと「あ!」というわざとらしい声とともに10Gを砂浜に落とした。
「あ、ああああぁぁぁぁ――!! 刹那ちゃん! 見て見て、こんな所に10Gが!? 10Gがあるわよ、刹那ちゃん! ねぇ拾わなくていいの? ねぇ拾わなくていいの!? ねぇねぇ!? ひ、拾わないなら私が拾っちゃうよ!? いいの!? 拾わなくていいの!? 今しかチャンスはないわよ!? この幸運の10Gを拾うことで一気に億万長者への道が開けるかもしれないのよ!? ねぇいい――わふッ!?」
刹那を焚きつけて10Gを拾わせようと10Gをビシッと指差しこれでもかとまくし立てる女神。しかし女神の突拍子のない言動は女神へと急接近し無駄に洗練された無駄のない動きで女神を脇に抱え込んで即座に刹那から距離を取ったナイトによって見事に妨害される。
「もう、いきなり何するのよ、ナイトくん? いい所だったのに」
「それはこっちのセリフですよ!? 何やらかしてるんですか、女神さま!?」
「え? 何って、いやだって最近は刹那ちゃんもお金に執着心を見せ始めてたからその辺に10G落ちてたら飛びつくに違いないと――」
「そんなわけないじゃないですか!? 女神さまじゃないんですよ!? ほら見てくださいよ、あれ!? 何か心なしかセツナさんの目の闇が濃くなってますよ!? 現状改善どころかますます酷くなってるじゃないですか!?」
「まぁまぁナイトくん。冗談、冗談だって。ちょっとしたジョーク、場を和ませるためのほんのネタだからとりあえず落ち着きなさい、ナイトくん。次は本気で刹那ちゃん励ますから、ね?」
「……本当ですね?」
「ホントだって。それともナイトくんがテイク2してみる?」
「よろしくお願いします、女神さま!」
相変わらずブレない女神の発言に思わず女神の胸ぐらを掴んでツッコミを入れるナイト。女神がやらかした行為が行為なだけに、にへらと真剣さの感じられない笑みで今度は真面目にやると宣言した女神に疑いの視線を向けるナイトだったが、当の女神が二度目のチャレンジを促したことで実にあっさりと引き下がる。今の無反応の刹那がよほど精神的に堪えたようである。
(とはいえ、これはどうしたものかしらねぇー)
女神は刹那の後ろ姿を見やり思案する。今の刹那ちゃんは心が壊れている。ゆえに。いくら話しかけてもまるで反応しない。というより、反応できない。だから今は刹那ちゃんに何を言っても効果なし。刹那ちゃんを立ち直らせるにはまず機能しなくなってしまった心を取り戻さないといけない。無反応状態に陥った刹那ちゃんから無理やりにでも感情を引きずり出さないといけない。
そのための方法。
時の女神である自分だからこそできる、方法。
何かあるだろうか。
堕ちる所まで堕ちていったっぽい刹那ちゃんを元気にできる都合のいい方法なんて――。
「あ、いいこと思いついた」
と、ここで女神はポンと手を打つ。そして。何か名案を思いついたらしい女神は「ま、たまには女神らしいことしてみようかしらね。ふふ」と意味深な笑みを浮かべるのだった。
何かもう完全に壊れちゃってる感じのせっちゃん。
女神さまガンバッ。マジガンバッ。