どうも、ふぁもにかです。今回から創生魔王マギ戦ですが、どうやら雲行きが怪しくなってきたようですね、ええ。はてさて、どうなることやら。
「フレアバースト!」
「ッ!」
魔王城上空にて。背中に二対の漆黒の翼を生やし爛々とした瞳で刹那を捉えている創生魔王マギは刹那にスゥと滑らかな動きで右手を向け、手のひらからコォォと赤い光を発生させる。その赤い光がついさっき魔王城の天井を爆撃してすっ飛ばしたことを知っている刹那は翼をはためかせて上空へ飛び、赤い光の直線状から逃げる。直後、ついさっき刹那のいた場所に赤い光が一直線にほとばしり、直線状にある有象無象を容赦なく爆撃した。
(これは……接近戦が良さそうですね)
自分が剣士であることを差し引いても、相手に強力な遠距離攻撃手段がある以上、うかつに距離を取るべきじゃない。そう判断した刹那は一息に魔王マギの元へと飛ぶ。
本来ならまだまだ魔王マギの手の内が知れないことを理由に一定の距離を取って様子を伺うのがベストなのだろうが、今の刹那はハメツの呪文発動までの30秒に縛られる身。悲しいかな、いたずらに時間を消費する選択を取るわけにはいかないのである。
「アイスコフィン!」
「双武・斬空閃!」
刹那は飛翔する。魔王マギが上空に創生し重力を味方につけて落下してくる氷塊を旋回してかわし、そのまま魔王マギの背後を取ると、聖刀カナメと小太刀アカツキで曲線状に氣を二重に放つ。
「サンダーレイン!」
「双舞・斬鉄閃!」
刹那は空を駆ける。魔王マギが分厚いコンクリート壁を創生して双武・斬空閃を防ぎ、お返しと言わんばかりに雨のように雷を降らせる中。刹那は雷が直撃しないよう細心の注意を払いつつ、螺旋状に氣を二重に放つ。
「サモン!」
「双破・百烈桜華斬!」
刹那は二刀を振るう。下に飛ぶことで刹那の氣をかわした魔王マギが刹那の周囲に多種多様のモンスターを一気に創生する中。刹那は氣を存分に込めた聖刀カナメとアカツキを円を描くように振るい、襲いかかるモンスターを一掃する。
「テンタクル!」
「双燕・斬岩剣!」
刹那は一息に魔王マギとの距離を詰める。魔王マギが例の蛍光ピンク色の気持ち悪い触手を数十本ほど一気に創生し解き放つ中。刹那は迫ってくる触手の群れをスルーして魔王マギの懐に入り込み、上段から二刀を叩きつける。岩程度なら平然と真っ二つにできるであろう刹那の二刀は魔王マギがブオンと鈍い音を引き連れて振り上げた大剣によって防がれた。
振り上げられた大剣の勢いに負け、数メートルほど吹っ飛ばされた刹那は再び魔王マギに仕掛ける……より前に女神にお金を捧げて時間を巻き戻してもらう。いつの間にやら、脳内タイムウォッチの残り時間が『02‘71』となっていたからだ。
(危ない危ない。残り時間のこと、すっかり忘れてました……)
「へぇー、中々やるじゃない、勇者さん。様子見とはいえ、勇者さんが無傷なのはちょっと意外かも。でぇーもさ、ズルいよね」
「ズルい? 何がですか?」
「だってさぁ、勇者さんには時の女神が憑いてるじゃん。時の女神がいる限り、勇者さんは好き放題にタイムストリームを弄れる。ハメツの呪文の発動時期をいくらでもディレイできる。ほーら、ズルいズルい」
「え、貴女も私が見えるのかしら?」
「ふふふ、とーぜん。てか、他の魔王も全員普通に見えてたはずだよ。ただ敢えてツッコまなかったってだけだけなのでござりまするの巻。ドゥーユーアンダスタン?」
「……」
素で驚いているらしい女神の問いに魔王マギは自慢げに答える。相変わらずサラッと重要なことを口走る魔王マギを前に刹那は沈黙する。魔王マギの『ズルい』発言が一体何を目的としての言葉なのかが読み切れない刹那はただ魔王マギの様子を伺う。
「まぁそんなわけで、ズルい勇者さんにはズルで対抗しないとね。にゃは♡」
一方の魔王マギは刹那の鋭い視線を華麗に受け流すと、両手を天に目一杯広げて、自身の目の前に何かを瞬時に創生した。その創生された存在に刹那と女神は数瞬、声を失った。無理もない。なぜなら、魔王マギが作りだしたのは。
「え、ええええええええ!?」
「め、女神さま!? どうして!?」
肌の色が士気色になっていたり、とても自我があるとは思えないほどに死んだ目をしていたりする点以外はまるで時の女神そっくりな存在だったのだから。
(な、何ですかこれは!? ま、まさか、創生魔王は神をも作り出せるとでも言うつもりですか!? そんな馬鹿げたこと、あるわけ――)
「勇者さんにだけ女神が一緒とか、ズルいじゃん? だからほら、これで対等。あ・と・は、タイムストリーム格差の是正が必要かなぁ?」
創生魔王が時の女神と全く同等の存在を作り出した。そのあまりに突拍子もない展開に刹那と女神が目に見えて混乱する中、魔王マギはマイペースに言葉を紡ぎ、パチンと指を鳴らす。すると、ふわふわと宙を浮いていた士気色の女神が突如灰色に発光し、同時に時の女神が「うぐッ!?」と呻き声を上げて両手で頭を抱え始めた。
「女神さま!? どうしたんですか、女神さま!?」
「な、何なのこれ……わ、私のタイムストリームが奪われていく!? どうして――」
「ふっふっふ。創生で作り上げたマギちゃんの女神と時の女神は同位体。だ・か・ら、勇者さんの女神の持つ膨大なタイムストリームは今、マギちゃんの女神と共有中。そう! つまり、勇者さんの女神の力をそのままマギちゃんの女神の力として利用できるんだよねぇ♪ んでもって、マギちゃんの命令にゃ絶対遵守なマギちゃんの女神の力はそのままマギちゃんに献上される。ふふふ、何て素晴らしいこの世の真理! マギちゃん感激♡」
「「ッ!?」」
魔王マギが創生した士気色の女神を通して時の女神の力:タイムストリームを奪い、我が物としている。そのトンデモ事実に刹那と女神は今度こそ絶句する。一方、士気色の女神を介して時の女神のタイムストリームを取り込んでいる魔王マギは凶悪な笑みを見せる。
「さーてさてさて、いい感じにタイムストリームをゲットできてきた所で……楽しく愉快な第二ラウンドを始めるぜよぉ☆」
かくして。時の女神のタイムストリームを吸収する形で順次己の超強化を行っている魔王マギによる猛攻が始まるのだった。
時の女神のタイムストリームを取り込み、超強化した魔王マギ。
せっちゃんピンチ。マジピンチ。