どうも、ふぁもにかです。今回で幕間は終了です。この幕間は私が連載当初から書きたかったシーンが豊富だったからルンルン気分で執筆できました。今、私は最高の気分です。
「こ、これは一体……」
唐突に金色の光を放ち始める聖刀カナメを刹那は困惑しつつも手に取ってみる。刀身を抜いてみると、聖刀カナメの放つ金色の光は徐々に収まり、代わりに蒼白の刀身を見せた。
「め、女神さま? これは?」
「んー、私も全然わからないわ。でも、この刀の変わりよう……私が一番最初に出会った勇者のことを思い出すわね。懐かしいわ」
「一番最初に出会った勇者、ですか?」
「そそ」
突然刀が光ったかと思えば、白銀の刀身のはずがいつの間にか蒼白の刀身になっている。全く常識の埒外な現象にわけもわからずただ女神を見上げる刹那に女神も同調しつつ、変貌を遂げた聖刀カナメを前に懐かしさに目を細める。そして、首を傾げる刹那に女神は過去の出来事を脳裏で整理しながら、一番最初に出会った勇者ことユウシャの話をし始めた。
簡潔に纏めるとこうだ。女神歴100年。つまり今から1300年前。世界を気ままに旅していた無口で根なし草の青年:ユウシャはある日、王様によって無理やり勇者に仕立て上げられてしまう。いきなり魔王討伐の銘を受けることとなってしまったユウシャは自分の類まれなる足の速さを最大限駆使し、時の女神の協力を得た上で魔王討伐の旅に出た。
そして。様々な苦難(※主に世界滅亡まで後30秒という制限時間や守銭奴女神の影響による深刻な金欠)を乗り越えてどうにか28体もの魔王を討伐した頃、ユウシャに転機が訪れた。
とある島で一人の少女――サーシャ――に出会ったのだ。サーシャに襲いかかろうとするモンスターをユウシャが撃退したことがきっかけとなり、ユウシャはサーシャと友達になった。そしてサーシャの正体が魔王の呪いによって人間に変化させられたモンスターだと知ってなお、ユウシャはサーシャとずっと友達でいることを約束した。
だけど、魔王を討伐して世界を救うためには、魔王の呪いを解かないといけなくて。その影響で元のモンスターの姿に戻り、理性を失い、ユウシャに立ちはだかるサーシャを殺さないといけなくて。しかし、ユウシャにサーシャを殺すことはできなくて。勇者の役目か、サーシャとの約束か。どちらを優先するべきか。ユウシャは迷いに迷った末、サーシャを殺さない道を選んだ。
その時、奇跡が起きた。ユウシャが持っていた錆びた剣が光を放ち、勇者の剣へと変貌したのだ。それは錆びた剣がユウシャを真の勇者と認めた証だった。結果、勇者の剣の力で魂を浄化されたモンスターのサーシャは再び人間の姿を取り戻し、ユウシャといくつか言葉を交わした後に天に召されていった。そして、ただ足の速さだけが取り柄で、これまでただ成り行きのままに魔王を討伐していただけの青年:ユウシャは心身ともに真の勇者へと生まれ変わった、のだそうだ。
「ふふふ。よく考えてみたら、今の状況ってあの時のユウシャさんとそっくりかもね」
「……そうでしょうか?」
「そうよ。ユウシャさんを刹那ちゃんに。サーシャちゃんをコノハちゃんに。錆びた剣を聖刀カナメに置き換えたら、ほとんど一緒だと思わない? だとしたら、これは聖刀カナメが今の刹那ちゃんを見て、今の刹那ちゃんは真の勇者にふさわしいって認めてくれた結果なのかもね。表現しにくいけど、何かこう、聖刀カナメからは凄い力を感じるもの」
「真の勇者、私が……そうですか」
聖刀カナメから感じる強大で、雄大で、それでいて神秘的な力を一身に受けて、刹那はおもむろに目を瞑る。そして、ゆったりと深呼吸を行い、漆黒の瞳をスゥと開く。その瞳には、まさに真の勇者と形容するにふさわしいほどの輝きと覚悟が存在していた。
「コノハちゃん。私は、生きます。コノハちゃんの幸せを守ったように、これからも大切な人の幸せを守っていく、そんな真の勇者として生きてみせます。だから、どうか、こんな私のことを見守っていてください」
刹那は懐からコノハがくれた唯一の形見:光麓の指輪を取り出し、誓いの言葉を掲げる。刹那の言葉に返事をするように一瞬だけ光麓の指輪が金色の光を放ったように見えたのは、きっと見間違いではないはずだ。
