俺の家が幻想郷   作:十六夜やと

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 政治が学べるうえに小説も読める。これが一石二鳥(`・ω・´)
 というわけで難しい話の回です。投稿遅かったのは内容読めばわかると思います。物凄く大変でしたw
 ちょっとサークルでこのような話題になったので書いてみました。選挙近かったですからね。間違いとかあったら指摘していただけると幸いです。


26話 政治が学べる

 テスト勉強目的で集まったのに、勉強しなかったら意味がない。確かに俺達のメンバーなら年がら年中遊んでいるイメージを持たれるかもしれないけど、奨学金貰っている身としては下手な点数は取れない故、割と本気で勉強しないとまずいのが現状。

 

「こいしとフラン、そろそろ俺のスマホ返してほしいんだけど。アニメ見たいんだったらテレビで見るなり、龍慧のPC使えよ」

 

 勉強していた手を止めた俺は幼女二人に声をかけた。

 特に使う理由がなくても、他人に携帯を使われるというのは少し怖いものがある。ましてや使っているのが幻想郷きってのインターネット部門のプロフェッショナルなら尚更だ。

 この前スマホを少し渡したら、壁紙が変更されていて、ゲームアプリのガチャが軒並み回されていた前例があるだけに、この幼女達は何しでかすか分からんところがある。デレステのSSRが四人くらい増えてたんだが。あと呼吸するようにマーリン引いてんじゃねぇよ。

 龍慧は17万ぶっ込んでも礼装だけだったんだぞ。

 

 あとゲームアプリが追加されてたこともあった。

 なんで俺のスマホで古戦場回ってんだよ。なんで大手ギルドに所属してんだよ。家に置いてあるタブレットにも多くのゲームアプリが入っていたことにも驚いたが。

 スマホを横にして何かを見ていた幼女達は、こちらに顔を向けずに答える。

 

「『キノの旅』ってアニメ見てるー」

「最近のバイクって喋るんだね」

「なら……いっか。あとバイクじゃなくてモトラドだ。そこ間違えんな」

 

 二人は一生懸命画面を食い入るように見ている。

 電池を無駄に使用する以外に余計なことはしていない上に、何気に『キノの旅』は俺も好きな部類のアニメなので、肩をすくめながら勉学に戻る。小説は全巻揃えてるし、実はパチェも読破を目指しているラノベでもある。あの独特な雰囲気いいよね。あとがきも。

 魔理沙は『日常』というアニメを大爆笑しながら鑑賞しているし、アリスは何故かザクのプラモデルを一生懸命組み立てている。

 

「……早苗、地理のテスト範囲ってP11から何ページまでだっけ?」

「すみません、私は世界史取ってるんです」

「そっかー」

 

 それ以降は幻想郷の自由な仲間たちの雑音だけが響き渡る。早苗は教科書とノートを交互に見ながらノートにペンを走らせ、龍慧はノートに赤い透明のシートを乗せてブツブツと呟く。

 当の俺は頬杖をつきながらノートに書き記す。物理以外の教科なら平均点を越えるのは余裕なだけに、俺が必死に勉強するのは物理のテスト範囲だ。

 

 無表情で教科書の問題を解いているが、内心は『点Pそこ動くなぁぁぁぁぁ!!』とか『重力なんざ一々考えて暮らすわけねぇだろ!?』とか考えてる。

 どちらかというと数学も好きじゃない俺であった。苦手科目の物理ほどではないけど、見たくない類の科目であるため、理数好きな兼定ってやっぱり変態だと痛感する。よくこんな問題解けるな。アイツ曰く『文系って変人の集合体だろ? 作者の気持ちとか知るかよ』らしいが。

 補足だが『下線部の作者の気持ちを書きなさい』などの問題は、どちらかと言えば出題者の望む回答が要求される。作者の気持ち? それこそ知るか。

 

「なぁ、紫苑」

「ん?」

 

 数ページほど問題を解いている内に、アニメを見終わった魔理沙が俺の名前を呼んだ。この声色はなにか知らないことを尋ねるときに耳にするトーンで、実際に魔理沙はテレビのニュースを見ながら名を口にしたようだ。

 幻想郷の住人からテレビで放映されている番組にて、知らない単語の説明を要求されることは多い。汎用性の高い言葉なら説明できるのだが、時折専門用語などを聞いてくることもあるので、幻想郷民と暮らしていると、無駄に必要のない知識が増えていく。

 さてさて、今回は何を聞いてくるのやら……

 

 

 

「『右翼』と『左翼』って何だ?」

「この時期にドえらいデリケートな話題振ってきやがったな」

 

 

 

 幻想郷民にとっては素朴な疑問の一つではあるが、現在彼女が見ているニュースは政治・経済の分野。そろそろ選挙が行われるだけに、よく耳にする単語に首を捻っていたのだろう。んじゃ紫苑に聞いてみよう的な。

