短いけどね!!
あ、あと後書きや活動報告に書きますが『お気に入り登録数1500記念』?みたいな感じのことを考えてます。まぁ、まだ四捨五入しても1400なんですけど……
果たして
己が己の役目を全う出来る、今この瞬間を。
無人機の砲撃を斬り捨てた俺はふぅと息を吐き、チラリと左腕へと視線を向ける。関節部分の肘辺りから下には穢れなき純白の装甲が展開されており、その手には得物であり先程の砲撃を一刀両断して、文字通り消し去った一本の剣が握られていた。白亜の分厚い刀身を有する、まるで鉈のような短めの剣。少なくとも織斑の持つ雪片弐型のような日本刀とはかけ離れたフォルムであるそれは、刃の部分に蒼白の光を帯びて僅かに煌めいている。
「大丈夫か、篠ノ之?」
俺は件の無人機へ織斑が突っ込んでいく姿を見届けてから部分展開を解除し、振り返って篠ノ之の様子を確認する。彼女はペタッと床に座り込みながら呆けており、「えっ……」とか「あっ……」とかの言葉にならない声を溢している。バイタル面に異常は見られないし、ただ目の前で起こったことがまだ信じられないだけか。しかし俺としては織斑を鼓舞するという目的を達した彼女には、早急にこの場から離れてほしいというのが本音だ。ゆっくりと、彼女に手を差し伸べる。
「立てるか?もうここに留まる理由もないし、すぐに離れるぞ」
「は……はぁ……」
おっかなびっくりと言った具合に出された手を握る篠ノ之。少々強引にだが俺は彼女を立ち上がらせ、そのまま早足で中継室から外に出た。ここを進めばアリーナの外へ通じる通路に出られる、とりあえず篠ノ之をそこまで送り届ければ安心出来そうだな。
「あ、あの。アイン先生」
「?どうした」
そんなチラチラ俺の顔を見て。残念だが今は逃げることが最優先だから答えられることは少ないぞ。手を引き足を動かしながら、俺は篠ノ之の問いに耳を傾ける。
「その左目は、一体……?」
「……あ」
……そういえば眼帯付け直すの忘れてた。動揺で思わず足を止めそうになる。それどころか下手すりゃ躓きそうだ。まずい、見られた。
「……すまない。気持ち悪かったろ?」
片手を篠ノ之と繋いでいるせいで眼帯を付けられず、一先ずはその
「いえ……すみません、私こそ聞いてしまって」
……気を遣わせてしまったか。駄目だな、最後の最後に気を抜くのは。無言でアリーナの通路を行きながら自らを叱咤する。
その後、篠ノ之を無事に避難させた俺は全力疾走で今来た道を駆けた。急がなければ織斑達が危ない。俺が
アリーナに到着した時には既に彼等の戦いは終わっていた。織斑は凰に抱かれて力なく項垂れており、どうやら俺と同じく無人機と相討ちになったようだ。その近くにはブルー・ティアーズを展開したオルコットの姿もある。倒れた織斑に混乱気味のようだが、あの三人にも早く逃げてもらわなくては。幸いにもこの中継室は先程の砲撃でシールドが破られており、アリーナから脱出出来る唯一の場所となっている。
『凰!オルコット!今すぐ避難しろ!敵の援軍が来るぞ!』
篠ノ之と同様に中継室から叫んで意識のある二人に訴えた瞬間、轟音と共に四機の無人機が新たに現れた。そしてそいつらの狙いは全て、気を失っている織斑へと向けられている。左目で確かめれば敵のチャージが終わるまでは後数秒、あれじゃ織斑を抱えた彼女達がここへ辿り着く前に……!
だが、数秒もあれば──間に合う!
