【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。そろそろせっちゃんと放置したままだった魔王とを戦わせたいですが、それは次回に持ち越しですね。ええ。



Beginning(9)

 

「――でさ。せっちゃんは、これから行っちゃうんだよね? えーと、魔王カマセイヌだったかな? その討伐に」

「はい。世界を滅ぼされるわけにはいきませんから。ところでどうしてコノハちゃんは私がその気だとわかったのですか?」

「……アハハ。何となく、かな」

 

 刹那はコノハがおずおずと切り出した話題に首を縦に振る。そのまま返す言葉でコノハに疑問点を尋ねた所、コノハは少し辛そうに笑ってごまかした。その笑顔の痛々しさに刹那は思わず言葉を失った。同時に、この件に関して安易にコノハに尋ねてしまったことを痛烈に後悔した。

 

「あ、そうだ! ちょっとここで待ってて、せっちゃん」

「えッ? コノハちゃん?」

 

 今後一切今のことについて触れないと刹那が心の中で誓いを立てる中、何かを思い出したらしいコノハは刹那を置いて一人その場を去る。いきなり置いてきぼりにされた刹那が頭にクエスチョンマークを浮かべているとコノハはすぐに戻ってきて、そして刹那の右手を掴んで自分の方へと引き寄せると「はい」と刹那の手に指輪を乗せる。その指輪はプラチナでできていて中心にはひときわ目立つ金色の宝石がつけられている。とてもその辺の店で買えるような類いのものではなかった。

 

「? この指輪は?」

光麓(こうろく)の指輪って言うの。効果はわからないんだけどね、私の家に代々伝わる大事な指輪なんだ。家宝って言うのかな? こういうの」

「ッ!? そんな貴重なもの――」

「うん。もちろんあげないよ? ただ貸すだけ」

「へ?」

「だから、絶対帰ってきてね? 魔王カマセイヌなんてふざけた奴に負けないでね? 約束だよ、せっちゃん」

「……はい。わかりました。絶対に帰ってきます。すぐに終わらせますので待っていてください、コノハちゃん」

 

 コノハは指輪を乗せた刹那の右手を両手で優しく包みこみ刹那の目を見つめる。コノハの言葉から、心配そうな眼差しから、コノハの真意をくみ取った刹那はコノハをしっかりと見据えて優しく笑いかける。元々死ぬ気ではなかったが、刹那の心の中では未だにこれは夢なんじゃないかとの疑念が渦巻いていた。

 

(でも、もうそんなの関係ない。夢だろうと現実だろうと、私は勝ってみせる!)

「うん! そしたらさ、一緒に遊びに行こう! 今の季節は西の海が凄く綺麗なんだ! 行けばせっちゃんもきっと気に入るよ!」

 

 「楽しみだなぁ」と笑うコノハ。近い未来のことを考えて破顔するコノハに刹那も「そうですね。私も楽しみです」と笑みを浮かべた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「んー、いい子だったねぇ。コノハちゃん」

「はい。いい子でしたね、コノハちゃん」

 

 コノハと別れた刹那はテクテクと魔王城へ向けて歩く。といっても現在地はまだ村の中なので脳内タイムウォッチは静止したままだ。刹那はヒラヒラと宙を舞う女神と言葉を交わしながら、コノハが貸してくれたチェーンを使って首に光麓の指輪をつける。

 

 首に少しだけ感じる重みに思わず刹那は笑みを零す。その重さにコノハの気持ちがこもっているような気がして心地いい。その重さが今から魔王と相対する恐怖を打ち消してくれる。たかが指輪一つ。それなのに何て心強いんだろう。

 

「さて。これからどうするの? 折角だしもう少しレベル上げする? そしたら魔王といえど割と楽に倒せるようになるわよ?」

「いえ、今のレベルで魔王に挑もうと思います」

「え、わざわざいばらの道を行っちゃうの? ……その心は?」

「勝利が確定した戦いなんて経験しても将来の慢心に繋がるだけです。今の時点でも魔王カマセイヌと十分戦えるでしょうし、私としては互角の力を持つ相手と戦って勝つ経験がしたいんです。今よりもずっと強くなって大切な人を守れるようになるために」

「でもそれで負けて死んじゃったら元も子もないんじゃない?」

「そのための女神さまでしょう? いざとなったらよろしくお願いしますね、女神さま」

 

 刹那は女神にニコリと笑いかける。刹那がこれから戦う魔王相手に経験を積もうなどと考えているのは偏に女神の存在が大きい。時を操れる女神の存在という保険がなければ刹那だって敢えていばらの道を歩もうとしなかっただろう。確実に勝てる方法があれば迷わずそれを選択していたことだろう。何せ刹那はこれから30秒で魔王を倒さなければいけないのだから。

 

「んー。ちょーっと勘違いしてないかなぁ、刹那ちゃん? 私は女神さまだけど、無償の愛を注ぐ気なんてないわよ? 私に望み通りの働きをしてほしいならそれなりの対価を払ってもらわないと話にならないわよ?」

「わかってますよ、女神さま。あくまでもしもの話です。それにお金ならたっぷり払いますよ? おそらく分割払いになるでしょうが」

「その話乗ったッ! ……って、刹那ちゃん刹那ちゃん。ひょっとしてだけど私の扱いわかってきちゃってるの? もう私の手綱握ってる感じなの? こいつチョロいなとか思ってる感じなの?」

「そんなことありませんよ、女神さま……フフッ」

「あー! 刹那ちゃん今笑った! 絶対笑ったぁ! ムキャー! ちっぱいのくせに生意気な!」

「い、今それは関係ないでしょうッ!?」

「関係ありますぅー! 胸の大きさは心の大きさに直結するんですぅー!」

「デタラメ言わないでください、女神さまッ!」

 

 刹那と女神は傍から見ればくだらないやり取りをハイテンションで繰り広げる。とてもこれから魔王と戦う者とその協力者との会話とは思えない。と、刹那はピタリと歩みを止める。アレイヤの村と外との境界線にたどり着いたからだ。ここから先は文字通り時間との勝負となる。刹那は一度深く息を吸って吐き出す。右手のデッキブラシをギュッと握りなおす。

 

「……よし。行きましょうか」

 

 自分が生き残るため。自分の大切な人を守るため。刹那は村の外へと一歩踏み出した。瞬間、『30’00』のまま止まっていた脳内タイムウォッチが再びカウントダウンを開始したのだった。

 




 時の女神さまの動かし方が何となくわかってきたせっちゃん。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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