ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
「そういやさ」
ガラガラと騒音を立て平原を踏み荒らし、土煙を巻き上げながら疾走していく馬車。非常に乗り心地の悪い荷台で大人しく揺られていたがいい加減暇だし、乗り物酔いも回ってきた。そんな気分を何とか紛らわせようとキノアと話でもしようと口を開く。
先程までキノア1人劇場を見られたせいでまるで胡散臭い心霊番組にでも映る幽霊のようなオーラを漂わせながら体操座りをしていたがようやく顔を上げた。
・・・・・ゆんゆんへのプレゼント云々の話・・・聞けそうにないな・・・涙の痕で顔面パンダ模様になっとるやないかい・・・まぁいいや、話を切り出すか。
「キノアってさ、何でギルドに入ったんだ?こう言っちゃ悪いがギルドの仕事なんて良いものじゃないし・・・何より何でそんな歳で・・・」
「・・・・・」
俺の問い掛けに暗い顔をして彼女は俯いてしまった。
先程の羞恥からくる落ち込みではなく後悔や恐怖、そんな決して明るい感情ではない部分からくる姿だ。
・・・不味いか・・・・・地雷を踏んだかもな・・・
「悪い・・・今のは聞かなかった事に・・・」
「・・・いえ、話しますよ。先輩」
「・・・良いのか?」
「えぇ」
気づけば端的で何時もよりも真剣味のある声色になっていたが今はそんな事を気にしている場合ではない。
人には誰にも踏みいられたくない領域がある・・・そこに足を踏み入れるのだ。他の事に意識を向けようものならばそれは相手のことを軽視していることに他ならない。
俺が決心を固めていると彼女は被っていたローブについているフードを取った。ボブカットの銀髪が風に揺られ彼女は横髪を耳の後ろへ掛けた。
だが、その耳は人間のように楕円形ではない。上部が後ろへと伸び、先端は尖っている。こんな耳を持つのはエルフと呼ばれる種族のみ・・・だが・・・
「まだ・・・純血のエルフが・・・残ってたのか・・・」
エルフの耳は様々な過程・・・人間との交配などを経て退化してしまったはずだ。人間と見分けのつかない彼らはつけ耳等をして主張をするが・・・見たところ、あの耳は本物だ。つまり、何の混じり気もない純血のエルフ・・・初めて見たな・・・・・たが・・・何故?
今時純血のエルフなんてそうそういない。高い魔力に魔法を操る能力・・・紅魔族と並ぶスペックが売り・・・紅魔族は頭の良い馬鹿ばっかだがエルフはマトモな連中の集まりだったはず・・・そんな種族が他の種族とわざわざ一戦交える訳もない・・・ということは・・・
「
「えぇ・・・ギークと名乗る狼の
「ギー・・・ク・・・?」
あいつが・・・
よりにもよってあんな無法者の集団に・・・何があった?それにセラス・・・何で止めなかった・・・・・?あいつならギークを無理矢理にでも側に置いておこうとするはず・・・・・
胸の中をドス黒い感情が蹂躙していく。
1つはかつてのパーティーメンバーが墜ちた事に対する憤りと絶望、そしてキノアの事情に軽率に踏み込んでしまったことの自分への怒りと限りない無力感だった。
「辛いかもしれないが・・・そのギークって奴について詳しく教えてくらないか?無理にとは言わない」
「・・・奴は・・・」
「旦那!ありゃ何ですかい!?」
キノアがゆっくりと口を開き言葉を紡ごうとする。
俺もその言葉を固唾を飲んで待っていたが、業者の切羽詰まっている焦りの声が会話を遮った。
『千里眼』・・・ありゃあ・・・マジか・・・・・
俺の目に映ったもの・・・悠々と天へと立ち込め、空を覆わんばかりの黒煙に燃え盛る民家。
だが、そんな物はどうでもよく思えてくる人影が1つだけ映った。所々焼けただれた皮膚や衣服。それが腐敗からなのか、火事の煤からなのか、それさえも分からない黒ずんだ体。焦点の合っていない虚ろで光を一切映さない濁った瞳・・・・・あれは・・・アンデットだよ・・・な・・・それに・・・あの服・・・つまり・・・・・
「クソがっ!!────キノアァ!!」
「はっ、はいっ!!」
感情の歯止めが効かず無意識のうちに放ってしまった怒声に業者や彼女が怯えてしまっているのにも気付かず俺は紅姫を取り出しながら告げる。
「今すぐ馬車を引き返してアクセルに帰れ!!ギルドに報告しろ!!」
「分かりました!・・・・・先輩!何をする気ですか!」
「俺はアンデット共をどうにかする!報告を早く!!イムルの村はほぼ壊滅してる!!」
こんな事をするとしたら・・・そうか・・・・・最近目撃されたっていう・・・魔王軍の幹部・・・だが・・・何故だ?何故あの村を襲った・・・?
