ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
「逃げないと・・・とは言ったけど、そうも行かないのよね・・・」
「まぁなんとなく察せたんですけど・・・とっとと街の冒険者を招集しましょうか」
まるで俺がそう言うのを分かっていたかのようにフフッと彼女が笑い、街中のスピーカーにつながる機器がある事務室へ駆け出す。
・・・さて、俺は食堂の方で会議用にテーブルとかの移動でもさせとかなきゃな・・・それにしても、ルナさんもマトモだと思ってたけど、大概この街に染まってるよな全く・・・
移動要塞デストロイヤー。強固な岩石で形成されたボディを幾層もの強力な魔法で覆いつくし、数え切れないほどの砲門にガーディアンなどの兵器を兼ね備える。 近づくものは自動の迎撃装置で許さず、魔法も無効化される。 落とし穴など、魔法に関せずに尚且つ近づく事のない地形を利用したアナログな方法も強靭な蜘蛛の足で這い上がって通用しない。 まさに要塞。国さえ落とすのも固くない、地上最強の兵器だと言うに相応しい一種の災害だ。
それが通る後どころか、通る前に粗方の生き物は消え失せ、通った後には正真正銘に植物含めたありとあらゆる命が消え去った不毛の地が広がると言う・・・・・いずれこの辺にも来るかもなんて思ってたが、まさか新居に引っ越して次の日だとは・・・
『アクセルに居る、全冒険者に通告します!デストロイヤー接近につき、緊急クエストを発令します!至急、冒険者ギルドの食堂へ集まってください!繰り返します-------』
「っと・・・準備を急がないと・・・」
テーブルを集め、円卓を作る手を急がせる。円卓などとは言っても、来るのはロクでもない山賊みたいな奴らだが・・・まぁ今の状況なら誰でも勇者様だ。頑張ってもらわないとな・・・
〜*〜
「それでは、今より緊急会議を開催します。デストロイヤーに対する有効打を思いついたら遠慮なく発言して下さい」
「「・・・・・」」
(重いな・・・流石にデストロイヤー相手じゃこの街の奴らもお手上げか・・・・・てかあの駄女神は何やってんだ)
打つ手がないせいか、集まり始めたうちは活き活きとしていた荒くれ者達もすっかり黙り込み、非常に重い空気が辺りに張り詰めている。
そんな中でもあの青い髪をした一応女神は呑気に水絵を無言でチマチマと描いている。
ルナさんの後ろ、詰まる所隅に背を預けて全員を平等に俯瞰できる状態でいるからこそ、策を弄しては消えていくごとに彼らの気色が落ち込んでいくのがよく分かる。
当然と言えば当然。空からも地上からも考え得る手でのアプローチは不可能。無理ゲーも良いところだ。俺1人なら、どうにか侵入まではこぎつけられる。が、そうして尚且つあれを止めるもしくは操作する方法があるにしても小さな城となんら変わらないデストロイヤーの内部を走り回って見つけるなんてのは1人では決してなし得ない。だからこそ、人手がいるのだが・・・・・
「おいカズマ。機転の利くお前さんなら、何かしら思いついてるんじゃないか?」
難航する会議に飽きてきたのか。頭を抱えるカズマにダストが問いかける。悩み続けるカズマだが、ふと何かを閃いたかのように隣のアクアに顔を向ける。
「-------アクア、そう言えばお前、魔王軍幹部が2、3人で維持した結界でも破れるって言ってたよな?なら、デストロイヤーの結界も----ってなんじゃこりゃ!?スゲェ!水だけでこんなのが・・・」
カズマが感嘆の声を上げる先にはチマチマと描いていたアクアの水絵がいつのまにか、1つの芸術作品として完成されていた。美しい天使が花を手にし、妖精達と戯れる姿を描いたそれは間違いなく後世に語り継がれるべき作品だろう。
「ん〜?そう言えばそんな事も言ったわね・・・・だけどデストロイヤーよ?流石の私も破れるなんて確約できないわ」
そう言い惜しげも無くコップの水をぶちまける。
「あぁっ!もったいねぇ、何で消すんだ!」
「そりゃ、完成したから消して新しいのを-------」
「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!」
そう言いかけたアクアを遮り、ルナさんが声を荒げる。その声に辺りの冒険者から衆目に2人が晒される。焦ったようにカズマが手を振るがせっかく降ってきた希望の糸だ。結界の問題はアクアに託された。
「一応、やるだけお願いできませんか?それが叶えば魔法による攻撃が・・・!あ、でも・・・デストロイヤー相手じゃ下手な魔法じゃ効果がありませんし、駆け出しばかりのこの街じゃ・・・」
-------ピースは揃ったか。会議が始まって20分弱、あそこからここまでの距離を考えればもうそろそろ来てもおかしくない。なら、ドンドン進行してしまおう。
「-------ルナさんルナさん。火力なら事足りてますよ?ほら、赤い頭がおかしいのがいるじゃないですか」
俺が少しばかりわざとらしく大きな声を彼女にかける。その言葉でギルドは活気を少しばかり取り戻しざわつき始める。
ソ.ソウダ.....アタマガオカシイノガイタナ.....!
オカシイコガイタナ.....!