「いくぜ、白式……!」
──うん、行こうイチカ
中継室から飛び出した俺をふわりと暖かな光が包み、次の瞬間には純白の鎧や翼となって顕現する。それと同時にスラスターが唸りを上げ、瞬時加速で以て俺をオルコット達の目の前へ運んだ。ゴウッ、と爆発したかのような音が後になって追い付く。そのまま両の掌に納まっていた一対の剣──
一瞬後、連続した発射音と共に視界の大半が光に覆われる。数多の砲口から放たれた砲撃が合わさって、まるで大きな壁のようになって押し寄せてきた。
だが
「(
迫り来るレーザーの壁、そこへ二振りの雪片を叩き付ければ、それは嘘のように跡形もなく霧散して消滅した。あらゆるエネルギーを悉く消し去る最強の力、零落白夜。エネルギーを集めて放つ無人機の兵器もその対象の例外ではない。そのデメリットとして発動及び維持にはISのシールドエネルギーを消費するが、第五世代機特有の機能である『シールドエネルギー自動回復機能』がそれを補っている。
「え……何……?」
「ア……アイン先生……?」
「オルコット、今すぐ織斑と凰を連れて中継室から脱出しろ。ここは俺が引き受ける」
何が起こったのか分からないと言わんばかりのオルコットに淡々と言うべきことだけを告げ、再びスラスターを噴かせて無人機達へと向かっていく。俺達にあまり悠長にお喋りしている暇はないし、このIS──白式・零について根掘り葉掘り聞かれるのも勘弁だ。俺のやるべきことは目の前の奴等を倒す、それだけでいい。
──十一時方向の無人機、チャージ完了したみたい。イチカ、気を付けて
頭の中に響く
戦いを長引かせるつもりなど毛頭ない。全身に搭載されているスラスターと化した展開装甲、そしてメインスラスターを一気に噴かし瞬時加速の更に上、
──後ろ、狙われてるわ
「(それが、どうした!)」
ドドドドドッ、と連続でスラスターを点火させてレーザーを振り切る。轟音が耳に響き、視界がぶれ、体が軋むような感覚に襲われて顔をしかめるが、むしろその痛みに俺は懐かしさすら覚えた。怯むな、この程度の痛みなんていつものことだろう。
義眼が敵の僅かな挙動から次の動作を割り出す。俺に接近戦を挑むつもりか、好都合だ。コマのように回転して長い腕を振り回しながら接近してくる無人機。その両腕をすれ違い様に斬り飛ばし、そこから素早くターンして背後からコアを貫いた。残り、一つ……!
動作を停止させガクリと項垂れた無人機を振り払い、残り一機となった敵と相対する。静止したのはほんの一瞬、二本の雪片をぐっと握り締めた俺は無人機目掛けて斬り掛かった。放たれた砲撃を打ち払い、右腕、左腕と順に腕を落とす。
雪片此岸と雪片彼岸。白式・零にとって
両腕を失い、最早攻撃することすら出来なくなった無人機の装甲を、煌めく斬撃の乱舞がズタズタに斬り裂いた。
△▽△▽
学園を襲撃してきた無人機達は全て倒した。負傷者は現場で戦っていた織斑一人だけであり、その彼も絶対防御のお陰で打撲や全身筋肉痛程度の比較的軽い怪我で済んでいる。生徒達の避難も滞りなく行われ、被害は最小限に抑えられましたとさ。めでたしめでたし。
そう言って終わりたいところだが残念ながらまだ終わりではない。事件の報告書やらの作成や非常時における対応の再検討、各国に提出する書類といった作業がこれから山のように押し寄せてくるのだ。果たして何日この作業に追われることになるのやら。
夜、IS学園地下にあるレベル4の権限を持つ関係者だけが入れる秘密の場所。俺はそこで一つ溜め息を溢しながら、コーヒーの入ったマグカップを二つ運んだ。
「どうぞ、織斑先生」
「あぁ、ありがとう」
差し出したマグカップを受け取った織斑先生はうっすらと微笑みながら口をつける。俺もまた彼女の隣に座り、目の前のディスプレイに出された映像に目をやりながらコーヒーを啜った。苦い、だが同時に目も覚める。
映像では織斑と凰が無人機と戦っている様子が映し出されていた。二対一であるにも関わらずてこずっているのは、やはりコンビネーション不足が原因だろうか。それに零落白夜の使い方にもまだまだ無駄の目立つ。あれではエネルギーの無駄な消費が多かろうに……未熟な己を見せつけられるというのは存外にむず痒いものだ。
