どうも、ふぁもにかです。今回はついにヘルマン戦です。さーて、せっちゃん。異世界で超絶パワーアップした君の力を見せつける時ですよ!
水牢囚われ組メンバー:夕映・和美・古菲・のどか・木乃香・カモミールが、ヘルマンにフルボッコされたダメージから復帰できていないネギ・小太郎が、今しがた刹那に救われたばかりの明日菜が見守る中。刹那とヘルマンは激戦を繰り広げていた。否、ヘルマンの生み出す暴力の嵐がただただ吹き荒れていたといった方が正しいか。
「ふん!」
ゴウッとの暴風のごときうねりとともに繰り出されるヘルマンの拳。拳の残像が幾重にも分かれて刹那に襲いかかるも、その全ての拳は空振りに終わる。刹那はヘルマンと紙一重の距離でただヘルマンの強力極まりない拳を薄皮一枚の所で避け続ける。
傍から見れば、ヘルマンの猛撃に刹那が回避するので精一杯のように映るだろう。実際、つい最近まで魔法のことを知らず、戦いと無関係な世界を生きていた夕映・和美・のどか・木乃香・明日菜は今の刹那を劣勢と判断し、程度こそあれ蒼白の表情を浮かべていた。
しかし。ネギ・小太郎・古菲・カモミールは気づいていた。刹那が敢えて自分から攻撃していないことに。汗一つかかず、平然とした表情でヘルマンの猛攻をかわし続けていることに。
「す、凄い……」
この時、ネギは悟った。刹那さんなら大丈夫だと。刹那さんなら、僕と小太郎君の二人がかりでも倒せなかったあの悪魔を倒せると。
(頑張ってください、刹那さん……!)
知らず知らずの内、ネギは拳をギュッと握っていた。刹那が颯爽と登場したことで皆の注目が刹那に向かっている今こそが水牢に囚われた生徒たちを助ける大チャンスだということも忘れて、ネギは刹那の戦いに見入っていた。
◇◇◇
「どうした? こんなものかね、サクラザキセツナ嬢?」
刹那に一切の休息を与えずひたすら拳を叩きこまんとしつつ、ナチュラルに刹那を挑発するヘルマン。もちろん、ヘルマンはわかっている。今の刹那が決して劣勢でないことに。それどころか自分の方が追い込まれていることに、ヘルマンはとっくに気づいている。
「さて、どうでしょうね?」
対する刹那は薄い笑みを浮かべて言葉を返す。これまで刹那がただ回避行動のみ取っているのは、偏にヘルマンに彼我の実力差を思い知らせ、ヘルマンの戦意を折るためだ。また、ヘルマンの実力を正確に読み取る意図もある。
(大体の実力は把握しました。奥の手を隠してありそうですが、そろそろ攻めましょうか)
刹那はダンと地を強く踏んで後方へ跳び、ヘルマンと数メートルの距離を取る。そして。左手で持った聖刀カナメをヘルマンに見せつけるように前に差し出し、ゆっくりと鞘から刀身を抜き取った。蒼白に輝く聖刀カナメを目の当たりにしたヘルマンは思わずといった風に後ずさりする。おそらく悪魔の本能が聖刀カナメを酷く拒絶したがゆえの反応なのだろう。
「……ふむ。サクラザキセツナ嬢。君は烏族と人とのハーフだ。妖怪の血が半分混ざっている君がなぜ、それだけ神聖な氣を放つ刀を扱える?」
「それは私にもわからないんですよね。考えられるとすれば、私が世界を1つ救った勇者だから、とか? 勇者を滅ぼすなんて、聖刀の風上にも置けませんからね(それか刀が使用者を傷つけないようにマキナさんが何とかしてくれたとかですかね?)」
「勇者?」
「貴方はどうやら事前に私たちの情報を集めてたようですが……情報で把握したであろう私と今の私は全くの別物です」
刹那はおもむろに聖刀を掲げる。原因不明の異世界転移&異世界ライフで手に入れた力の象徴を誇らしげに頭上に掲げる。
あの世界には、色んな人がいた。
何百年も前から生きてきた先輩として私を支えてくれた騎士がいた。