あちらこちらからそんな声が上がる中、その頭がおかしな子は恐らく勢い任せに立ち上がる。
「おい待て、それが私の事ならその略し方はやめてもらおう。さもなくば、いかに私の頭がおかしいか今ここで証明することになる」
その言葉に冒険者達が一斉に目をそらすが、やはり期待の眼差しはやまない。資産の反撃を期せずして受けた彼女はみるみる顔を赤くし、
「うぅ・・・・・・わ、我が爆発魔法でも流石に一撃では・・・・厳しいと・・・思われ・・・・・」
そう言葉をドンドン小さくしながら再びめぐみんが着席する。・・・まぁあいつの言うことは最もだし、それを自覚してる分全然良い。下手に啖呵を切って失敗しただなんて目も当てられないからな。
再びギルドが静まり返る。が、突然に入り口のドアが開かれるとそこから差し込む光とそれを遮る人影が現れる。
「・・・来たか」
「すいません、遅くなりました・・・ウィズ魔法具店の店主です。冒険者の資格はあるので何か力になれるかと・・・!」
「店主、佳境も佳境だ!-------忙しくなるぞ!」
店主の登場に湧き上がるギルド。・・・なんだか、冒険者としての店主より恐らくこいつらの士気を高めてるであろう『あの店』での店主を呼ぶ声も聞こえる気がするが、まぁ気のせいだろうん()
「ど、どうも、店主です、ウィズ魔法具店をよろしくお願いします・・・店主です、よろしくお願いします・・・・・また砂糖水生活になってしまいそうなんです・・・・」
「羨道を通ってるのに、そんな切実な事を言ってくれるなよ店主・・・」
冒険者達の歓声と拍手で出来上がった羨道をペコペコと頭を下げながらこちらへ足早にかけてくる店主。本当に元高名な冒険者で、魔王軍幹部のリッチーなのかと疑いたくなる気弱さだが・・・
「それでは店主さんも来たので改めて作戦を!-------まず、アークプリーストのアクアさんがデストロイヤーの結界を解除、そしておかし・・・めぐみんさんが結界のない本体に爆裂魔法を撃ち込む、という話になったのですが・・・」
それを聞いたウィズは口に手を当てて考え込む。さっきのヘコヘコしていた様子からは想像もできない綺麗な横顔と頼もしい立ち姿だ。
「・・・爆裂魔法で、左右の足を私とめぐみんさんで破壊するのはどうでしょう。何かしらの種がない限り、それで機動力を奪えますし、足さえどうにかすれば後はなんとでもなると思いますが・・・」
「そいつで良さそうだな--------そんなら、俺は上からその種を摘みに行くかな。もしもの事があったら他の奴らも本体に乗り込めるようにロープなりを用意しておこう」
ルナさんや周りの冒険者が俺と店主の提案にコクコクと頷く。
その後も駄目元ではあるが、罠やバリケード、ゴーレムの設置などの案が出され、前衛職の冒険者達が万が一破壊し損なった足を破壊するためデストロイヤーを取り囲むと言った作戦も追加された。
「それでは作戦開始-------です!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!!!」」
ルナさんの号令と共に野蛮人達の雄叫びが辺りにこだました-------
〜*〜
「・・・っと、来たか」
アクセルの門から2、300メートルほど離れた上空で辺りを見渡す。目を凝らす先には広大なアクセル近辺の草原が広がり、そしてそれを踏み荒す石の化け物がその頭角を見せていた。
作戦前にルナさんから渡されていた信号銃をほぼ真下に撃ち込む。赤い煙が弧を引きながら落ちて行くのを他所に信号銃をホルスターにしまい、刀を抜く。
銀にきらめく刃を軽く一振りする。フッという軽い感触。そして空気を裂く音がデストロイヤーの地鳴りに掻き消される。軽く汗ばんだ身体に別れを告げ、駆け出す。
斜めに降下しながらの肉薄で10秒もたたないうちにデストロイヤーは目と鼻の先にまで迫る。そしてもちろん、迎撃機構が発動する。中心の塔の左右が開かれると、そこから無数、多種多様の弾が発射される。
(直線的なのとやけに軌道が不規則なのがあるな・・・後者は多分追尾型か・・・・・どういう原理がわからない限りは隠紅姫も使えない・・・・結局正面突破しかねぇか)
まだ向こうも様子見程度なのか。まず当たらない無誘導の弾以外の数発を軽く刀で捌く。ベルディアやギークの剣に比べたらまだまだ遅く、余裕もある。よっぽどのトラブルが起こらない限り、このペースなら乗り込むのは余裕だろう。
迎撃のためか少し速度が落ちてる・・・これならウィズ達の迎撃地点まで後2分ってとこか・・・それなら・・・
「-------そらっ!!」
一瞬だけ思い切り霊圧を発し、エンジンに火をつける。準備万端になった体をデストロイヤーに向けて弾丸のように撃ち出す。
こんな直線的な動きだ。余裕で迎撃されるだろう。
「来たか」
予想通り弾が発射され、こちらに迫る。だが、先ほどとは違い誘導弾含め、全体の数は倍以上になっている。刀一本で捌ききるには無理がある・・・が、それも予想通りだ。
進路を斜め下にずらし、デストロイヤーの真下に潜り込む。もちろん幾つかの誘導弾は俺を確実に追尾してくる。全くもってトンでもない性能だ。だが、このくらいの数がありゃ十分だろう。
「縛道の三十七『吊星』!」
デストロイヤーの足と本体数ヶ所に霊圧を貼り付け、自分の背後に吊星を展開する。元はと言えば落下の衝撃を和らげるものだが、こいつは少しばかり弾力性に重点を置いて作った。
背後の吊星がこちらに大きく突き出て一瞬静止する。伸縮の限界を迎えた吊星が元の形に戻ろうと誘導弾を、元の数倍の速さで押し返す。 少し斜め上側に反射するよう調整した角度が上手く機能し、とてつもない爆音と煙を立ち込めながらデストロイヤーの底面に大きな穴を穿った。
「
そう叫び、俺は大きく跳んで本体へ侵入した-------