【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ヘルマン戦も終わりましたので、ついに。ようやく。皆さんお待ちかねであろうシーン到来です。上手く表現できてるか心配ですが……いやぁー、ここまで長かったですね。まさか81話も使うとは思いませんでした。



I'm here(4)

 

「ネギ先生、どうしますか?」

 

 仰向けに倒れ、ぷすぷすと体の所々から黒煙を上げるヘルマン。軽く一瞥してヘルマンが戦闘不能になったと判断した刹那は背後のネギへと振り返って判断を仰ぐ。

 

「え? 刹那さん?」

「何か因縁があるのでしょう? でしたら、この悪魔の処断はネギ先生がすべきです」

「……ありがとうございます」

 

 まさか自分に話を振られるとは思わなかったと言いたげなネギに刹那は優しく語りかける。刹那の意図を知ったネギはペコリと頭を下げて感謝すると、ヘルマンの元へと歩を進めていった。

 

 トドメを刺さなくていいのかと問いかけるヘルマンに対するネギの答えは否だった。理由としてネギが挙げたのは、ヘルマンが本気で戦っているように見えなかったこと。過程はどうあれ人質をただ拘束するだけで酷いことをしなかったこと。見て、話して、戦った印象から、ヘルマンがそれほど酷い人には見えないこと。

 

 

 刹那はネギの考えを内心で甘いと切り捨てる。

 異世界での経験がネギの甘さを真正面から否定しにかかった結果だ。

 

(でも、私もネギ先生の甘さに助けられた身ですしね)

 

 その一方で、刹那はお人好しなネギの決断に微笑みを浮かべる。

 

 

 きっと、ネギ先生は今ぐらい甘くてちょうどいいのだろう。

 だが、ネギ先生は発展途上の身。

 これからどんどん成長していく身だ。

 ネギ先生がこれから先、どのように成長するかはわからない。

 今の甘さを捨てる方面に成長するのか。

 自身が持つ甘さをそのままに成長するのか。

 そんなことは誰にもわからない。

 けれど、どっちに転がるのだとしても。

 ネギ先生は一人じゃない。

 ネギ先生を助けたいと思う人はたくさんいる。

 だから、支えればいい。

 サポートすればいい。

 完璧な人間はどこにもいない。

 だから、ネギ先生に足りない部分は、皆が、私が全力で補っていく。

 それでいいのだろう。

 

 

 ネギが封魔の瓶を使い、ヘルマンとスライム3体を封印する中、今回の一件の最大の功労者たる刹那はそんなことをつらつらと考えていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ヘルマンの脅威が去り、静寂が野外ステージを包む中。雨に打たれることなど気にせずに複雑な眼差しを封魔の瓶に注いでいたネギは一転、刹那の方へと体を向けた。

 

「刹那さん! どうして急にいなくなっちゃったんですか!?」

「そうよ、刹那さん! 誰にも何も言わずにいきなりいなくなったから心配したんだからね! 何か事情があるなら言ってくれればよかったのに!」

「あ、あの、その……」

「そうネ! 四天王の私に何も言わずに行っちゃうなんて水臭いアルヨ!」

「ねね、それも気になるけどなんで銀髪碧眼になってるか聞いていい? 髪染めとカラコンにしては凄く綺麗で透き通ってるけど、それも魔法的な何かなのかな?」

「えーと、皆さん落ち着いて……」

 

 ネギが刹那に真正面から詰め寄り非難混じりの疑問をぶつけたのを契機に、明日菜・古菲・和美が刹那の周囲を取り囲み、それぞれ言葉を畳みかけていく。いくら異世界で色々と経験をしたとはいえ、4人の勢いを鎮める術を知らない刹那はたじたじとなる。

 

 対処に困った刹那が少し離れた場所から温かい眼差しを向けてくる夕映やのどかに目線で助けを呼ぼうとした時、ゆらりと刹那に近づく影があることに気づいた。それは、刹那が異世界滞在中に最も会いたいと願った人物だった。

 

 刹那へとおもむろに近づく影の正体に気づいたネギ・明日菜・古菲・和美が空気を読んで刹那から少し距離を取る中、一人の少女が刹那の元へと歩みを進めていく。ゆっくりと。ゆっくりと。刹那との距離を一歩一歩縮めていった少女:木乃香は刹那を見つめて、震える口を開いた。

 

 

「せっ、ちゃん……? ホンマに、せっちゃんなん?」

「はい、せっちゃんですよ。髪の色とか、目の色とか、色々変わりましたが、私は桜咲刹那です。私が消えて何日経ってるかはわかりませんが、ご心配をおかけして申し訳ありません。木乃香お嬢さ――ま゛ッ!?」

 

 刹那は木乃香の涙声での問いに優しい声色で答える。と、ここで。今にも泣き出してしまいそうな木乃香を元気づけようと言葉を選んで話す刹那を待っていたのは木乃香という名のミサイルだった。勢いよく抱きついてきた木乃香ミサイルを思いっきり鳩尾に受けた刹那はお腹を押さえてうずくまる。時空神鳴流剣士:桜咲刹那ノックアウトの瞬間である。

 

(あれ? 何このデジャヴ?)

