どうも、ふぁもにかです。今回はナイトくんの爆弾発言から始まる最終回です。
麻帆良へ行きたいと要望を口にしたナイトくん。せっちゃんの判断やいかに!?
「――お願いします! 僕も、僕もセツナさんの世界へ連れて行ってください!」
意を決したナイトは勢いよく頭を下げて刹那にお願いをする。対する刹那はナイトからのまさかの申し出に思わず硬直していた。この世界で生まれ育ったナイトが異世界へ行きたいと考えているだなんてまるで想像していなかったからだ。
「ナイトさんが、私の世界にですか?」
「はい」
「それは、どうしてですか?」
「僕は女神さまの騎士として、一生を捧げると心に誓いました。それで、今女神さまはセツナさんの一部として生きている。だったらボクの守るべき人は、仕えるべき人はセツナさんなんです!」
「で、でもナイトさんはこの世界の人間です。知り合いとか、家族とかもいるでしょうし……」
「ボクの仲間は皆殺されました。家族もです。……もう、ずっと昔の話です」
「えッ」
「僕は900年間騎士として生きています。もう生きている知り合いもほとんどいません。……この世界に未練はありません。どうか、僕も一緒に連れて行ってください!」
刹那はどうにかナイトに思いとどまってもらおうと言葉を紡ぐ。単身で異世界に飛ばされることに起因するあらゆる苦労を一番よく知っているからだ。しかし。ナイトの決意が相当固いのか、刹那の言葉にナイトの心が揺らぐ気配はない。どうしたものかと刹那が頭を抱えていると、二人の様子を傍から眺めていたナツキが言葉を放った。
「別にさ、連れてってもいいんじゃない?」
「ツッキーさん!? いや、でも……」
「いいじゃんいいじゃん。こんなに行きたがってるんだしさ。それにさぁ、ここで断ってもこの人が凄くショックを受けるだけで、この人のためにはならないんじゃない?」
ナツキがナイトの援護をしたことに刹那が驚愕を顕わにする中、ナツキは腕を頭の後ろで組みながら軽い口調で刹那の説得にかかる。ナツキの意見を受けた刹那は熟考の末に「…………それも、そうですね」と同調すると、改めてナイトと向き合った。
「ナイトさん。私の世界はこの世界と随分と違います」
「はい」
「ここの常識も大抵、私の世界では非常識となります。ですので、900年も生きているナイトさんが私の世界の常識や文化に慣れるのは非常に大変だと思います」
「はい」
「時にはこの世界が恋しくなることもあるでしょう。でもすぐにはこの世界に帰れません」
「はい」
「それでも構いませんか?」
「はい! もちろんです! セツナさんの騎士として、どんな苦難だって乗り越えてみせます!」
刹那の問いかけにナイトはしっかりと刹那の碧眼を見据えて即答する。何を突きつけられても決して揺るぐことのなさそうな強固な意志を前にして、刹那は改めて認識した。ナイトもかつて世界を窮地から救った一人なのだと。
「わかりました。一緒に行きましょう」
ナイトを麻帆良へ迎え入れることにした刹那は一度深呼吸をすると、ナイトに右手を差し出す。すると、ナイトは「セツナさん……!」とパァァと晴れやかな笑みを浮かべて刹那の手を取った。よっぽど刹那とこれからも共にいられることが嬉しいのだろう。
「話しは済んだか?」
「はい」
刹那とナイトとの話が一段落つくまで腕を組んで待機していたレイフィールの呼びかけに刹那は一つうなずく。そして、刹那はレイフィール、マキナ、ライラック、ナツキの4人へと視線を移す。この世界で出会った、自分の知り合いのそっくりさん。その一人一人に目を向ける。
「レイフィールさん」
「ん」
「マキナさん」
「おう」
「ライラさん」
「はい」
「ツッキーさん」
「うぃ」
「皆さん。いつかまた、どこかで会いましょう。それまで、どうかお元気で」
