ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
2ー01 この厳しい季節に救いを!
冬。
それは、1年の中でも最も厳しい季節である。
冷え込みや積雪による地形の変化、雪崩、吹雪による視界不良に遭難事故など、様々な危険が生まれる季節。
もちろん、大概のモンスターは冬眠に入り冬を越す。しかし、そんな中でもこの世界の逞しいモンスター共の一部はそんな劣悪な環境など御構い無しに活動している。
その為、この時期には依頼の量は減る。残るのはそんな逞しいモンスターの討伐依頼、つまりはハイリスクハイリターンな依頼のみとなり、一般的に言われる『美味しいクエスト』はめっきりその姿を見せなくなってしまう。
だが、現在の冒険者ギルドでは大量の冒険者達が朝っぱらから呑んだくれている。
原因は恐らくベルディア襲撃のせいだろう。
参加したアクセルのほぼ全ての冒険者には報酬が支払われ、無理に節制したりクエストに行ったりしなくても良いくらいには今のあそこの酔いどれ達の懐は潤っているんだろう。
てな訳で、俺は三日三晩睡眠なしのデスマを終えた直後、その酔いどれ達への料理や酒の配給にてんやわんやと右往左往していた。
何なんだこの仕打ち・・・いや、無断欠勤してたのにまたこうやって働かせてもらってるからむしろ・・・・・いややっぱブラックだわ。
例えるならヤムチャにフリーザ、セル、魔人ブウを同時に相手しろって言うくらいブラックよ?
と、まあそんな事を考えながら俺は天井を見つめていた。
ようやく貰えた仮眠時間。しっかり寝ておこうとひとまずベットで横になっていた。
まあ良いや・・・とにかく寝ようそうしよう・・・・・起こされるまで起きねえからな・・・今回はここまでだ読者達・・・おやs
「モノノベく〜ん、お客さn「エンダアアアアアアアアアアアアいやあああああああああああああいっっ!!!」キャアアアアアアッ!?・・・・・ど、どうしたの?」
「・・・・・俺の・・・俺の休憩時間を乱すぅ・・・」
「・・・へ・・・・?」
「バカヤロウはどこのどいつだああああああああああっっ!!」
許さん!!俺の仕事全部押し付けてぶっ倒れるまでこき使ってやる!!うおおおおおおおおおおおおおっっ!!
リアルでも脳内でもとんでもない叫び声を上げながら、俺はベットから飛び出した。
獣を連想させるような低い姿勢で走り出し、ドアを突き破るように開け放った。
そして開けた視界に飛び込んで来るカウンター越しのテーブル群や外の景色。なんだなんだとこちらを不思議そうな顔で見つめて来る他の職員や冒険者達。そして、何やら横から声がかけられる。
「あ、あの〜・・・先輩?その・・・お客さんが・・・あちらに・・・」
「フシュー・・・フシュー・・・」
息を荒ぶらせながらキノアの指差した方向へ顔を向ける。
そこには何やら見覚えのある小さな影がいた。
逆光で顔は見えないがあのゴツゴツした上半身に丈の長いスカートは・・・ダクネスだな。
確か
「ああ良かった!サク!話が・・・あ・・・る・・・お邪魔しました」
どうやら俺の不機嫌さに気が付いたらしい。
一瞬顔を引きつらせ苦笑いしたかと思うとドンドン言葉を尻すぼみにし、最終的にはクルリと背中を向け、走り出そうとする。
「おいおい・・・」
そうつぶやくと瞬歩を発動させる。
瞬間移動もどき・・・ただただ自分の霊圧を蹴って移動してるだけなんだがな。だが、それでも次の瞬間には10メートルは離れていたダクネスの背中に追いついていた。
そして彼女の肩を鎧越しにガッシリと掴む。
「・・・・・」グッグッ
俺は一切離すつもりも逃すつもりもない。
が、彼女は無言でどうにか俺の手を剥がそうと四苦八苦している。
「・・・・・」ミシミシ
鎧が嫌な音を立て始める。
若干鎧が凹んだ気がしないでもない。
ダクネスがようやく危険と俺の不機嫌さに気が付いたらしい。
大人しくなると彼女は恐る恐るこちらへ振り向く。
「そ、その・・・今は大丈夫なのか?見た所、かなりお疲れの様だが・・・」
「あぁ・・・まあ、良くは無いな。だけど問題はねえよ。んで?なんかあったんだろ?」
「あ、あぁ。それなんだがな・・・そうだ!こんな事してる場合じゃないんだった!カズマ達が!!」
「--------移動しながら聞こうか」
〜*〜
どうも、ダクネス曰くカズマ達が捕まったらしい。
雪精討伐の際、めぐみんが振り回していた杖が綺麗に脳天に直撃。動けなくなっていた状態で何やら得体の知れない大きな雪像の様なモンスターが現れ、3人は連れ去られたらしい。
多分その雪像ってのは冬将軍なんだろうが・・・冬将軍がその場で悪☆即☆斬しなかったのが気になるな・・・そんなに気に障る事でもしたのか?いや、今はとにかく急がないとな・・・
「皆の盾であるクルセイダーの私が・・・クソッ・・・」
「ダクネス・・・っと・・・ここか」
悔しそうな表情で顔を陰らせたダクネス。そんな彼女を少し気に掛けながらも、目の前にそびえ立つ山に目をやる。
悠々と雪を抱く白銀の山は日光に照らされキラキラと光っていた。
ここへ冬将軍はカズマ達を連れて行ったらしい。
標高は・・・・・ざっと見積もって1000mってとこか・・・?