「良かった、良かった……! 急にいなくなって、もう会えないかもって思って。どうしようって。……寂しかった。胸が苦しくて、寂しかったんや!」

 

 木乃香は刹那に抱きついたままボロボロと涙を零す。エグエグと嗚咽を漏らしながら刹那に胸の内を明かす。一方の刹那は、木乃香をここまで泣かしたのが自分だということに関して、尋常でない罪悪感に苛まれていた。

 

 

「……ほ、本当に申し訳ございません。ですが、私は今ここにいます。もう勝手にどこかへ行ったりしません。安心してください、お嬢さま」

「このちゃん!」

「え?」

「このちゃんって呼んで!」

 

 刹那は木乃香の涙を止めるために次々と言葉を紡ぐも、この期に及んで他人行儀な話し方をする刹那が酷く気に入らなかった木乃香は『このちゃん』呼びを強制する。木乃香の強い口調でのお願いを受けた刹那はしかし、何を思ったか「ごめんなさい、お嬢さま」と謝りながらも拒絶した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……ねぇ、せっちゃん?」

「? 何でしょうか、お嬢さま?」

「せっちゃんは、嬉しくないん?」

「嬉しくない、とは?」

「だって、せっちゃん。全然喜んでない。泣いてない。だから嬉しくないんかなって。ウチは、せっちゃんに会えてこんなに嬉しいのに……」

 

 刹那を二度と手放さないと言わんばかりに刹那に抱きつきただただ涙を流していた木乃香が少々落ち着きを取り戻した頃、木乃香は蚊の鳴くような声で刹那に問いかける。私はせっちゃんに嫌われてしまったのか。せっちゃんはもう私のことなんてどうでもよくなってしまったのか。木乃香の不安に揺れる瞳がそのように語っていることに即座に気づいた刹那は慌てて否定した。

 

 

「それは違います! 私も嬉しいですよ、お嬢さま。凄く嬉しいです。……でも」

「でも?」

「こうしてお嬢さまと会えたことに、現実味が持てないんです。私のお嬢さまに会いたいって気持ちが夢になってるんじゃないかって疑念が拭えないんです」

 

 刹那は己の内に秘める正直な気持ちを吐露する。木乃香へとずっと隠しておくつもりだった弱音を吐く。そう、刹那は未だに現状が夢か現実かの判断ができていない。散々雨に打たれても、ヘルマンと激戦(笑)を繰り広げてもなお、刹那の心には疑念が渦巻いている。

 

 ゆえに。刹那は木乃香を『このちゃん』と呼べない。心をそこまで許してしまえば、木乃香に抱きつかれている今が夢だとわかった時に立ち直れる自信がないからだ。

 

 

「だからここで喜んでも、ぬか喜びになるんじゃないかって思って、怖くて、それで、えと……」

 

 徐々に尻すぼみになる声。今が現実だと信じたい。だけど信じるのが怖い。そのような揺れる心境をポツリポツリと漏らす刹那を、木乃香は今以上に強く抱きしめた。

 

「お嬢、さま?」

「大丈夫。夢やないよ、せっちゃん。せっちゃんはここにいる。この温もりは、本物や」

 

 刹那の真意を知った木乃香は二コッと笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。ついさっきまでの泣きじゃくる木乃香から一転し、聖母のごとき笑みを浮かべて刹那の頭を優しく撫でる木乃香。刹那は、木乃香の一言が己の心に深く沁み渡っていくのを確かに感じた。

 

 

「……そう。そうやね、このちゃん」

 

 刹那は木乃香の言葉に心の底から同意する。心に深く根づいていたはずの疑念はあっという間に全て浄化されていて。いくら体温による温もりがあろうと今が夢でない保障などないのに、不思議と木乃香の言葉に全てを委ねていいような気がして。

 

