どうも、ふぁもにかです。創生魔王マギの口調が難しすぎて執筆速度がまるで上がらない件について。最後の魔王だからってことで狂気を前面に押し出そうとあんな口調にしたことに軽く後悔している今日この頃です。
刹那、ナイト、時の女神の三人は一直線に創生魔王マギの元へと向かう。二つの村へと向かうモンスターの大群を無視して魔王城へと向かう。
刹那はレイフィールとマキナが助っ人として現れるまでの間、モンスターの進軍を止めるために数多くのモンスターを屠ってきた。そのため、超速レベルアップの恩恵により身体能力は格段に向上しているし、時間を巻き戻す用のお金も無駄にたくさん保持している。魔王マギと戦う準備が既に整っている刹那に、魔王マギと今すぐ戦う以外の選択肢はない。
「はぁぁぁあああああ!!」
刹那は気合いの咆哮とともに聖刀カナメを振り抜き、魔王城の扉を真っ二つに切り裂く。その後、魔王城が以前の腐食魔王ヘラゼーラの時と同じく二階構造になっていることを瞬時に把握した刹那は二階への階段を駆け上がろうとする。
「「「ッ!?」」」
と、その時。刹那たちの足が二階への階段を今にも踏まんとした、まさにその時。魔王城の下から床を突き破るようにして、天井から飛び降りるようにして、軽く1000体は超えるであろうモンスター軍が現れた。
(こんな所に待ち伏せですか……)
刹那は村を襲おうとしていたモンスター勢とは明らかに動きの違うモンスター勢を聖刀カナメの一閃で斬り伏せる。いくらモンスターの実力がこれまでとは段違いに違うとはいえ、超速レベルアップの影響で超強化されている刹那の敵ではない。だがしかし。
(足止めが目的なのはわかりますが、それでもここのモンスターを殲滅しないとですね。魔王マギとの戦いの最中に妨害されないためにも)
刹那はバッサバッサとモンスターを斬り捨てつつ、自分がこの場に待ち伏せしていた精鋭モンスター勢との戦闘を強いられていることに眉を寄せる。できることなら体力もお金も無駄に消費していない万全の状態で魔王マギと戦いたいが、それが叶わない現実に眉を寄せる。
「セツナさん! ここは僕が食い止めます! 先へ行ってください!」
「ナイトさん!?」
と、その時。刹那の隣で剣を振るっていたナイトが声を上げた。刹那の心境を的確に読んだ上でのナイトの提案に刹那の心は揺れる。だが、眼前に蠢く精鋭モンスター陣の前にナイトを捨て置いて自分一人(ついでに女神)だけ魔王の元へ向かうことに刹那は躊躇する。
「で、ですが……」
「大丈夫ですよ、セツナさん。前にも言いましたが、僕はダテに900年も生きてませんから」
「それもそうね。これぐらいの窮地なら今まで何度も経験してるもんね、ナイトくん」
「はい。だからどうか、僕のことは心配しないでください」
「ナイトさん……」
ナイトの提案を受け入れられない刹那にナイトは優しい口調で説得にかかる。女神による言葉の援護を背に、モンスター勢を剣で倒しつつニッコリ笑顔を刹那に向ける。その柔和な笑みは躊躇する刹那の背中を押すことに確かに寄与した。
「……無理はしないでくださいね、ナイトさん」
「セツナさんこそ」
刹那とナイトはかつての守護魔王セイントの結界攻略の時を再現するかのように同じ言葉を掛け合う。そして、刹那と女神は後ろをナイトに任せて階段を駆け上がっていった。
「うわー、いっぱいいるなぁ」
刹那の姿が自身の視界から消えたことを確認したナイトは改めて自身の前方に控える精鋭モンスター陣を一瞥し、ため息を吐く。しかし、持ち前のポジティブ思考で「でも、賢者さまを守ってた頃に比べればそんなに酷くないかな、うん」と余裕に満ちあふれた独り言を漏らす。
長い長い900年も月日の中、現状以上にヤバすぎる修羅場を何度も繰り返し切り抜けてきたナイトにとって、約1000体の強力なモンスターに襲われる程度、大したことではないのである。
「――セツナさん。騎士の名に賭けて、ここは一匹たりとも先へは進ませません。セツナさんに邪魔が入らないよう全力を尽くします。どうか、ご武運を」
ナイトはかつて刹那を苦しめた序列2位:腐食魔王ヘラゼーラより上の存在たる序列1位:創生魔王マギと戦うことになる刹那の身を案じつつ、剣を強く握る。その翠眼には歴戦の騎士を思わせる強い光がしっかりと宿っていた。
◇◇◇
魔王城の階段を一息に駆け上り、念のために女神にお金を渡して時間を巻き戻してもらった上で二階部分へと到達した刹那と女神。二人の視線の先には、ニコニコ笑顔で足をブラブラさせながら玉座に座る魔王マギの姿があった。首から下は人間と同様、しかし顔の部分は猫そのものな魔王マギは刹那の姿を見つけると、ニタァと口角をこれでもかと吊り上げた。
「あれー? あれあれー? なぁーんで勇者さんがここにいるのかにゃー? も・し・か・し・て。マジで村見捨ててここまで来ちゃったわけ? うっわー、酷いねぇ、外道だねぇ。そんなんでよく勇者なんて看板背負っていられるよねぇ」
