特別外出許可を得て、久しぶりにIS学園の外に出る事が出来た。右腕の傷は完治し、ISを扱う分にも問題はない。だが、少し、未だに彼女を思い出す事は、辛い。
「ようやく、来る事が出来たよ。遅くなってすまない」
共同墓地のとある一角、他のものと同じような、それでいて少し新しい墓石の前に立つ。
「……あんまりにお前といた時間が短かったからかな、偶に夢だったんじゃないか、って思う時があるんだ……家族、だったのにな」
その墓石には、”Schneeg・Bodewig・織斑”と刻まれている。
「お前の言う通り、骨は日本に埋めた。IS学園の近くで……お前は寂しがりだったから、いつでも会いに来れるように、って。それなのに、遅くなってしまったけど」
葬式はしてやれなかった。彼女に戸籍があったわけじゃない、出来なかった訳ではないけれど。
『ラウラ母さんと一夏……父さんと、皆に覚えていてくれるなら、他にはいらない。生きた証を残す訳にはいかないよ』
少し、風が吹いてきた。春が近づいてきたとはいえ、まだ3月の初めだ、厚着をしていても風が吹けば肌寒い。そんなことを考えていると、遠くから騒がしい声が聞こえてきた。
「――ほんとにこんなのでいいわけ?」
「そうだぞ一夏、もっとちゃんとした花を用意した方が」
「お、俺だって思ったよ。だけど、シャルがこれが一番だって言うからさ……」
「一夏さん、男らしくありませんわよ!」
「そうだよ、絶対にこれが一番なんだから」
まだ知りあってから一年も経っていないのに、どうしてここまで馴染み深いと感じるようになったんだろう。分からないが、それも悪くない、と思う。
「あ、ラウラ、先に来てたんだな」
「だからそう言ったじゃん、一夏!」
鈴音が怒り、半ば噛みつくように一夏を責め立てる。
「一夏さん、鈴音さん、場所を考えて下さいな!」
「セシリアも充分うるさいよ」
「全く、お前達というものは……」
一夏の手から花を奪うと、箒がそっと墓の前に供える。
「私が言うのも無粋かもしれないが、これで良かったのか」
その花は、初春に咲く、白く儚いスノードロップの花。
「サイネは、シュネーグレックヒェンからとった名前、なんだよね」
シャルがラウラの隣に移動して、墓の前にしゃがみ込む。
「シュネ……なんだって?」
「シュネーグレックヒェン、英語ではスノードロップ、日本語だと待雪草……だったな」
彼女の名前の由来とはいっても、感動的なエピソードがある訳じゃない。試験管ベイビーで生まれた彼女に名前が必要だと言われた時、その日にたまたまこの花を見たというだけだ。愛情をもって、名付けた訳でも、ない。
「それなのに、この花が好きで。母さんが付けた名前が、大好きだって、言っていたからな」
本筋はここでお終いです。ここまで付き合って下さった皆さん、本当にありがとうございました。もしかしたら、あるかもしれない、という妄想を膨らませた結果がご覧の有様です。この辺で筆をおけばいいのに、とか思いつつ蛇足がまだ残ってます、見なくても全然いい内容ですが、ある程度編集したいので投稿期間は空くかもしれません。やっぱり篠ノ乃束博士と織斑千冬の会話、サイネの最後の三日間、気が向いたらラウラ母さんとの思い出もかけたらいいな、と思ってます。それでは皆さん、次会うことがあればよろしくお願いします、お疲れさまでした。