「真の勇者を名乗るにはまだまだ未熟な私ですが、どうか私に力を貸してください。カナメ」
続いて、刹那は抜き身の聖刀カナメを空に突き上げ、親しげな口調でお願いをする。これまた刹那のお願いに色よい反応をするように一瞬だけ聖剣カナメがひときわ強い青白い光を放出したように感じたのは、きっと気のせいではないはずだ。
――かくして。桜咲刹那は真の勇者へと生まれ変わった。
◇◇◇
「元気、出たみたいですね」
「久しぶりにいいイベントを見られマシタ。感動をありがとう、デス」
「ふふふ、今の頼もしそうな刹那ちゃんからなら今まで以上にたくさんお金を徴収できそうね。楽しみだわ」
背後から聞こえてくる三者三様の発言を背中に受けて、真の勇者として覚醒し終えた刹那は聖刀カナメを鞘に納め、光麓の指輪を懐に入れつつ後ろを振り向く。そして、不穏極まりないことを口にする女神をスルーして、刹那は残りの二人の方へ視線を向けた。
「さっきはその、ありがとうございました。えっと……」
「あ、私はクゥ。貴女のお名前は?」
「あ、はい。セツナと言います」
「セツナさん、ですね」
「セツナデスカ。私は『タイプ 時の女神型アンドロイド MGKV-T NO-30』と言いマス。気軽に30号と呼んでくだサイ」
「クゥさんに30号さんですね」
刹那とクゥ&30号は互いに初対面だということで名前を紹介し合う。その後、クゥは自分と30号がなぜここにいるかの理由を簡単に説明した。
「そうだったんですか。すみません、わざわざ私のために……」
「気にしないで、セツナさん。傷ついた人の心を癒し、救うための私の歌だもん」
「そうデス。私としてもこの400年後の世界を探検できたのは有意義なことでしたので、セツナが気に病むことはありまセン」
「そーそー。刹那ちゃんが気にすることないわ☆」
「お前が言うな、デス。この誘拐犯」
クゥ&30号の事情を知り申し訳なさそうに頭を下げる刹那にクゥと30号は気にしなくていいと同じことを口にする。その後、二人の刹那を気遣う言葉に便乗した女神に向けて30号は冷たい視線を突き刺しにかかり、クゥは「あははは……」と苦笑いをする。自分が劣勢だとすぐさま悟った女神は話題を逸らそうと口火を切った。賢明な判断である。
「そ、それで、どうだった、30号? 女神歴1400年の世界は?」
「……ん、そうデスネ、中々にほのぼのとしてていい感じの世界デシタ。あの散々に荒れ果てた女神歴999年から400年程度でここまで立て直すとは、人間というのはつくづく凄いと改めて感心させられマシタヨ」
「そんなの当然じゃない。もしそうじゃなかったら私もこうも人間と行動をともにしないわよ。貴女もそうでしょ、30号」
「違いありまセンネ」
女神と30号は互いに視線と視線を交わし合う。微笑む女神とは対照的に30号はアンドロイド故に無表情だが、それでも30号も薄く笑みを浮かべているように刹那たちには感じられた。
「では、オリジナルのお願いも無事済ませましたし、そろそろ元の時代へ帰りまショウ」
「うん、そうだね。30号」
「え、もう帰るんですか? せっかく400年後の世界に来たんでしたら、少しぐらい観光しても……」
「大丈夫。観光はさっき30号がやってるから。それに私たちには私たちの時代でしないといけないことがあるからね」
「そう、ですか」
「セツナさん。もしもまた何かあって心が傷ついちゃった時は、また癒しに来るよ。だから頑張って。女神さまもセツナさんのこと、よろしくお願いします」
「はいはい~。了解よ、クゥちゃん」
「本当にわかってるんでしょうか、このオリジナル。激しく心配デス」
元の世界にさっさと帰ろうとするクゥと30号を刹那は引き止めようとするも、クゥの強い意志を秘めた言葉に刹那は引き下がる。その後、刹那にエールを送り女神に刹那のことを任せるクゥ、軽々しい返事で了承する女神、女神を呆れの目線で眺める30号、といった流れを経て。クゥと30号は己の世界へと、女神歴999年の世界へと帰っていくのだった。もちろん、時間移動の際に使われたのは30号の溜めこんだお金である。