「貴女にだけは言われたくありませんよ、創生魔王」
「むっふふふー♪ 今頃村じゃ怨嗟の声でいっぱいなんだろうなぁー♪ 『なんで勇者さまは私たちを見捨てたんだ!?』『私たちの味方じゃなかったのか!?』って感じでね。にゃははは! あ、これヤヴァい、愉悦が止まらないにゃあ♡」
「……喜んでいる所悪いですが、私は村を見捨ててはいませんよ。私は一人じゃありませんから」
「ちぇッ、何だ。勇者権力でも使って下僕連中を遣わしたってわけ。あーあー、期待してマギちゃん損しちゃった」
「違います、仲間ですよ。私を元気づけるためだけにわざわざここに集まってくれた……私にはもったいない人たちです」
「へいへい。そうですか。友情ごっこですかー美しいですねー、あーあー聞こえにゃーい」
魔王マギとの会話中は女神が気を利かせて一時的に時間を『30‘00』のまま止めてくれている中、刹那の言葉をこれ以上は聞きたくないと言わんばかりに両手で耳を塞ぐポーズを取った魔王マギはおもむろに立ち上がる。そして玉座周辺に無造作に置かれてあった大剣を手に取ると、背中に漆黒の翼を二対生やし、空へと飛翔した。
「……飛べるんですね」
「とーぜん☆ ふふん、マギちゃんは猫タイプの魔王なのにどうして飛べるのって顔だね。でーも、でもでも、マギちゃんは創生魔王。この世にマギちゃんに作れないものなんて存在しない、だから翼だって簡単に作れちゃうってわけ。……ねぇ勇者さん。せっかくだから空で戦おうよ。地べたで戦うなんて無様な真似はマギちゃん嫌いだし、勇者さんだって飛べるでしょ?」
「……何のことですか?」
「もー、とぼけちゃってぇ♪ マギちゃん知ってるんだぞ? 勇者さんが白い翼で飛べるってこと。そもそも不思議に思わなかったのかにゃー? なんで勇者さんに立ちはだかる人造魔王たちが、巨壁魔王フミダインが、腐食魔王ヘラゼーラが、守護魔王セイントが、予知魔王コノハが、貴女を勇者だと認識していたか。あれは、私が使い魔を創生して途中から勇者さんをストーキングして、情報を他の魔王たちに垂れ流してたからなんだぞ~!」
「な……!?」
刹那は魔王マギからのまさかの暴露に思わず驚愕の声を上げる。確かに、刹那は巨壁魔王フミダインと対峙した時から人造魔王たちに世界を破滅から守る勇者として認識されていた。だからこそ腐食魔王ヘラゼーラは奇襲を仕掛けてきたし、守護魔王セイントは防御に比重を置いてきた。
だが、よくよく考えてみれば、初対面で自分を勇者だと断定すること自体が異様なのだ。そしてその異様さは、事前に魔王マギに情報提供されていたとするなら、消えてなくなる。
(……だとしたら、私の大体の手札は知られていることになりますね、厄介なことに)
刹那は空中でニタニタ笑う魔王マギを睨む。これまで刹那は魔王相手に様々な戦法で勝ち抜いてきた。それらのほとんどが筒抜けになっていると判明した今、魔王マギの知らない戦い方があるとすれば、それは――聖刀カナメと、ついさっきマキナからプレゼントされた小太刀アカツキを使った、変則二刀流ぐらいだろう。
(ジャストタイミングでアカツキをくれたマキナさんに感謝ですね、これは)
刹那は聖刀カナメを右手に、小太刀アカツキを左手に装備すると、背中の翼を解放して空中へと飛び立つ。一方、魔王マギは見覚えのない小太刀アカツキを凝視して「あれ? あれあれあれれれん?」と珍妙な疑問の声を上げた。
「勇者さんって刀一本で戦う人だったよね? なんで二本持ってるの?」
「私は元々二刀流なんですよ。今回はさすがに本気で戦わないといけないでしょうから、このアカツキも使うことにしました」
(ウソですけどね)
「……へぇ。それじゃなに、今までの魔王相手にゃ手加減してたってわけ。マギちゃんの監視も念頭に入れて縛りプレイで戦ってたんだ、手の内見せないように。へぇー、思ったより策士さんだったんだね、勇者さんって。むふふふふ、面白くなってキター!」
刹那の虚言を本当だと思い込んだ魔王マギは心底愉快そうにケラケラ笑うと、右手を上へかざし「フレアバースト!」と叫ぶ。直後、魔王マギの右手から生まれた赤い光が天井を突き刺し、爆炎とともに魔王城の天井をぶっ壊した。
「さぁ! 始めようよ、勇者さん! 序列1位のマギちゃんの恐ろしさ、その身に刻み込んであげるからさぁ! にゃっははははははははぁぁあああああああい♪」
見るも無残に壊された天井から開けた空が伺える中。敵意を存分に宿した視線をぶつける魔王マギに応じるように刹那は二刀を構える。かくして、最後の人造魔王との戦いが幕を切って落とされるのだった。
即興の変則二刀流で創生魔王マギと戦うことにしたせっちゃん。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。