刹那は眼前の4人に別れの言葉を告げると、微笑みを浮かべる。そして。皆との別れが名残惜しくなる前に麻帆良へ帰ろうと、刹那は自身の体の情報を媒介にして膨大なタイムストリームをエネルギーとして利用する。女神の知識を元に、世界を越えるための手段を着実に行使する。かくして。刹那はナイトを引き連れて元の世界へと戻っていくのだった。
◇◇◇
レイフィール、マキナ、ライラック、ナツキの4人の前にて。別れの言葉を残したセツナとナイトの周囲を金色に輝く光の粒子が優しく包み込み、2人の姿を覆い隠していく。そして。光が晴れた時、セツナとナイトの姿は消え失せていた。
「……行っちゃったね」
「笑顔で別れようとは言いましたが、やはり別れとは寂しいものですね」
「うん、そだね……」
刹那が元の世界へ帰るシーンの一部始終を眺めていたナツキとライラックがただただ感傷にふける中。レイフィールは頭をガシガシと掻きながら「貴様ら、何いつまでしんみりしている。目障りだ」と一蹴する。
「おいおい。そんな言い方ないんじゃないか?」
「僕に指図するな、小娘。っと、そうだ。受け取れ」
レイフィールはマキナの非難の言葉にプイとそっぽを向く。その後。ふと何かを思いついたレイフィールは白衣のポケットから黒い四角形の機械を取り出し、マキナ・ライラック・ナツキの3人にヒョイと投げ渡した。
「ん? 何だこれ?」
「通信機だ。セツナの世界とこの世界とを行き来できる算段がついたら連絡する。その時はグズグズせずにさっさと来い。でないと置いて行くからな、いいな?」
「へぇー? 意外だな。あんたの捻じ曲がった性格からして、世界を越える方法を開発したら自分一人で勝手にセツナの世界に行くもんだと思ってたよ」
「ふん。貴様らもそれなりにセツナと関係を持っているみたいだからな。異世界探索は貴様らも一緒にした方がセツナも喜ぶだろう」
「なるほど、これはうっかり無くさないよう気をつけないといけませんね。セツナさんとの感動の再会の機会が失われてしまいます」
刺々しい言葉をぶつけてくるマキナにレイフィールはしぶしぶといった調子で3人に通信機をプレゼントした動機を話す。すると、興味津々に通信機を見つめていたライラックが鷹揚とした様子で「ありがとうございます、レイフィール博士」と感謝の言葉を述べた。
「む? 僕を知ってるのか? えーと……」
「あ、俺はライラックと言います。気軽にライラと呼んでください」
「じゃあライラ。なぜ僕のことを?」
「貴方の発明品は奇抜で使えないものが多いと嫌煙してる人も多いですが、俺は気に入っているんです。遺跡探索の際にありがたく使わせてもらってます」
「……む、そうか」
「あー! レイレイ照れてるぅ? ねぇねぇ照れてるよねぇ? いやぁー、照れてますなぁ! アッハッハッハッ!」
「う、うるさいアホ娘!」
「な、また言った! アホ娘ってまた言った! そっちだってショタショタしてるくせに!」
「あ?」
「お、落ち着いてください。2人とも」
「まぁいいじゃないか、ライラック。少しぐらい、好きにさせておこう」
水と油の関係なのか、やいのやいのと騒ぐレイフィールとナツキ。険悪ムードで激しく言葉をぶつけ合う2人を心配そうに見つめるライラック。やれやれといった表情で見つめるマキナ。
異世界の住人たる桜咲刹那が守り抜いたこの世界の住人は、平和となった世界で思い思いに生きていく。世界滅亡の脅威に怯えることなく前を見据えて。今日を、明日を生きていく。限りある人生を確かな足取りで進んでいく。時の女神の愛した世界は、穏やかに毎日を紡いでいくのだった。
はい、ということで『なぜだか勇者30の世界に飛ばされてしまった神鳴流剣士:桜咲刹那が30秒で世界を救っちゃう、ご都合主義な展開満載の短編物語』たる勇者刹那30本編はこれにて終了となります。何とも稚拙な文章だったと思われますが、ここまで読んでくださった読者の方々、本当にありがとうございます。
あとはせっちゃんの麻帆良帰還後のエピローグの話を投稿して、それで勇者刹那30は晴れて完結となります。どうかお付き合いのほど、よろしくお願いします。