この位の標高であれば瞬歩でとっとと登っちまえば良いか。頂上には何かしらあるだろうが登頂と同時に鉢合わせなんてのは考えたくないし、恐らく無いだろう。
「うし、行くぞダクネス。掴まっとけ」
「な、何をするのだ?ここは地道に登って行った方が・・・」
「バカめ、マトモにこんなの登ったら体力無くなるわ」
「バカッ・・・!?」
案外、ストレートな罵倒は彼女にも響くらしい。
ちょっとヘソを曲げてしまい、膝をついていた彼女の腕を強引に引っ張り上げる。
「いよい------っしょ!!」
「え?--------う、うわああああああああああっっ!!」
大体下見た感じ・・・1回で50メートルってとこか?
もうちょっと霊圧を込めればもっと伸びるんだろうが・・・冬将軍とやってる時にガス欠なんて笑えないからな。この位で良いだろ。
・・・ていうか、叫び過ぎだ。
俺が右腕で抱えているダクネスはもろにリアルタイムで遠ざかっている地面を見ているからか、それとも高い所が苦手なのか。
いちいち甲高い叫び声を上げている。
うるせえ・・・!
〜*〜
「おいおい・・・なんだこりゃ・・・!」
「ハァ・・・ハァ・・・死ぬかと思ったぞサク・・・・・な、なんだあれは・・・?」
山頂に到着した俺たちは思わずそれを凝視してしまう。
台形型の山の頂上はかなりの広さがある。別にそれだけならなんという事はない。
が、俺たちを待ち構えていたのは純白の城壁に囲まれた真っ白な天守閣だ。
雪や氷で出来ているのだろうか。城は恐ろしい程に白で囲まれていた。城壁や城門、屋根瓦や微かに見える鯱も、何から何まで白で出来ている。
いや・・・ひとまずは偵察か。それに俺は今、休憩時間の筈なんだよ。だから残されたのはせいぜい2時間と少しってところか・・・取り敢えず裏口でも探すか。
幸い、堀もなければ警備もない。侵入するには楽そうだ。
「ダクネス、取り敢えずはこの城壁に沿って裏に回るぞ・・・おい?」
「うぷ・・・あ、あぁ。分かった・・・うぷ・・・」
「頼むから、リバースだけは勘弁してくれよ?」
〜*〜
大体、4分の1・・・つまり、側面辺りまで歩を進めた。
特にこれと言った変化もなく、妙な物音もない。あ、こう言うののテンプレで行くと地下牢って奴か?めんどいな・・・
「うわあああん!!何でよ!!何で私まで巻き添いにならないといけないのよ!殺すならこのヒキニートだけにしてよ!!高貴な女神様は解放するべきでしょ!?」
このチンパンジーみたいな声は・・・まさか・・・
ダクネスと共に塀から顔をチラッと覗かせる。
そこには見覚えのある茶髪に青髪、黒髪のズッコケ三人組がいた。だが、普段の服とは違って何故か白装束を着せられている。
そして庭だと思しき縁側の先に広がる少し広めの地面。そこには同化していて分かりにくいが白州と小さな木の台に脇差しが置いてある。
「あ、あれは・・・まさかSAMURAIのHARAKIRI・・・!?」
「HARAKIRI・・・?な、何なのだそれは?」
「俺の故郷に伝わる究極の謝罪方法・・・実行者は死ぬ!」
「な、なんだと!?早く助けなけれbあぁっ!?」
マズイマズイマズイマズイマズイ!!