やがて映像は変わり、ディスプレイいっぱいに白式・零を纏った俺が映し出された。チラッと隣の織斑先生を横目で見れば、俺の視線に気付かないくらい真剣な表情で映像を見入っている。思いの外ばっちり撮られちゃってるなぁ……
「「……」」
無言で、ただ流れていく俺の戦闘をじっと眺めていく。時間にすればおよそ一分程度、大体の映像がぶれているのは白式・零が速すぎるが故か。俺としては近付いて斬っているたけなのだが、なんというか……よく分からない。ただ無人機が撃破されていくのだけははっきりと映っていた。
それにしても織斑先生は聞いてこないのだろうか。何故俺が専用機を持っているのかとか、何故零落白夜を扱えるのかとか、聞きたいことは色々あるだろうに。いつ詰め寄られるか分からない状況にビクビクしながら、俺はひたすら流れる映像を織斑先輩と眺め続けた。
『織斑先生、アイン先生』
果たしてどのくらい時間が経ったのだろうか。数えるのも面倒になる回数映像を見ていると、不意にディスプレイに割り込みでウィンドウが開かれ、端末片手の山田先生が映し出される。そんな彼女に織斑先生が許可を出すと、後方の扉が開いて本人が入室してきた。
「解析の結果が出ました。お二人はもう分かっておられるかもしれませんが……」
「聞かせてくれ、山田先生」
「はい、あれは無人機です」
そう言いながら山田先生は手元の端末を操作して解析の結果を表示させる。無人機の構造、およそのスペック、使われていたコアについて等々、やはり五機という数のお陰でかなり詳しい情報も入手出来たらしかった。俺もこういった無人機内部のことはほとんど知らなかっただけに、これ等の情報はかなり興味をそそられる。
「あの……アイン先生」
「……なんですか、山田先生?」
「えっと、その……先生が使われてたISって……なんなのかなって。それに、この無人機のことも知ってらしたみたいですし……」
おずおずと聞いてくる山田先生。やっぱり、聞かれるよな。さて……この時の為に嘘も考えていない訳ではないが、織斑先生がいる以上ほぼ確実に見破られるのは間違いない。第一、俺は嘘が下手くそだからなぁ……どうしたものか。
「アイン」
ビクッと、自分でも肩が跳ねたことが分かった。駄目だ、やっぱり誤魔化すなんて無理だわ。頭の中に浮かんでいたプランを丸投げし、全部話せば楽になるという犯罪者のような結論に至った俺は、観念して懐から
「答えたくないのなら、答えなくても構わんぞ?」
その言葉に動きを止めた。あまりにも予想外のことに頭がフリーズする。え、どうして?なんで?
今の俺はポカンと口を開けた、相当情けない顔をしているのだろう。織斑先生と山田先生がくすっと笑っている。そこからたっぷり三十秒程掛かっただろうか、漸く絞り出した声は己のものとは思えない程弱々しいものだった。
「え……なんで、です?もっと根掘り葉掘り聞かないんすか?」
「ふっ……経歴不明、火傷に眼帯の顔と色素の抜けた髪をした男が今更何を言うか。お前の秘密など今に始まったことではあるまい。そこまで言うなら聞いてやろうか?アイン先生」
「すみません、勘弁してください」
得意気に答える織斑先生に俺は全力で土下座した。そんな俺を二人から先程よりも大きな笑い声が溢れる。恥ずかしいような、安心したような、なんとも複雑な思いが胸の内を燻った。
でも、とりあえずこの言葉だけは言っておかなくては。
「織斑先生、山田先生、ありがとうございます」
「今更だと言っただろう、気にするな。あぁ、そういえば今日は随分と草臥れたな。腹も減ったし肩も凝った。そうは思わないか、真耶?」
「ふふふっ、そうですね。私もちょっとお腹が減りました」
おおぅ、背中に突き刺さる視線が痛い。土下座中で顔は見えないが、二人が悪い笑みを浮かべている姿は容易に想像出来た。織斑先生はともかく、山田先生も見掛けに寄らずこういった悪ノリには結構喜んで参加してくるんだよなぁ……
「(でも、まぁ──)」
それくらいなら、別にいいか。
とりあえず一巻の内容はここで終わります。次の話は多分閑話かな……?
前書きで言った『お気に入り登録数1500記念(仮)』なんですが、内容としては「もし
アイン 旧名織斑一夏。専用機は『白式・零』。IS展開中のみコアの声を聞くことが出来、会話も可能。一夏をよりハイスペックにした存在なので、料理やマッサージはプロ級の腕前になっている