いや、そんな事は後回しだ。ああなった以上・・・・・助からない・・・せめて一撃で・・・一瞬で終わらせよう。
俺が荷台から飛び降りて村へと走り出すのと同時に馬の勇ましい嘶き声と車輪の立てるガタガタという音が聞こえてきた。・・・まさかな・・・あんな街に幹部がわざわざ来るはずがない・・・
こちらはアンデットで事足りる。幹部本人は冒険者の集まるアクセルへと向かった可能性が否定しきれない。
あの街で幹部に対抗出来るのは・・・あの痛い魔剣野郎と店主・・・あいつは無理か・・・・・いや、今のは目の前の事に集中しよう。流石に神聖魔法なしでアンデットの軍団とやるのは骨が折れる。
走っていた足を止め、村の正面へと仁王立ちする。
千里眼で見たよりも鮮明に痛々しく映る村の惨状。立ち込めるのは焦げ臭い様々な物が燃える臭いと腐臭のみ。往時のように活気のあった華やかな村の面影は何処にもなかった。胸の底から込み上げてくる怒りを何とか抑えつつも血が滲むほどに拳を握りしめ歯ぎしりをする。
「一瞬で・・・・・終わらせてやる」
救いを求めてか、同種を増やそうとしているのか。
魂胆は一切見えないがアンデットの1体が覚束無い足取りでこちらへ走ってきた。
何処か見覚えのある顔だ・・・
「・・・すまない」
腐食したドロドロの血液が飛び散った。
頭部の制御を失った体はグシャッと音を立てながら地面へと倒れ伏せ、数メートル後方に転がっていった頭部は少しの間、濁った目でこちらを睨み付けていたがやがてその目も閉じられた。
恨むなら恨め・・・幾らでも恨むといい。俺は拒まない。これが救済だと綺麗事を吐くつもりも、許してくれなどと許しを乞うつもりもない。全て・・・怨念だろうと何だろうと受け止める。それが俺の贖罪だ・・・だから
「・・・2度、死んでくれ」
そういってまた1つ、2つと首を飛ばしていく。
その度に辺りは血の海となり俺が歩いている痕はまさに血のレッドカーペットといえる様な有り様になっていく。
「こいつは・・・」
目の前の光景に思わず声を溢してしまう。
これまでは数歩に1体のペースだったのだが目の前には恐らく・・・・・全ての村人・・・それにこの数・・・おかしい、こんなに住人は多くない・・・・・
目の前に広がる人ならざる者の集団、その異様な光景に目を奪われる。・・・が、突如足にとてつもない痛みと圧迫感が走る。何よりも人の皮膚のはずなのだが・・・何だ?酷く冷たいしザラザラとしている・・・
「クソッ!!」
力はとんでもないな・・・捕まったら速効でへし折られる。てか・・・地中から手ってことは・・・墓場の死体まで蘇ってるって事か!
「ヴァルプルギスの夜って所か?・・・上等、全員冥界に送ってやる!」
数は・・・100少しか。あのキャベツ狩りに比べりゃイージー過ぎるもんだ。・・・・・?
「あの影・・・ハァ・・・・・こんな偏狭の村に・・・ンな大物送り込むかっての・・・ラーヴァナ・・・久々の強敵だ・・・」
俺が空だと思っていた暗黒の空間。だが、そこから発せられる闘気と殺気・・・肌がビリッビリする・・・魔王さんよぉ・・・人選間違ってんぜまったく・・・
闇がゆっくりとその全体を現す。骨格はどこか俺たち人間を嘲笑うかのように人間に近い・・・が、10の頭に20の腕、こちらを一斉に睨み付ける銅色に血走った眼球、歯ぎしりしている口から覗く鋭利な月の色をした牙。そして何よりも山のような巨体・・・その全てが恐怖を植え付け絶望を生み出す。
あれ放置してたら・・・いや出来ないか。だが、魔王軍の奴ならアクセルに行くかも・・・やれやれ、やるしかないか。決心を固め、刀を目の前へと構え叫ぶ。
「卍解!!───
最近スランプ気味・・・・・嫌だなぁ・・・
追記
活動報告にアンケート書きました。よければご協力お願いします!