ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
「さぁさぁクソアンデッド!とっとと始めようぜ!んでもって昼飯用意しやが・・・・・れぇっ!!」
周りからは文字通り死人が蘇ったような物だ。唖然と呆けながらその光景を見つめていた。
だがそんな冒険者たちを他所にベルディアと朔の剣戟が始まった。互いに鬼の様な形相で周囲を寄せ付けない空気に周囲は完璧に置いて行かれていた。
火花が散り金属音が耳を裂く。右に動き刀を振り下ろし左へ避けては真一文字に大剣を薙ぐ。目まぐるしく変わっていく戦況に付いて行けているのは戦っている2人のみ。
唯一彼らの希望であるカツr・・・ミツルギキョウヤは某カスマにアイデンティティの魔剣を売り飛ばされ、そこらかしこを奔走している。
もう1人、働けば働くほどお金がドブヘ消え自分で自分の首を絞めるリッチーは基本、魔王軍が攻めてこようともとある理由で参戦は出来ない。
だが見物に耽っていた冒険者たちも我を取り返したかのようにいきなり「聖水をもってこい!」「ほら聖水あくしろよ!」「パパパッとイッて、終わりっ!」・・・大半が関係のない語録だったのは置いておこう。
珍しく荒くれ者共が団結して1つの目標に向かっているのを見て若干胸打たれるものを感じながらカズマは何とか弱点を見出そうとベルディアを観察していた。だが目で追うのがやっとであり観察する暇もなく、助太刀を挟む隙もない。何も出来ない自分に歯軋りし、悔しさを噛みしめる。そして隅っこで飽きを感じ始め、地面に絵を描いているアクアを引っ叩き爆裂魔法を撃ちたがりソワソワして止まないめぐみんからは杖を取り上げる。
(はぁ・・・どうしてこうも俺のパーティーは世話のかかる奴ばっか・・・そういやダクネスは・・・)
横目で案外大人しくしているダクネスを横目で見ると頬を染め、荒い息を吐いている・・・詰まる所あの剣戟を浴びに行って斬られたいとでも思っているのだ。
そんな彼女を見て飽きれながらも忠告をする。
「ダクネス・・・分かってるとは思うが、行くなよ?幾らお前が硬くてもあん中に入っていったら間違いなく斬られるから、な?」
「わ、わかってりゅ・・・じゃ、じゃけどよくびょうをおしゃえれりゅじひんは・・・にゃ、にゃいぞ・・・っ!」
「呂律が回ってねぇ時点で信用できるか!!欲望全然抑えられてねぇだろ!思いっきりフリーダムだろ!!」
こいつはもう駄目かもしれない・・・そんなことを思いながら正面に向き直ると平行線だった戦況にも変化が見られた。やはり細身の刀と大剣、人間とアンデッドでは地力の差が出てしまう。
ベルディアの奮起の声と共に放った渾身の一撃。その一撃で刀を弾かれ大きく上に仰け反ってしまう。
「殺った!」
「しまっ―――――――――――」
一閃、朔の体を軌跡が駆け抜けた。全員が言葉を失いまるで時間が止まったかのように固まる。
胴体を切り裂かれ、糸が切れたマリオネットの様にグラリとバランスを失い地面に倒れ伏す。
顔から血の気が引いていく。あまりにも無残に、一瞬で命の灯を掻き消され肉塊と化してしまった1人の男。その光景に心から戦慄し、恐怖する。絶望が膨れ上がり叫びとなって込み上げてくる。
ある者は金切り声上げ、またある者は恐怖に駆られ逃げ出す。雪崩のように逃げて行った冒険者達。
そんな彼らを一瞥し、残った一部の冒険者へと向き直るベルディア。赤い瞳は平時よりも煌々と怪しく、禍々しく煌き、肉体は死んでいるとは思えないほどに滾っている。
そんなベルディアの全力の姿を見てゴクリと生唾を飲み込む。息が詰まり吐く息は震えが止まらない。
足が竦み膝は笑いが止まらない。震える手に握られた短剣を握りなおす。
普段はチャラケているアクアでさえも杖を構え他のめぐみんやダクネスも詠唱を始め当たらない剣を構える。
だが、そんな折1人の女性が掛けてきた。紫のローブを着、腰辺りまで届くような長い茶髪を携え豊満な胸を揺らしながら働けば働くほど貧乏になる不思議な得技の持ち主、ウィズが日光に晒されながらも青白く不幸そうな顔で現れた。
「べ、ベルディアさ~ん!」
「む・・・ウィズか。調度良い」
カズマ達には目もくれず彼らを追い越したウィズだったが彼女の背中を見て一同は何かを察する。
だがそんな彼らを無視してウィズ(?)はベルディアの元へとワザとらしく体のラインを強調する様に駆けていく。
「私、決めたんです!私・・・魔王軍に戻って・・・いや!ベルディアさんに・・・貴方に連いて行くって!」
「そっ!そうか!いや~照れるな~!」
腕に胸を押し付けながら話すウィズに分かりやすく鼻の下を伸ばしデレデレしながら応答するベルディア。
カズマにめぐみん、ダクネスは「三文芝居を・・・」と静かに呟いたのだが1人は憤慨を露にしながら叫びを上げる。そう、駄女神である。
「ちょっとこのクソアンデッド!あんた、裏切るなんて良い度胸してんじゃない!そこ動かないでよ!今すぐ浄化してあげるから!なるべく苦しむようにゆっくりとね!!」
「お前、一応はヒロインだろ・・・」
ただの小悪党になってしまっているアクアを必死に抑えるもカズマの説得は効果を為さずに終わってしまい彼女が『セイクリッド・ターンアンデッド』を放つ。2人の足元に魔法陣が現れそこから白く淡い光が漏れ出す。
「ま、マズイッ!」
「安心してくださいベルディアさん!『テレポー・・・
なんてすると思ったかい?」
「へ―――――――?―――――――グ、アアアアアアァァァァァッ!!」
ウィズが口角を引き上げ不敵に笑った。その顔にベルディアがその変わりように間抜けな声を漏らす。
だが次の瞬間背中に髪の毛で覆い隠しておいた紅姫を取り出し彼の目下から思い切り斬りあげ右腕を切断した。
ドロリと腐った若干黒色が混じっている血が肩から噴き出す。更にアクアの神聖魔法を浴びたせいで体の至る所から煙を噴き出して、満身創痍となってしまった。
肩を抑え膝を突ベルディア。震える声を漏らしながら彼女(?)を見上げた。
「ウィ、ウィズ・・・本人かは知らぬが・・・後生だ・・・」
「何だ?1つくらいなら聞いてやるよ」
「パンツ見せてくれ・・・」
「良いぜ、ほら」ピラ
ポンポンと進んでいく会話。ベルディアの必死だが下らないお願いを彼女は聞き入れカズマ達に背中を向けながらスカートの裾を少し摘み上げた。
その姿を見たベルディアは兜から勢いよく鼻血を噴き出しながら何だか花が散っているようなバックを連想させる倒れ方をしてしまった。
(何色だったんだ・・・!?)