 古代ローマでは市民権を持った暇人共が、己の哲学や思想を互いに言い合うことがあった。それと同じで、『これ幻想郷でも右翼左翼思想とか派閥とかあるんじゃねーの?』と考えた俺は、どうにも説明をしにくい感情に駆られる。ただでさえ平和じゃない俺ん家が大変なことになるのだけは避けたい。

 あと紫に怒られかねん。

 

 けど説明をはぐらかしたとことで、調べれば分かることでもある。乗り気ではないが、今なら知識を補完してくれる龍慧もいる。教えても問題はないだろう。

 俺は視線を彷徨わせながら、自分の知識を総動員して説明を始めた。

 

「……まず『右翼』っつーのは、日本古来の伝統と秩序をしっかりと守っていこう的な思想で、えっと……『左翼』は新しいやり方で、人権や自由や平等を大切にしようって革新的で理想的な思想だな。『右翼』を保守派、『左翼』を革新派って言うこともある」

「あ、左右の翼の意味じゃないのね」

「……ここで該当しそうな人物に心当たりがあるの、幻想郷に毒されてる証拠なんだよなぁ」

 

 天然かそうじゃないのか、アリスの言葉に我が家の新聞記者を想像してしまう。なんか『翼が生えてる奴』とか普通だったら動物などを思いつくだろうに、どうして俺の思考回路は幻想郷の住人を当てはめてしまうのか。一般人な俺を非常識に染めるとか、幻想郷って怖いわ。

 脳内で「あやや」とか言ってる鴉に苦笑する俺。

 

 さて、んな戯言は置いといて、そもそも何で右翼と左翼と言うのか。

 この語源はフランス革命に遡る。

 簡単に言うと議会で議長席から見て右側に保守的なグループ、左側に革新的なグループが座っていて、それぞれが主張を述べていたことが始まりだ。

 ジロンド派と呼ばれる保守的な思想を持っていた、資産を多く持っていた市民を代表するグループ。ジャコバン派と呼ばれる革新的な考えを持っていた、比較的財産の少ない市民を代表するグループだな。保守やら革新やら言ったものの、当時のフランスの議会は全員『革新派』である。その中でも比較的保守派と革新派に分かれているわけだ。ややこしいな。

 以上から右翼は保守派、左翼は革新派と呼ばれた訳だ。

 

 じゃあ保守的な考えとは?

 革新的な考えとは?

 

「現代日本での右翼と呼ばれる方々の思想は、一般的に日本伝統を守るという信念の元に述べられます。例えるならば……天皇制の維持であったり、夫婦の同姓でしたり、外国人の参政権・選挙権に反対といったものですね」

「そんで左翼は逆だな。昔ながらの国旗や国歌斉唱に異義を唱えたり、外国人の参政権・選挙権も取り入れようぜって考える人もいる。国際化が加速している現代に、古い考えよりも新しい思考を以て日本を豊かにしていこうってことよ」

 

 俺と龍慧がそれぞれ右翼と左翼の説明を行う。所詮は主義主張だから良いも悪いも関係ないが、基本的に右翼が大衆一般に支持されやすく、左翼を支持する人は比較的少ないように思われる。劇的な変化を好まない日本人だからなのかね?

 俺の憶測だけどさ。

 

 そこで新たな疑問を金髪の吸血鬼が投げかける。

 いつの間にか俺の肩に乗っていたフランが紅の瞳を向けた。

 

「でもウヨクとサヨクって、あんまりいい意味では使われてないよね? どうしてなの?」

「その情報ソースは?」

「ついったー」

 

 ちょっと待てや、なんでTwitter見てんねん。

 俺のアカウント使って変なツイートしてねぇだろうな!?

 

「それはですね、そもそも自分の主義主張を表に出さない人が多いんですよ。そして私の経験談なのですが、大々的に自分の思想を語る人間は『過激派』と呼ばれる者達が多いです。厄介な仕事柄を営んでるせいなのか、私の知り合いにも何人かいますね」

「過激派……あの、大学に立てこもったりとか、行列で抗議をするみたいなものでしょうか?」

「早苗さんの後者はいいとして、前者は率直過ぎますが、そう思ってもらってもかまいませんよ。まぁ、あれは一昔前の有名な事件ですね。世間にも影響を与えたといっても過言ではありません」

 

 スマホの個人アカウントを確認しながらも、耳は彼等の言葉を聞いていた。

 早苗がイメージする過激派とは東大安田講堂事件的な構内バリケード封鎖なのだろう。あれは左翼過激派では有名な社会問題にまで発展した事件だ。

 行列での抗議は……どうなんだろう? あれは一主権者としては行使しても良い行動ではあるが、周りに迷惑をかけるのならば『過激』と思われても不思議じゃない故に、どうにも扱いが難しいものだ。俺自身もプラカードや段幕持って行列なんて風景は、ニュースなどでしか見たことないし。

 

 あと龍慧。さすがに自分の主義主張を述べるだけで『過激派』扱いはどうかと思うぜ?

