【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回は刹那VS.冒険者二人の熱いバトル回……なんてなかった。



Beginning(8)

 

 刹那と戦った冒険者二人はあっさり敗北した。そもそも元々の刹那の実力でも軽く倒せる程度のレベルだった彼らが超速レベルアップの恩恵を存分に受けた魔改造済みの桜咲刹那に勝てる道理など欠片もなかったのだ。刹那がよっぽど慢心でもしない限り。

 

 また、相手に対してブチキレていたのは何も冒険者二名だけではない。表情に出さなかっただけで刹那も内心ではこのちゃんに似た少女に手を出して少女を困らせていた男二人にそれはもう怒り心頭だった。そのため、男二人はものの数秒で刹那のデッキブラシの餌食と化したのだった。

 

 刹那が倒れている中年男性のことを近くにいた村の人たちに任せて冒険者二人をロープでぐるぐる巻きにしているとさっき冒険者たる男たちに絡まれていた少女がトテトテと刹那の元にやってきた。刹那によって身動きを封じられた気絶状態の男二人を警戒しつつ。

 

「あ、ありがとうございました! 旅の剣士さん! 一時はどうなるかと思いましたけどおかげさまで助かりました! 本当にありがとうございました!」

「あ、う!? い、いいいいえッ! 私はそんな大したことなんてしていないですよ! だからどうか顔を上げてください! 恐れ多いです!」

「へ? 恐れ多い?」

「あ、いえ! こっちの話ですのでどうかお気になさらず!」

「そ、そうですか……?」

 

 少女は刹那を尊敬の眼差しで見つめつつ何度も頭を下げる。対する刹那は目に見えて動揺する。頭の中では眼前の少女が別人だとわかっている。だけど。このちゃんと同じ声で、このちゃんと同じ顔で話されると、それだけで刹那の中で本物のこのちゃんと目の前の少女とが混同してしまうのだ。一方。刹那に尊敬の眼差しを注いでいる少女はあたふたする刹那を前に、さっきまでとはまるで別人だと首をコテンと傾ける。

 

「あの、私はコノハって言います! その、貴女のお名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

「わ、私はさくら……いえ、セツナと言います。好きなように呼んでください」

 

 このちゃんとそっくりの子――コノハ――に名前を聞かれた刹那はフルネームを言おうとして、咄嗟に名前だけを伝えることにした。コノハの自己紹介からこの世界に名字という概念がないのではないかと思ったからである。郷に入っては郷に従えではないが、名字が定着していない場所で名字まで名乗ると少々煩わしくなるかもしれない。そう考えた上での刹那の判断である。

 

「あと丁寧語は使わなくていいですよ、コノハさん。慣れていないのでしょう?」

「え、ホント? あ、でも……いいんですか?」

「はい。普段の話し方で結構ですよ。その方が私としても話しやすいですし。年齢だって見た所、そんなに違いがあるようには見えませんし」

「そ、そう? でもセツナさんも丁寧語ですし――」

「私はこれがデフォルトですので、お構いなく」

「……えと。それじゃあ、遠慮なく」

 

 刹那は早速コノハにいつも通りの口調で話すように要請する。刹那が丁寧語で誰かと話すことはあっても逆に刹那自身が丁寧語で会話されることが今まで滅多になかったので、何だか違和感が凄まじいのだ。それがこのちゃん似の少女による丁寧語ならなおさらである。尤も、コノハが普段の喋り方になっても京都弁ではないので違和感が完全に消え失せるわけではないのだが。

 

「それはそうと、セツナさんかぁ。うんうん! いい名前だね! 愛称をつけるなら『せっちゃん』って所かな?」

「せ、せっちゃんッ!?」

「あ、あれ? もしかして、嫌だった? さすがに馴れ馴れしかったかな?」

「あ、いいいいえいえ! そんな滅相もありません! ただ私の友達に同じ呼び方で私を呼ぶ人がいるのでちょっと驚いてしまっただけですよ、このちゃ……コノハさん」

「なーんだ。もう先着さんがいたんだ。ちょっと残念」

 

 刹那の顔色を伺いつつ問いかけてくるコノハに刹那は首をブンブンと振って否定する。刹那としてはコノハがこのちゃんと何の関係のない赤の他人であってもなるべくコノハに笑顔でいてほしいのだ。しかし。当のコノハは刹那の反応に何か不満を抱いたのか、「むー」と不機嫌そうに眉を寄せつつ刹那へと顔を近づけてくる。

 

「コ、コノハさん?」

「丁寧語はともかく、『コノハさん』なんて他人行儀な呼び方しないでほしいな。私のことはちゃん付けで呼んで、ね?」

 

 コノハの漆黒の瞳が刹那を射抜く。どこか明日菜さんに似た雰囲気を持っていて、ポニーテールのこのちゃんとそっくりな容姿をしたコノハ。いくらこのちゃんと別人でもこれは逆らえないな。コノハの要望をどうにか拒否しようとした刹那が観念した瞬間だった。

 

「……はい。わかりました、コノハちゃん」

 

 コノハの要望を受け入れた刹那は「ふぅ」と軽く息を吐いた後に親しみをこめて『コノハちゃん』と呼ぶ。刹那に『コノハちゃん』と言わせることに成功したコノハは嬉しそうに花が咲いたような笑みを浮かべた。

 




 このちゃんとそっくりなコノハちゃんに動揺しまくりのせっちゃん。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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