己の存在を肯定して誇って傲慢に貪欲に生きればいいと言ってのけた研究者がいた。
私に文句のつけようのない素晴らしい刀を作ってくれた刀鍛冶がいた。
ホームシックに陥っていた私を元気づけてくれたロステクハンターがいた。
常にマイペースに暴れまくりただただ私を呆れさせた怪盗がいた。
いつも一緒にいて私に進むべき道を示してくれた守銭奴がいた。
――私が真に守りたいものを教えてくれた、大事な友達がいた。
どの出会いも決して無駄ではなかった。
どれも大切で、かけがえのないもの。
異世界で手に入れた、何物にも代えがたい宝物。
出会いが、あの世界で生きた軌跡の全てが、私の新しい力の源だ。
「これが私の手に入れた、大切な人の『幸せ』を守り抜くための新しい力です!」
刹那は氣とタイムストリームを聖刀カナメに込めると「真空斬鉄閃!」と聖刀カナメの一振りで螺旋状に氣を放つ。明日菜の魔法無効化能力を使えなくなったヘルマンは迫りくる氣の塊を己の拳で相殺できないと瞬時に理解し、右に軽く跳んで回避する。
瞬間、ヘルマンは目を疑った。無理もない。なぜなら刹那の手元にあるはずの聖刀カナメがヘルマンの眉間に今にも突き刺さらんとしていたのだから。
「ぬおッ!?」
ヘルマンは咄嗟に首を後ろに反らして聖刀カナメの一撃を回避する。刺さる対象を失いただただビュオンとまっすぐに飛んでいく聖刀カナメ。槍投げの要領で刀を投擲した張本人たる刹那は「やはりこれぐらいは避けますか」と一言呟き、瞬く間にヘルマンに接敵。小太刀アカツキで「閃空斬魔剣!」と横薙ぎに斬りかかった。
「魔を滅ぼすのにうってつけなあの刀を捨てるとは、正気かね!?」
「さて、どうでしょうねぇ」
動揺の気配を残すヘルマンの問いに刹那は曖昧に返事する。刹那は知っている。戦闘において重要なのは、いかに相手の戦闘スタイルを崩していくか、いかに相手を混乱させ、本来の力を発揮させないかにあることをしっかりと理解している。
ゆえに。刹那は攻め手に次々と奇策を織り込んでいく。氣を存分に込めた足でステージの床を踏み抜き、ヘルマンを足止めさせる地響きを発生させる傍ら、小太刀アカツキを持たぬ左手に氣とタイムストリームを集中させた刹那は「時空斬空掌・散!」と、左手を横に払って氣の塊を連続でヘルマンにぶつけていく。
放った氣弾の内、いくつかをまともに喰らって吹っ飛ばされるヘルマンに刹那はすぐさま肉薄し、「次元斬岩剣!」とダイヤモンドすら真っ二つにできる斬撃でヘルマンの上半身と下半身を離れ離れにさせる。そう見せかけてわざと刹那はアカツキを空振りさせ、振りきった右手を返す形でアカツキの柄をヘルマンの鳩尾に抉りこんでいく。
正攻法とはかけ離れたトリッキーさに富んだ刹那の戦闘スタイルは致命傷でこそないがヘルマンに順調にダメージを与えていく。ヘルマンを良いように翻弄する刹那の戦いは、着実にヘルマンを敗北へと追い込んでいった。
(かくなる上は――)
「止まりたまえ、サクラザキセツナ嬢」
「ッ!」
刹那の刻来雷鳴剣を寸での所で回避し、後方に退いたヘルマンが強気な口調で刹那に命令する。これまで一方的に刹那の攻撃を喰らうのみだったヘルマンの威圧のこもった言葉は刹那の不意を突き、刹那をその場に留まらせることに大きく寄与した。
「やっと降伏する気になりましたか?」
「いや、君が想像よりも何倍も強いようだから、少し趣向を変えようと思ってね。あめ子、すらむぃ、ぷりん」
ヘルマンに名前を呼ばれた3体のスライムはおもむろに水牢内の夕映・和美・古菲・のどか・木乃香・ついでにカモミールの存在する水牢のすぐ側を陣取る。そのスライム3体から水牢内のメンバーを傷つける意思を読み取った刹那は「……人質に手を出すつもりですか」と語気をわずかに荒らげる。