 自然と刹那の口調は、異世界を救った勇者のものでも、神鳴流剣士のものでも、近衛木乃香の護衛のものでもない、ただの一人の中学3年生の女の子のものへと切り替わっていた。

 

 

「ただいま、このちゃん」

「おかえり、せっちゃん」

 

 刹那と木乃香はお互いの存在を確かめ合うように抱きしめ合う。これまで会えなかった長い時間の埋め合わせをするように、互いの額を合わせて、スゥと目を瞑る。百合百合しい雰囲気に顔を真っ赤に染める観客――ネギ、小太郎、明日菜、のどか、古菲、和美――のことなどお構いなしだ。

 

 刹那は木乃香の体温を感じつつふと笑みを零す。修学旅行の時に自身の翼のことを木乃香に明かした際も、木乃香はこうして自分を受け入れてくれた。人と妖怪とのハーフ、そのような出自に関わる刹那の全ての悩みを一時的にだがいとも簡単に吹き飛ばしてくれた。

 

 

(やっぱり、このちゃんには敵わないなぁ)

 

 心の奥底で、刹那はしみじみと呟く。かくして。刹那は先ほどネギたちの窮地を華麗に救った勇者とは思えない、ありのままの姿で木乃香との再会を終えるのだった。

 

 

 

 その後。刹那は麻帆良祭や魔法世界にて、己が体に宿したチート染みた力を最大限使用して暴れまくることになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 ――Fin.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 

 

「わーい、僕空気ですねぇ。少しは僕も活躍したのに……」

「……どこのどなたか知りませんが、元気出すですよ」

 

 刹那と木乃香との感動の再会場所から少し離れた地点にて。ズーンとの重苦しい効果音を纏いつつ延々と地面に『の』の字を書き続けるナイトに憐れみを多分に含んだ視線を投げかけるとともに、ポンポンとナイトの背中を優しく叩く夕映の姿があったとか。

 

 




 はい。ということで、これにてエピローグ話もおしまいです。
 以下からは長々とこの作品の裏話をしますので、興味のない方はブラウザバック推奨です。


 ◇◇◇


 さて。今回私が書き上げた勇者刹那30。事の発端はせっちゃんをヘルマン戦で活躍させたいという願望でした。だって原作だとまるで役立たずだったじゃないですか。

 で、活躍させるにしてもただ愚直にネギま!のIFモノを短編で執筆するのはどうかと思いまして、どうせなら『ぼくがかんがえたさいきょうのせっちゃん』を放り込んでやろうとの方針に落ち着いたわけですよ。

 それで考えたのが、修学旅行編とヘルマン編までの間にせっちゃんに超強化してもらうというもの。その手段として私の大好きなゲームの1つ:勇者30の世界で成長してもらおうという流れで、勇者30×ネギま!という異色のクロスオーバー作品が生まれたということです。

 ゆえに。連載当初、私が思い描いていた展開は『せっちゃんが勇者30の世界で何やかんや強くなってヘルマン戦で私TUEEEをやる』ってだけでした。よくこんな白紙状態で物語を破綻させることなく完結まで漕ぎつけたものですね、我ながらビックリです。

 あと連載当初から考えていたものとしては、『せっちゃんが木乃香のそっくりさんと女神さまの死を通して覚醒する』というもの。特に木乃香のそっくりさんをせっちゃんが殺すという展開については、木乃香お嬢さま第一なせっちゃんがこれやらかしたら斬新じゃね? とか考えた上でのものでした。なんて外道なんでしょうね、私。

 つまり。その他の展開については全部アドリブ。ふと私が取り込んでいきたいと思った展開を矛盾とかあんまり気にせずに放り込んでいったということです。そのせいで上手く回収しきれなかった設定とかあると思いますけど、その辺は気にしないでくれると幸いです。

 さて。そんなこんなで今回をもって完結となった勇者刹那30。本当なら連載2,3か月程度でとっとと完結させるつもりが約1年10か月もかかってしまいました。どうしてこうなった!? いや、ホントマジでどうしてこうなったんですかねぇ!?

 とまぁそれはさて置き。とりあえず、この作品を見てくれた人が勇者30というゲームに興味を持つ。またはせっちゃん主人公モノの二次創作を書きたい衝動に駆られる。そんな影響を与えられたら私としては本望です。


 はてさて。約900字も語っちゃったことですし、長話はこの辺にしておきましょう。
 私は今、リアル生活が加速度的に忙しいので執筆活動を継続できるかは非常に微妙な所ですが、それでは! 機会があったらまた別の作品でお会いしましょう! さらばッ!

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