奉行所同心:浅岡周平
飾り職:丹次
川神藩士:森田作五郎
遊び人:百助
下っ端:辰三郎
老中:瀬川雅楽守<うたのかみ>
用人:新見精市<しんみせいいち>
ある日の夜更け。
江戸は八百八町の郊外にある、一つの荒れ寺 通称{棺桶寺}に、六人の人影を見出すことが出来る。
一人は黒羽織の役人、一人は浪人者で一人は遊び人、一人は飾り職の男、また一人は…まあ、普通の男だ。そして、最後の一人は上等な着流しを身に着けた気品のある老人だった。
この老人、瀬川雅樂守といい、幕府最高議決官である{老中}の食を担う男で、とてもこんな夜更けに荒れ寺に居て良い人物ではない。彼らの会話を聞いてみると、
瀬川「お主たちの働きにはこの瀬川、非常に感謝している。」
役人「そんなことを言いたくてわざわざ屋敷を抜け出してきたんですか?」
瀬川「……単刀直入に言おうかの。お主らには川神に行ってもらいたいのじゃ。」
浪人「川神に?」
瀬川「そうじゃ。」
役人「何故?いやまずどうやって?仕事で行くなら良いが、在住ってなるとまずいぞ。オレは奉行所同心見習いだしな。」
{仕事}という単語が出た。彼らは{仕事人}と呼ばれ、金で人の命を奪う家業をしている。そんな者共と老中が密談している。大体の状況は分かるだろう。ところで、{川神}という単語も出た。武蔵の国と相模の国の国境にある街で、川神藩が支配している。
さて、もう少し彼らの話を聞いてみよう。
瀬川「まず理由じゃが、わしの知り合いの川神鉄心というものがお主らを欲しがっているからじゃ。そして方法じゃが・・・」
そこで瀬川は一旦言葉を切った。
瀬川「浅岡。お主は川神奉行所で同心となってもらう。森田は川神はんに士官してもらうぞ。二人には川神学院に編入してもらうぞ。その他は身軽じゃから良いじゃろう。明朝出立してもらいたい。」
一気に言った。川神学院とは川神藩の藩校である。
明朝と言っても、日付は変わりかけている。その後瀬川は屋敷に戻り、仕事人たちは其々旅の支度にかかった。
まあ、旅と言ってもさほど距離はないのだが。
<翌日>
川神学院の一室に、瀬川を除いた昨夜のメンバーが集っていた。いや、一人だけ違う。物凄い髭の老人が加わっていた。彼こそが瀬川老中の言っていた川神鉄心、川神学院の学園長である。ひとしきり密談をしていたが、何を話しているのかは定かではない。
四半刻後、仕事人たちが部屋から出てきた。彼らの顔つきを見るに、仕事の話をしていたのではないだろう。となると、役人……名を浅岡周平という……と浪人、森田作五郎の入学手続きか。
兎にも角にも、川神に仕事人グループが出来た。少しばかり後に、彼らは{真剣人}と呼ばれることとなるが、今はその名は未だ無い。
時代錯誤の意味をわかって頂けたでしょうか?
次回から、仕事をします。