一方その頃。刹那たちとは少々離れた地点の砂浜にて。
「どうせ、僕なんかどうせ……」
ナイトはまだいじけていた。
ナイトにしては珍しく。ナイトにしては珍しく。
真の勇者として覚醒したせっちゃん。残る魔王は序列1位のみ。
第二次せっちゃん魔改造企画(メンタル面)の終了をお知らせします。
~おまけ(クゥと30号が元の世界に戻った後の会話)~
30号「400年後の世界、いい世界デシタネ」
クゥ「そうだね。機会があったらまた行ってもいいかもね。セツナさんの様子も気になるし」
ユウジャ「あああ! 見つけたぞ、テメェら! 今までどこ行ってたんだ、二人して!」
クゥ「あれ、ユウジャ? どうしたの?」
ユウジャ「『どうしたの?』じゃねぇよ! 女神の奴がいきなりテメェと30号かっさらってどこかに飛びやがったからずっと探してたんだぞ!!」
30号「そうなのデスカ? それで、具体的にはどこを探していたんデスカ?」
ユウジャ「おう、そうだな。テキトーに捜してたら地底大陸発見して、そこを片っ端に走破したぞ! あいつら皆して地上人がどうこううるさかったから全員ぶっ飛ばしてやったけどな!」
30号「何というか、相変わらずのユウジャクオリティデスネ……」
クゥ「し、心配かけてごめんね、ユウジャ。で、でもそこまでして探してくれたのはちょっと嬉しいかも……(ボソッ)」
ユウジャ「で、どこ行ってたんだ? 全然見つけられなかったぞ(←素でスルー)」
30号「女神歴1400年の世界、ま、要するに今から400年後の世界デス」
クゥ「心に深い傷を負った女の子を癒しに、ちょっとね(うぅ、ユウジャにスルーされた……)」
ユウジャ「ハァ!? 未来!? 何だよそれ、オレ様もチョー行きたかったぞ!? くっそ女神の奴、よりによってこのオレ様だけハブりやがって! 次会ったら容赦しねぇ!!」
クゥ「お、お手柔らかにね、ユウジャ。女神さまを痛めつけたりしちゃダメだからね」
ユウジャ「……わ、わかってんよ」
クゥ「ウソ。今動揺したでしょ? 目が泳いでたよ?」
ユウジャ「うッ。こ、この、目ぇ見えないくせによくわかんな!?」
クゥ「あ、ホントに動揺してたんだ」
ユウジャ「カマかけてたのかよ!?」
30号「やれやれ、相変わらず夫婦デスネ。いい加減結婚しろデス。そして末永く爆発しろデス」
クゥ「30号!? い、いいいいいいいきなり何を――」
ユウジャ「うるせぇ30号! ふざけたこと言ってっと、いい感じのスクラップにすっぞ!」
30号「きゃーこわーい。こっちくんなー、デス」
ユウジャ「あ、くそ。あいつ空に逃げやがった! これじゃ追えねぇじゃねぇか、ふざけんな! おい、30号! オレ様は人生の墓場へ向かう気はねぇ! 勇者として、困ってる奴を片っ端から助けて困らせてる奴を纏めてぶっ飛ばすって大事な役目があるんだ! これは一生モンの役目だ! 結婚なんて誰がするかぁぁああ!」
30号「勇者としては立派ですが、恋人のいる男としては最低の発言デスネ。あ、いえ、勇者の血を後世に残さないってことを考えると、勇者としても最低デスネ。ハハッ。おっと、思わず持病の嘲笑いが」
クゥ「ダ、ダメだよ30号。あんまりユウジャをからかっちゃ。ユウジャは子供なんだから」
ユウジャ「子供じゃねぇ! 大人だ、オレ様は! つーかテメェロボットのくせになんで持病持ってやがる!? あり得ねぇだろーが!」
クゥ「まぁまぁ。これからも勇者頑張ろうね、ユウジャ。私たちも一緒だから」
ユウジャ「……ま、オレ様のやり方じゃ救いきれねぇ奴もいるからな。オレ様が物理で救って、クゥは傷ついた奴の心を救う。30号はいざって時の保険(時間を巻き戻す的な意味で)。バランスのとれたオレ様たちに負けはねぇ! 最強だ! おし、そうと決まったら早速次の町行って勇者するぞ! 二人とも、さっさとオレ様についてこい!」
クゥ「あ、ちょっ、待ってよユウジャ!」
30号「恋人のエスコートもできないとは、ユウジャもまだまだお子様デスネ。ハハッ。おっと、またも持病の嘲笑いが」
とりあえず、仲睦まじい三人組なのだった。