酷く冷たい目で彼を見つめられるカズマ達だったがカズマだけは少しだけ場違いな事を思い浮かべている。
未だに悶えているベルディアにペッ!と唾を吐き捨ててからウィズは自身の輪郭をゆらゆらと歪め始める。その不思議な光景に何か幻覚でもと思ったが次の瞬間には揺れが収まり、本人が出てくる。
彼はカズマ達の元へとゆっくり歩きながら軽いノリで刀を肩に掛け、片手をヒラヒラとさせながら口を開く。
「よっ!ただいま、久し振りィ!」
「「「「サク(さん)!?───イヤソウゾウハツイテタケドモ・・・」」」」
その姿を見て、駆け出す人影が1つ。
黒色のマントを棚引かせ、その息を切らしながら。一心不乱に走り大きく跳ねる心臓の鼓動を感じながら。
そして、彼に到着すると同時に腰に手を回し彼の胸に顔を埋めた。
涙と嗚咽を漏らしながら泣きじゃくった。
「うっ・・・うぅっ・・・良かった・・・・・しゃくしゃぁん・・・うわあぁぁん・・・!」
「ったく・・・・・デートの約束してんのに、死ぬ訳ないだろ?」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「あぁもう・・・泣くな泣くな」
ギューギュー押し付けられる柔らかい胸か涙や鼻水でグシャグシャになっている服か、どちらを憂れうべきかと苦笑いをしながら考え彼女の背中と頭を撫でている。
そしてこのままでは埒が明かないとカズマに大きな声で呼び掛ける。
「おぉーいカズマー!あいつは水が弱点だ!後は何とかしてくれ!」
「何弱点サラッとバラしてくれてんだ!!」
「えぇー・・・いや、水が弱点?なら・・・おいアクア。お前、元なんたらなんだろ?なんちゃって女神でも水の1つや2つ出せるんだろ?」
「元ってなによ元って!ちゃんと現在進行形で女神よこの私は!そろそろ罰の1つでも当たるわよ!?謝って!なんちゃって女神って言ったの謝って!」
「はいはい駄女神駄女神」
ゆんゆんをあやしながら何処かへと去っていく朔、弱点を暴露されて憤慨するベルディアと怒りのアクアが何やらひっくと嗚咽を漏らしてから珍しく神聖な雰囲気を漂わせながら何やらブツブツも詠唱を始める。とてもカオスな状況である。
「ふぅ、この世にある我が眷属よ・・・水の女神、アクアが命ず」
空気が震え始め何やらただならぬ雰囲気が漂い始める。
危険を感知した朔が卍解でダクネスとめぐみん、ゆんゆんを抱えながら城門の上へと避難した。
「我が求め、我が願いに答え、その力を世界に示せ・・・・・!『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!!」
杖を頭上で回転させ、魔法を発動させる。ただならぬ空気が突如破られ、ベルディアの頭上からとてつもない勢いの水流が降ってくる。
辺りを蹂躙するかのように水流が全てを呑み込んで行く。カズマとベルディアが水流に遊ばれている中、朔達は城門から高見の見物、アクアはあの水流の中でも悠々と泳いでいた。
城門が轟音を立て崩れていくのにヒヤヒヤしながらもようやく収まった災害の後には今にも死にそうなベルディアと危うく溺死寸前のカズマが仲良く倒れている。しかし、先にカズマが意識を取り戻し、アクアに魔法を撃つように叫んだ。
そして本日何度目かの神聖魔法が放たれ、哀れなデュラハンは天へ還っていった────
~*~
2週間程療養という名目で休暇を貰えた朔はギルドの食堂でグラスを傾け、ゆんゆんと食事を取っていた。
他愛もない世間話を交えながらグラスを傾ける。こんな日常に安堵していた────が、唐突にギルドの扉が開けられた。
「て、店主・・・?ど、どどどどうした・・・怖い顔して・・・」
「どうしたもこうしたもありません・・・モノノベさん、私に化けてトンでもない事をしてくれましたね・・・!!」
往時の、冒険者時代の迫力を取り戻しているウィズが朔の元へとスタスタ歩みより胸ぐらを掴み上げる。
「歯、食いしばってくださいね?」
「痛くないようにお願いします・・・・・」
アタフタしているゆんゆんを他所にウィズにしばかれ朔の悲鳴もとい断末魔が響き渡った────
ようやくデートさせれる、やったぜ。
デート回の次はエロ注意かも・・・?