どうも、ふぁもにかです。今回もある意味超展開です。前回とは思いっきり毛色は違いますが、超展開です。シリアス系統な超展開ではないので、その辺は安心してご覧くださいませ。
刹那と士気色の女神以外のあらゆる存在が停止した灰色の世界にて。銀髪碧眼と化した刹那は創生魔王マギを見やる。時の女神からこの世界の命運を託された刹那は倒すべき敵たる魔王マギへと視線を移し、時間停止を解除した。
時の女神を吸収し、時の女神の知識や経験を取り込んだ刹那にとって、もはや時間操作はお金さえあれば簡単にできることとなっている。ちなみに。時間操作の際に使うお金として、女神が別次元に保管している女神金庫のものを勝手に利用している刹那である。
「おろ? タイムストリームが吸収できなくなった? どゆこと?」
「もう、女神さまはどこにもいませんからね。同位体の女神がいても女神さまのタイムストリームの吸収はできませんよ」
「へぇ。何、まさか勇者さん、女神を殺しちゃったの? それとも進退窮まった女神が自殺でもした感じ? 何その超絶面白そうな展開!? マギちゃんワクワクしてきた! ……まぁ何でもいいか。そんじゃこの女神はいらないにゃ、処分処分っと」
魔王マギは自身の傍らでふわふわと飛んでいる士気色の女神を大剣で頭からバッサリ二分割する。頭から斬り捨てられた士気色の女神は声にならない絶叫を上げた後、光の粒子となって刹那の前から塵も残さず消滅した。
「で? 女神がいなくなってズルができなくなった勇者さんだけど……本気でマギちゃんに勝てると思ってるん? そこんとこどうなのかな?」
「ズルなら今もできますよ。女神さまと私は運命共同体になりましたから」
「は、何それ? んー、気に入らないにゃあ。さっきまでマギちゃんの攻撃を防ぐので手一杯だったはずなのにやたら落ち着いてるし、何かいきなりイメチェンしてるし。あーもう、うがぁぁああああああ!! 下等で下劣な人間は大人しくマギちゃんの力に絶望してればいいの!」
刹那が落ち着き払っていることに苛立った魔王マギは二対の漆黒の翼をはためかせて刹那へと急接近し、刹那に大剣での袈裟切りを仕掛ける。対する刹那は、ハメツの呪文が発動しないよう時間をしっかり巻き戻してから、後方に飛ぶ形で大剣を避ける。
(よし、いける! 魔王マギの動きについていける!)
時の女神のタイムストリームを吸収して超強化された魔王マギの動きに目も体もついていける。そのことについ笑みを零しつつ、刹那はお返しだと言わんばかりに正面から一気に魔王マギに接敵し、小太刀アカツキを振り上げる。
「にゃ!?」(え、何この速さ!? 急に勇者さんが速くなった!?)
「(時空神鳴流――)次元斬岩剣!」
先までの刹那とは段違いのスピードで、風を切って迫る刹那に動揺の声を漏らしつつも、魔王マギは大剣を盾代わりにして小太刀アカツキの斬撃を防御する。対する刹那は魔王マギの注意が小太刀アカツキに向けられている隙を利用する。すかさず氣とタイムストリームを存分に込めた聖刀カナメを上段から振り下ろす。
「ちぃッ!? この、ダークランサー!」
「刻来雷鳴剣!」
岩どころかダイヤモンドすら叩き潰してしまいそうな刹那の刀撃に魔王マギはたまらず高度を落として刹那の攻撃を空振りさせる。そして、自身に冷や汗を流させた刹那に更なる苛立ちを込めて黒く染まった槍を何十本も同時に解き放つ。一方の刹那は電気エネルギーを帯電させた二刀による剣舞で全ての闇槍を弾き飛ばし、魔王マギへの距離を一息に詰めていく。
「フリーズフォール!」
「時空斬空掌・散!」
「ファイガンバースト!」
「流刻雷光剣!」
「サンダークラッシャー!」
「真空斬鉄閃!」
「ラグナビッグバム!」
「瞬光斬空閃!」
「ポイズンドッグ!」
「閃空斬魔剣!」
「ブラストレイン!」
「虚空百花繚乱!」
「ダクネスインパクト!」
「冥刻百烈桜華斬!」
「はぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ――!!」
「おぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――!!」
魔王マギは炎に水に雷に爆発に毒と、様々な存在を創生し刹那にぶつけんとする。刹那は自身の持つ膨大な氣とタイムストリームをこれでもかと利用して己の剣技を魔王マギにぶつけんとする。
膨大な威力を持った創生物と時空神鳴流とのぶつかり合いは、それぞれが己の長所を利用して繰り出した技と技との応酬は、衝撃波と化して空気を伝って地上まで伝播していく。地上に立つ誰もがつい空を見上げてしまうほどの衝撃波が、二人の戦いの壮絶さを物語っている。
しかし。それだけ激しい戦いを繰り広げている張本人たちは未だに無傷だった。二人の実力がどこまでも拮抗しているせいで、どうしても決定打となる攻撃が放てないのだ。
(こうなったら!)