「なッ!? 話が違うじゃないですか!? 貴方を倒せば皆を返してくれるって――」
「そうだな、ネギ君。確かに私はそう言った。実際、彼女たちはネギ君をおびき寄せ、本気で戦わせるためのただのエサだ。しかし、私にはネギ君をしばらく戦えない体にするようにとも命令されていてね。魔法をつい最近知った一般人を傷つけるのは乗り気ではないが……命令されている以上、どんなに醜い手段を使ってでも、遂行せねばならんのだよ」
「そんなッ」
「さて。サクラザキセツナ嬢。君のクラスメイトに傷を負わせたくなかったら……後はわかるね?」
「……」
ヘルマンはネギ相手に語り終えると、刹那に大人しくするよう脅しをかける。その場にピタリと立ち止まり、口を真一文字に結んだままヘルマンを睨みつける刹那。ヘルマンは刹那の反応に当然の結果だと薄く笑みを浮かべる。何せ、あの水牢の中にはサクラザキセツナの護衛対象であり、同時にサクラザキセツナの最大の弱点であるコノエコノカがいるのだから。
(一時はどうなるかと思ったが、何とかなりそうだ)
ヘルマンは脅しがしっかりと効いている今の内にこの場における最大の危険人物を戦闘不能にしようと刹那の意識を刈り取る拳を振り下さんとする。しかし、ヘルマンは知らなかった。実際の所、刹那が水牢内に木乃香がいると知らないことに。そして。刹那には
「残念ながら人質は効きませんよ。……誰が、私は一人でここに来たと言いましたか?」
「む? なにッ!?」
トンと軽く後方へ移動しヘルマンの拳を避けた刹那は意味深な言葉を口に出し、ヘルマンに水牢の方を見るように目線で促す。刹那の意図する所がわからないまま水牢へと視線を移したヘルマンは、驚愕した。水牢から目を離したほんの少しの間に水牢は破壊され、あめ子、すらむぃ、ぷりんは床に突き刺さった聖刀カナメを起点として半径1メートル範囲に張られた球状の薄白い膜の中でパタリコと力なく倒れていたからだ。
「あレー?」
「力が抜けていキマスー」
「なーんデー?」
「これは聖刀カナメの張った清浄な結界みたいなものですからね。スライムの君たちには効果抜群ってこと」
皆の注目が刹那に集結している内にこっそりスライム3体の背後に回り込み、聖刀カナメで無力化し、持ち前の剣でバッサリと水牢を破壊したナイトは律儀にスライムたちの問いに返答する。
ちなみに。刹那が奇策としてやらかした聖刀カナメの投擲。あれは単に刹那がアイコンタクトで後から野外ステージにやってきたナイトに人質救出を頼んだ上で聖剣カナメを投げ渡そう(預けよう)としたがための行動だったりする。
「あの騎士は一体……!?」
「よそ見してていいんですか?」
事前に調べた際には一切浮かび上がることのなかった完全なイレギュラーの介入にさすがのヘルマンも内心で大いに狼狽する。もちろん、その隙を見逃す刹那ではない。
刹那はあくまで周囲を巻き込まないよう調節して氣を込めて、電気エネルギーを帯電させる。そして。「真・雷光剣!」と、アカツキでヘルマンに袈裟切りを浴びせると同時に高密度の電気エネルギーを爆発させた。
「がああああああ!?」
解放された電気エネルギーはヘルマンの体で暴れ狂い、ヘルマンの体を容赦なく焼いていく。あまりの痛みにヘルマンは悲鳴を上げ、ついに両足で体を支えることができずに仰向けに倒れ込む。
「30秒で倒す、とはいきませんでしたが……これで終わりですね」
かくして。刹那は上位悪魔たるヘルマン相手に無傷の完勝を収めるのだった。
ヘルマン戦終了。チートなせっちゃんのおかげであっさり風味に終わりました。
きゃー! せっちゃん、カッコいい! 結婚して!