夕闇フィーバータイム ―短編集―   作:字だけを載せる。

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サンゴ「あーあ・・ あたしってば、何やってんだろ ・・・・・・ 帰ろっかな・・」



クルミが彼女を、“サンゴちゃん”と呼ぶようになった話。






あだ名の噂

「・・グウゼンだね」

ナオはその声に足を止めた。引っ張っていたリードが動かなくなり、犬のメロスがどうかしたのかと彼の方を向く。

「マユちゃん!」

クルミがナオの前にいる人物に、大きく手を振った。

「名前で呼ぶなっての」

名前を呼ばれた相手は思い切り嫌な顔を向けたかと思うと、シッシッと追い払うように手を振った。

「・・なんで」

か細く、震えた声。やっと言葉を発した、ナオの声だ。

「・・なんで ここに・・」

「言ったでしょ グウゼンだって」

メロスを撫でながら、相手は答えた。

「食糧調達のためにコンビニ行こうとしただけだよ そしたらあんたらが、ここを通ったってだけのハナシ」

「・・・・・・」

黙り込むナオに、畳み掛けるような言葉が投げかけられる。

「アンタもバカだねー、バレたくないならもっとマシな場所『散歩』すればいいのにさ」

ナオはゆっくりとうつむく。

「・・誰から、聞いたの」

「さあ? 白昼堂々、学校の廊下で『犬の散歩行きませんか』・・なんて、色気のイの字もない誘い方してるヤツなら 誰に見られててもおかしくないんじゃない?」

「・・サンゴ、あの あのさ・・」

「言いふらしはしないって アタシのキブン次第だけど」

「・・・・・・」

二人の間に重苦しい空気が流れ始めた時、後ろから声がした。

「ねぇねぇ」

クルミである。

ナオはその声にハッとし、彼女の方を向いた。

「あ・・ ゴメン、シイナさん どうしたの?」

「サンゴってだぁれ?」

「え」

「もしかして、マユちゃん?」

チッと舌打ちが聞こえる。

「誰でもねーよ」

相手のいつもより低い声に、さすがに気が付いたナオ。

「あ・・ そっか 僕しか・・」

「アンタ、お口の軽さ、アタシ以上なんじゃないの?」

やれやれと肩をすくめるサンゴ。そんな彼女に、クルミが不思議そうな目を向ける。

「マユちゃんじゃなくて、サンゴちゃん?」

「そう、そうだよ アタシのあだ名 ただのあだ名・・ ・・もう どーにでも呼べ」

「カックイー!」

楽しそうにクルミが両手を挙げる。今度は逆に、サンゴが不思議そうな目を向けた。

「あ?」

「いいなー、いいなー、そのアダ名! カックイーのよ サンゴちゃん、サンゴちゃん」

「うるせぇ 連呼すんな」

サンゴは大きくため息をつくと、ナオをにらみつけた。ナオはその視線に、少し体を震わせる。

「・・ゴ、ゴメン・・」

眼鏡をくいっと少し上にあげると、サンゴはナオに手を向けた。

「え?」

「貸せ」

ナオは、彼女と彼女の手を交互に見た。

「リード貸せって言ってんの」

「な、何でさ」

「アンタら二人じゃ、危なっかしいから 保護者になってやるって言ってんの」

奪うようにリードをつかむサンゴ。

「サンゴちゃんも お散歩するの?」

「するよ、こうなったら いくらだってしてやる」

「ウワーイ、サンゴちゃんもお散歩~」

二人は、メロスと一緒に歩いて行ってしまった。

「あ、待ってよ」

立ち尽くしていたナオは、急いでその後を追っていく。

 

 

 

夕闇通り探検隊、ここに結成。

 

 

 

―了―

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