脳内タイムウォッチが示すハメツの呪文発動までの残り時間が『03‘22』となっていたので改めて時間を巻き戻した後。刹那は魔王マギにダメージを与えるための切り札を使うことを決意し、魔王マギに女神金庫から取り出した10Gを投げつける。
勇者と魔王による世界の存亡を賭けた空中戦の最中、唐突にはした金を投じてくる勇者刹那の意図がまるで読めない魔王マギはつい10Gを受け取ってしまう。
「へ? なんでお金?」
「ただいまより魔王マギ、女神ローンを利用! が、返済の意思なし! よってこれより借金の強制取り立てを開始する! 来い、借金鳥!」
「は、え、何言って――」
何か10Gに仕掛けが施されてるのかと魔王マギがまじまじと10Gを見つめる一方、刹那は魔王マギの持つ10Gを指差し声高に言葉を綴る。すると。全然意味のわからない刹那の言葉に魔王マギが反射的に聞き返そうとした瞬間、刹那の目の前に何の前触れもなく怪鳥が現れた。
『グガァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
全身サファイア色で、人体を軽く超える体躯を持ったその怪鳥:借金鳥は長い翼と長い尾をたなびかせて雄叫びを上げる。
(よし、上手くいった)
自身の思惑通り、借金鳥の召喚に成功した刹那は内心でギュッと拳を握る。
刹那の切り札。それは、魔王マギに無理やり女神ローンとしてお金を貸し付け、強制的に魔王マギがお金を借りたという既成事実をでっち上げ、魔王マギに返済意志がないと決めつけて理不尽に強い借金鳥を呼び寄せ戦わせることである。女神ローンの仕組みを巧みに利用した何ともエグい切り札を平然と使う辺り、刹那の取り込んだ女神の感性が刹那の性格に確かな影響を与えてることはまず間違いないだろう。
『ガァアアアアア!!』
「ッ!?」
借金鳥はマッハを軽く超越したスピードで債務者:魔王マギへと飛翔。鋭いくちばしで魔王マギの腹部を抉り取った。借金鳥のあまりの速さに何が起こったのかを把握できない魔王マギに借金鳥は口から炎を噴射し、魔王マギを焼きつくした。
「く、ぅ。ちょっ、何なのよ! このデタラメな鳥ぃ!!」
火だるまと化したマギは自身を包み込むように大量の水を創生し、速やかに炎を鎮火する。そして。くり抜かれた腹部を即座に創生して致命的な怪我を治した魔王マギは、突然現れた理不尽に強い怪鳥への疑問を叫ぶ。
『グアッ!』
しかし、にっくき債務者:魔王マギの問いに借金鳥が律儀に答えるわけもなく、翼を振るって何十本もの羽毛を飛ばす。咄嗟に分厚いコンクリート壁を創生して盾にする魔王マギだったが、借金鳥の羽毛は当然のようにコンクリート壁を貫通し、魔王マギの体をも貫いて虚空へと飛んでいく。
(これは、私の出る幕はなさそうですね)
体中が穴ぼこだらけになった魔王マギを『グガァァアアアアアアアアアア!!』と声圧だけで吹っ飛ばし、さらに追撃をせんと魔王マギへと飛翔する借金鳥を刹那は少々複雑な気持ちで眺める。時の女神のタイムストリームを吸収する前はまるで歯が立たず、吸収しても互角がいい所の相手を軽くフルボッコにする借金鳥への恐れと、借金鳥が味方で良かったとの安堵の気持ちを胸に、借金鳥の戦いを刹那は見守る。
魔王マギは借金鳥を超えられないだろう。借金鳥が一方的に魔王マギを蹂躙する様子から刹那がそう判断した、まさにその時。体中が穴ぼこだらけの魔王マギが吐血とともに「ブラックホールッ!」と叫ぶ。直後、借金鳥は眼前に創生されたブラックホールに呑み込まれその姿を消した。
(……借金鳥でも倒せませんでしたか)
借金鳥が消失した空間に静寂が広がる中。切り札を失った刹那が魔王マギの攻略の算段を立てようとすると、穴の開いた体を創生して治した魔王マギが「ふっふくくくむふふふふふふふ!」と壊れたように肩を震わせ始めた。
「今のはねぇ! とっても! とぉぉおおおおおっっっっっっても! 効いたよ、勇者さん。とんでもない動物飼ってたみたいだね。クッソふざけた真似しやがってさぁ」
「……」
「ふっふふ。勇者さんのサプライズにゃマギちゃん凄くビックリしちゃったし、これはお返ししないとね。ふふふふふふふふ、にゃっははははははははぁぁあああああ!!」
魔王マギはギラギラと敵意に満ち満ちた瞳で刹那を射抜きながら狂ったように哄笑する。どうやら魔王マギは本格的に刹那相手にキレたようだ。
(何をするつもりだ?)
刹那は魔王マギが何をやっても対応できるように二刀を改めて構えつつ警戒心を募らせる。その一方で、魔王マギは肉食獣のごとき獰猛な笑みを顔に貼りつけるのだった。
エグい戦法を駆使しつつ魔王マギとの激戦を繰り広げるせっちゃん。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。