 お前の経験談に出てくる人間は裏の人間だろうが。

 

「フラン嬢がその言葉を良いように受け止められないのは、ネット内において『ネトウヨ』や『パヨク』などの蔑称として使われるためでしょう。互いが互いに意見が真逆なため、特に自由度の高いネットワーク内では論争が絶えないんですよ」

「そうなんだ……」

「自分の主張を持つことは非常に良いことです。自分の意思がある証拠ですからね。……しかし、それで他者を精神的に、又は物理的に傷つけるのは感心しません。『過激派』が問題視されている理由はそこなんですよねぇ」

 

 そこでおどけたように焦る龍慧が弁明する。

 

「もちろん、幻想郷のシステムを批判しているわけじゃありませんよ? それが貴女方のルールであり法なのですから、無関係な私が口を挟めるものじゃないのは重々承知です」

「そりゃ、なぁ? 霊夢とかが鼻で笑いそうな話だぜ」

「弱肉強食の世界に住まう方々から見れば、ひどく面倒で意味のない思想だと思います。ですが、それが現代日本――貴女方にとっては『外の世界』のルールですので、守って頂けると有り難いですね。もしもルールを犯した場合、責任を彼が取らなければならない可能性もありますので」

 

 おっと、こっちに飛び火するのかい?

 確かに弱肉強食を謳う幻想郷から見れば、力を持つ者の自制を法律と機構によって制度化した民主主義など、なぜそのようなことをするのか理解できないだろう。そして俺の視点からだと、幻想郷の法とも言えるものを幻想郷の賢者と博麗の巫女の二名が担うことに不安を覚える。

 どちらがいいのか? 結局は慣れなんだろうね。

 

 魔理沙は難しい顔をして考える。

 パッと見だと難しい話とか理解できなさそうな性格をしているが、これは俺の第一印象による偏見だ。よく考えれば彼女は魔法使い。『魔導』を研究する者だから、馬鹿にはできない。

 

「ふーん……いろんな考え方があるんだなぁ」

「どちらが正しいの?」

「さぁ? それを決めるのは俺じゃない」

 

 結局のところはそこである。

 日本は民主主義国家。どれだけ自分の考えが正しいものなのだとしても、その『正しさ』は国民の総意によって決まるため、一票の差でどうにでも転がる。国民一人一人の価値が平等であるから生まれたもんだし、仕方ないと言えばそれまでだが。んで、その一票を如何に自分の方へ傾けるかを考えるのが政治家の仕事や。

 だからアリスの正否に関する疑問に答えることはできない。というか主義主張に正否がないのだから当然か。

 

 すると俺の言葉の意味を察したのか、いつの間にかフランとは違う方の肩に座っていたこいしが疑問を投げ掛ける。

 

「じゃあ、おにーさんはどっち派?」

「……どうなんだろうなぁ」

 

 前々から幼女二人組……特に古明地こいしサンは、俺が答えにくい質問を投げてくることが多々ある。物理の方式然り、保健体育のアレ関係然り、今の質問然り。姉の方は「無意識に質問しているようなので、適当にあしらって頂けると……」と困り顔だったのを思い出す。

 純粋な子供の質問ほど説明が難しいってのは、皆さんも体験があるのではないだろうか。俺も汚い大人になっちまったのかねぇ。

 

 事実右か左かと尋ねられても、俺はその答えを自分の中に持っていない。どちらの思想にもメリット&デメリットが存在し、自分が支持したいものがない限り、俺は投票用紙を白紙で出す人間である。

 海外からも評価されている日本古来の伝統を守るって意見にも賛成するし、国際(グローバル)化が進む日本に新しい風を吹き込むのも納得できる。

 結局のところは……

 

俺達が就職する頃に定時退社が当たり前な社会になればそれでいいんだよ

休日に休むことが出来るなら文句はありません

 

 俺達若者がもっと生きやすい国になればそれでいい。

 この時期から現代社会に絶望しか待っていないとか、歳を取ることが死刑宣告にしかなっていないじゃないか。

 

 

 

「で、本音は?」

「「働きたくない! でもそれなりの金は欲しい!」」

 

 

 

 やっべ本音が出たわ。

 

 

 

 




【裏話】

こいし「ちなみにネタの元は?」
紫苑「衆議院選挙と作者の講義。民主主義の話は銀英伝」
こいし「銀河声優伝説……!」
紫苑「声優豪華だよなぁ。あ、俺はヤン提督めっちゃ好きです。くっそ格好いい」
龍慧「私はラインハルト派ですね」
紫苑「あの人たち一々セリフが格好良過ぎるんよー」
龍慧「『魔術師、還らず』」
紫苑「やめて」

こいし「銀河の歴史がまた1ページ――」
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