IS×ロックマンX~自律型戦闘用ロボット「Code:X」~ 作:風森斗真
時系列的には、「白騎士事件」の三ヶ月後に「ロックマンX」が発見され、一夏誘拐事件のころにゼロが完成した、となっております。
大気圏外での活動を想定して作られた、装甲型ロボット「インフィニット・ストラトス」、通称IS。
希代の天才にして天災である篠ノ之束により開発されたその機械は、世界を大きく変えた。
有史以前より、"生み出す"という神秘性から、歪められた形で守られてきた女性が台頭し、それまでの男尊女卑から女尊男卑の風潮へ人々の思考はシフトしていった。
そんな中、一人の科学者が師として仰ぐ、今は亡きロボット工学の天才、トーマス・ライト博士の研究所を訪問していた。
取り壊しが決まった研究所から、少しでも彼の遺したものを持ち帰ろう。
そして、彼が生前から話していた、ロボットと人間の平和的共存が実現できる、世界の希望足りえるロボットの理論を受け継ぐために。
そう決意して、彼は研究所へと向かったのだ。
ふと彼は、以前、訪問したときにはなかった、いや、見つけることが出来なかった地下室への入り口を見つけた。
入り口から、地下室へと向かった男は、そこに置かれていたカプセルに目が行った。
何年も放置されていたためだろう、すっかり積もってしまったほこりを払うと、そこに、「
「……これは……」
そうつぶやいた瞬間、背後のモニターが突然、光をともし、ひげを蓄えた老人が姿を現した。
その老人の顔を見た瞬間、男は驚愕した。
老人は紛れもない、この研究所の所長であり、彼が敬愛してやまないロボット工学の天才、ライト博士だったのだから。
《私は、トーマス・ライト……「ロックマンエックス」を設計し、開発した研究者である……ゴッホゴホ……》
どうやら、録画されたメッセージらしい。
もう生命の灯火が消えかかっているというのに、それをおして、ライト博士はメッセージを続けた。
《私は、Xには、従来のロボットにはない、特殊な能力を与えた。それは、我々、人類と同様、「考え、悩み、行動できる」能力である》
その言葉に、男は驚愕で目を見開いた。
通常、ロボットは
だが、現代科学でできることは
ライト博士は、そこにさらに「
それは、人間、いや、生命体に与えられた行為だ。
たとえ、AIを搭載されたロボットであっても、
だが、人間は、その過程が、ときには求めていた答えが「本当に正しいのか」「ほかに最適な過程がないか」、という想いに囚われ、悩む。
それゆえに、悩む、という行為は、有機生命体にのみ与えられたものだと考えられてきた。
《エックスに与えたこの能力は、
ごほごほ、と苦しそうに咳きこみながらも、ライト博士はメッセージを続けた。
《だが、私にはエックスの安全性を確かめるだけの時間がなかった。よってここに、エックスを封印する!……遠い未来、この封印が解かれることがあるなら、エックスは世界に平和をもたらしてくれるだろう。だが、同時に懸念がある。エックスが進化の戦いに巻き込まれてしまうのではないかと》
間もなく消えてしまう命の炎を精いっぱい燃やし、ライト博士は切実な思いをメッセージに込め続けた。
《だが、この封印が解かれた時、エックスは世界の希望となってくれる。私は、そう信じている。そのことを、どうか忘れないでほし……》
ライト博士がすべて言いきる前に、時間が来てしまったらしい。
そこで、映像が途切れた。
――ライト
男は、敬愛する師からのメッセージを受け、背後にあるカプセルに目を向けた。
このカプセルの中には、師匠が世界の希望となりえる可能性を秘めた、最高傑作が眠っている。
ならば、その可能性を見届けるのは、弟子である自分の役目。
そう決意し、男は、エックスが眠っているカプセルを開いた。
カプセルの中に眠っていたのは、人間と間違えるほど精巧に作られた
カプセルが開き、少しすると、眠っていたヒューマノイド、ロックマンエックスはゆっくりと目を開けた。
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男とエックスの邂逅から数年後。
エックスの設計と思想を元に、人間と同じ思考過程を持ち、感情を持つ、
だが、現在はまだエックスほどの完成度を誇るレプリロイドはおらず、唯一の成功したレプリロイドはエックスほど深く思い悩むことがない。
思考過程と感情こそ、従来の人型ロボットよりも高性能なのだが、なぜかライト博士がエックスに与えた"悩む"能力を与えることはできなかった。
それは彼にとってそれはまだ取り組みがいのある問題だったのだが、それとは別に彼を悩ませる問題があった。
昨今、ISと並ぶ、いや、それを凌ぐ兵器の開発協力を依頼されているのだ。
その一環として、エックスと起動に成功した「Code:Zero」のISデータの採取のために、IS学園への入学を依頼されているのだ。
彼としては、兵器の開発はまだいい。
だが、"心"を持っているエックスとゼロに、他人をだますような行為をしてほしくない、という想いがあった。
ライト博士から受け継いだエックスにしても、彼を元にして開発したゼロにしても、彼にとっては息子も同じだった。
彼らをIS学園に送りだすということは、彼らは兵器であり機械であることを自覚させられるような気がしてしまっているのだ。
だからこそ、悩み、考え続けた。
だが、最終的に彼は、息子たちの意思を尊重して、彼らをIS学園へと入学させた。
のちに、彼はこう記している。
『これが果たして正しい選択だったのか。エックスは私の師匠から受け継ぎ、ゼロは彼を元に私が開発した最高傑作だ。もし、二人がISに接触してしまったら、もし、女尊男卑の風潮に染められてしまったら……わが敬愛なる師、ライト博士が懸念していたように、エックスとゼロは「進化のための戦い」に身を投じることになるかもしれない……だが、私は二人がISとともに世界の希望となることを願い、信じてやまない。どうか、この想いが、多くの科学者の心に根付いているように』
そこに記されていたのは、ただただ、二人の息子の未来を案じる、父親としての想いに他ならなかった。