あいつ何してくれてんだ!
俺の言葉を聞いて焦ったのだろう。ずるっと身を乗り出したが、そのせいで彼女は顔面から敷地内に落下してしまう。
「ふざけんなよこの駄女神!!元はと言えばテメェのこさえてきた借金が原因だろ!!死ぬならお前1人で死ねぇ!!」
「うわああああん!!酷いこと言った!!カズマさん今人として色々アウトな事言った!!ねぇ聞いためぐみん!?」
「だだだだいじょうび・・・だいじょうびだいじょうび・・・!」
騒ぎ立てるカズマやアクアを他所にめぐみんがすっかり壊れた喋るおもちゃみたいになっている。
知能が高い彼女はHARAKIRIを知らずともなんとなくこの行く末を理解してしまったのか、すっかり血の気が引き、青い顔になっている。
なんとかああしてあいつらが騒いでいてくれたおかげでダクネスは気づかれていない様だ。良かった・・・!
「おいお前!突っかかってくんじゃねえ!こんの駄女神・・・!」
「謝って!私の心を深く傷つけた罪を償ってこの状況をどうにかしてよ!!」
・・・ん?
マズくない?あれ?おい止めろカズマ、駄女神。
突っかかってくるアクアの顔面を必死に押しのけるカズマ。
そのせいで駄女神の顔面はダクネスが倒れている方向へと向けられている。あいつの金髪と所々入ったオレンジ色はなんの保護色効果も持たず、今駄女神が少しでも目線を動かせばダクネスを発見するだろう。
「・・・・・!」チャキン!
「「「ひいっ!!」」」
流石に見兼ねたのか。痺れを切らした冬将軍が3人に白刃をチラつかせ、強制的に白州に座らせる。
だがこっちにはまだ気づかなさs
「あぁっ!ダクネス!ダクネスじゃない!早く!早く助けてよ!!」
「何で気付いたんだ駄女神ぃっっ!!・・・・・あ」
反射的に上げてしまった怒号。辺りに響き渡り静寂をもたらしたそれは、全員の視線をこっちに向けさせる。
だが、冬将軍だけはこちらに気を取られる事もなく、淡々とカズマの首を撥ねようと刀を振り上げる。
「クソッ!縛道の四!『這縄』!!」
瞬歩で間合いを詰め、鬼道を放つ。
光の縄は冬将軍の腕を綺麗に縛り上げる。が、力が強すぎるせいで早くも効力が薄れ始めている。
「伏せとけよお前ら!君臨者よ!血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ!焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ!!破道の三十一!『赤火砲』!!」
這縄を破られた直後、巨大な火の塊が冬将軍の刀を弾き飛ばす。
三十一番だがまあ・・・完全詠唱でこれなら上出来だ。
「・・・!何なのですか!今のカッコいい口上は!サク!!ちょっと詳しく・・・」パァァァァ!
「おいバカめぐみん!あんまり近づくんじゃ・・・!」
・・・最悪だ。詠唱バッチリ全部聞かれた。恥ずか死にしそう。やだもう。
目を輝かせためぐみんをカズマが必死に制止している。
そこにダクネス、アクアも加わりめぐみんは抑えられた。
・・・あり?そう言えば刀は?
吹き飛ばした筈の刀が見当たらず辺りをキョロキョロと見渡す。冬将軍も同じ事を思ったらしいが、やはり何処にも見当たらない。
と、ここで何かが空気を裂きながら落下してくる音が聞こえてくる。
音の鳴る方へ顔を向けると、上空には刀身を下にして落下してくる刀が目に入る。カズマの頭頂部目掛けて。
するり。
音は無い。
遅れて吹き出す血。
赤く染め上げられた雪。
ドサリと体が崩れ落ち、そこから更に血が吹き出す。
脳が、現状を受け入れる事を拒み危険信号を上げる。
理性が飛びそうになる。頭が真っ白く染まり何も考えられなくなっていく。
「カズマさんが死んだ!!」
「この人でなし!!」
アクアの一言、それで俺は一気に現実へ引き戻され、声を上げていた。