入学手続きは済んだが、通学は三日後からである。周平見回りがてらはせっかくの土曜なので川神を歩いてみることにした。無論、二心合ってのことである。
浅岡「いい感じに盛ってるな…繁盛はいいことだな。おう、ごめんよ。」
こうやって町の人々に挨拶していると、良いことがある。特に商家。
「ああ、新任のお役人様でございますか。」
「これからよろしくお願いいたします。」
「頼りにさせていただきます。」
とかなんとか御託を並べつつ、紙包みを渡してくる。
周平がその現場に来たのは袖が少し重くなった頃であった。
?「な、なにすんのよ!!きゃあ!?」
三吉「へへ・・・姉ちゃん、なかなかいい体してんじゃねえかよぉ。」
源次「おうおう、ちょっと遊んでくれねえかい?」
義を見てせざるは勇無きなり。まして彼は同心。
周平「ようよう、お天道様がギンギンに顔出してる最中から見せつけてくれんなよな~。」
源次「ああんっ!?てめぇ、誰に口聞いてんだよこのガキャ。」
三吉「俺達を誰だと思ってんだよ!!ええ!?」
ドコにでも有るような脅し文句を息巻きながら、二人は腕を捲し上げた。恐らく、ちゃちい彫り物を見せるためだろう。周平も負けじと、
周平「おいおい、そんな口聞いて良いのかよ?こちは御上からこれを頂戴してる身なんだぜ?」そう言って、懐から朱房の十手を取り出してちらつかせた。
効果覿面、というわけにはいかなかった。周平は若いし、江戸よりも同心への尊意がないのだろう、一瞬怯んだが、すぐに匕首を出して飛びかかろうとした。修羅場になるかと思われたが、流石に衆人環視の中で、刃物を抜くわけには行かぬと見たか、
三吉・源次「覚えてやがれ!」
やはり在り来りな捨て台詞を吐きながら逃げ去った。
周平「ったく…治安はそれほどよくねえのかな」
どうやら女はどこかに逃げたようだ。
百助「ああ、それはきっと天神の佐助の子分だよ。」
その日の夕刻、百助と周平が空き地で話していた。百助のその話によると、昼のあの騒動は佐助の子分で三吉と源次といい、このあたりではなかなかの悪らしい。子分がそれだから、親分の佐助はもっと悪く、強請り集りなんて日常茶飯事。女郎茶屋も2つ持っているらしい。その後ろ盾が材木問屋の植松屋だという
周平「なんでそんなことお前が知ってんだ?」
百助「今度の仕事だからよ。」
周平「……なるほどな。そういう訳か。」
百助「丹次と辰三郎と森田の旦那にはもう言ってある。旦那は植松屋卓兵衛をやってくれ。」
<翌日>
天神の文治の急死が巷に伝わったと同時に歓声が沸いたという。
しかしそれが殺人だったことは伝えられなかった。
彼らの川神初仕事は終わった。
次回は川神学院入学します。