入学初日。
奇しくも作五郎と同じクラスになった。
編入するのは、1-F。
後の風聞によると、問題児を集めた構成になっているらしい。(言っておくが、オレは至って健全だぞ。)
校内は広いらしいので、作五郎を待つ。
周平「お、地図持ってきたか。」
作五郎「ああ、ここを右に曲がって、突き当りを左だ。」
周平「地図は?」
作五郎「有料だった。」
金とんのかよ。
脳内でツッコんで言われた通りに進む。
1-F
卓也「ねえキャップ、編入生どんな人かな?」
翔一「さあな。おもしれーやつなら誰でも歓迎だぜ。」
転校生が来る場合は、何処の学校でも観られる現象が起きている。(今回は編入だが)
女子はイケメンを願い、男子は可愛い女子か、モテない男子を望む。
小島「静かに!浮かれる気持ちはわかるが、厳粛な雰囲気を保て!」
生徒「はい!!」
1-F担任:小島梅子。いわゆる鬼教師である。
ガラララララッ
周平・作五郎「失礼しま~す。」
梅子「おはよう。クラス担任の小島だ。簡単な自己紹介を頼む。」
自己紹介ねぇ…
作五郎「じゃあ俺からな。え~~と。江戸より川神藩に仕官した、森田作五郎です。宜しく願います。」
おお、完璧な自己紹介だな。じゃあ俺も前に倣え。
周平「江戸北町奉行所から転勤になった同心の浅岡周平です。宜しく。」
小島「そういうことだ。今日から学をともにする同士が増えた。仲良くし給え。」
生徒「はい!!」
おお…いい返事だ…奉行所も見習った方が良いぞ。
編入初日は無事に過ぎた。
とりあえず質問攻めに遭い、風間とかいうやけにテンション高いやつに絡まれ、直江とかいう男が止めに入って…まあ疲れた。
<翌日>
朝のHR
小島「最近無頼の浪人共が街を荒らしている。この学院内にも負傷者が出たと聞いた。皆も気をつけるように。」
千花「浪人か~怖いね~」
真与「遅い時間に外出しない方がいいですね…」
口ではそう言うが、それほど気にとめずにいるようだ。
だが、学校としても怪我人が出た以上放って置けず、奉行所に捜査を依頼した。
周平もその一人だが、依然として彼らの根城は掴めぬままだ。
しかし…
新見「御免!!」
教室に身なりの良い侍が入り込んできたのは3時間目の授業中であった。
教科担任「どなたですか?」
新見「川神奉行所からの使いのものだ。浅岡周平をお借し願いたい。」
そう言って有無を言わせずに周平をひったくっていった。
周平「新見様。要件を早く。」
明らかにじれったそうに言う。それは当然だろう。教室に帰れば好奇の目にさらされるはずだ。
新見「単刀直入に言おう。仕事だ。」
周平「依頼人は?」
新見「御老中だ。」
周平「ふーん……。で、相手は?」
老中瀬川雅楽守、仕事人の総元締めだ。
新見「元江戸中町奉行、生田主馬<いくた しゅめ>同奉行所筆頭与力、青木兵庫<あおき ひょうご>、与力の石三十郎<いし さんじゅうろう>、倉田治助<くらた じすけ>の四人だ。」
周平「中町奉行ってえと、先年廃止になったあれか。」
江戸中町奉行所。鍛冶橋町に中番所をおいて南北両奉行所とともに江戸の治安を守ってきたが、享保年間に廃止にされた。
新見「その者たちが川神を荒らしているようでな……実は、中町奉行所を取り潰したのは瀬川様なのだ。」
周平「なるほどな……だから、奉行所もあいつらを召し捕るのに消極的なわけだ。」
つまり、元は公儀の役人が無頼の徒となり下がっている、ということが下々に知り渡れば、御上の権威に傷がつき、、瀬川老中も非難の的になるだろう、ということである。
新見「あやつらは、江戸では人を殺めておる。頼んだぞ周平。」
百助「隠れ家はもう辰三郎が突き止めてありやすぜ。」
作五郎「仕事が早いな。」
丹次「いつやる?」
周平「明日の夜にするか。」
何処かで梟が鳴いている……
風間ファミリーサイド
大和「よし、浪人たちの根城に乗り込む算段を付けるぞ。まずな……」
彼らは何を話しているのだろう……
<翌日の夜>
石「クフフ…いや、飲んだ、飲んだ。サテ、お頭にお会いするか。」
倉尾「今日の稼ぎは良かったぞ……」
豪勢に笑いながら歩く彼らから少し離れて影が一つ。百助だ。
長い間の酒浸りと油断が、与力の勘を腐らせてしまったのだろう、そのことに気づく様子はまるでない。
更に彼らに行く手の端にある灯籠の陰には、蚤を手にした丹次が。
二人が灯籠を通り過ぎざま、
石「ウ!?」
足払いで石の体を崩し、逃げようとする彼の首筋に蚤を突き刺した。
倉尾「な、な、な、何…」
「何奴」、とでも言いたいのだろうが、声が震えて、壊れた蓄音機のようになっている。これでも、元与力である。
震える手で刀を抜こうとする倉尾の手に何かが巻き付いた。赤く太い糸で、遊び人が財布なんかに巻きつけるものだ。
百助は見事に組紐を操り、刀が抜けぬように雁字搦めにしてから思いっきり引っ張った。その進行方向に匕首を構えて。
倉尾「うぐうっ!」
刃元までしっかり食い込んだ匕首をゆっくり引き抜くと同時に、これまた器用に刀の組紐を解く。倉尾は灯籠に凭れかかるようにして斃れた。
周平(おかしいな…)
人がいなさすぎるのである。生田、青木を含めて浪人は11人。しかし、手下と思しきものが一人もいないのである。
青木「お奉行。今月の稼ぎの内、お奉行の分でございます。」
生田「ウム、大義。」
生田主馬、中町奉行在任時も強請り集りなど相当あくどいことをしていたらしい。
青木も、当時の贅沢に未練がるのだろう、生田を「お奉行」と呼ぶ。
その時。
浪人「曲者だ!!」
誰かの叫ぶ声がした。
男「居たぞ!!」
青木「何事でしょう?」
生田「どうせ仕返しでも目論んだ町人であろう。捨て置けい。」
青木「ははあ、ウグッ!!」
生田「どうした青木。あ、あ、」
どうしたもこうしたもない。障子越しの脇腹を刺され、絶命している。
生田「な、何者じゃ。姿を見せい。」
部屋の外に出ようとした生田だが、大刀を帯びていないことに気づき、刀掛けを見ると、大刀が無くなっているではないか。
生田「刀、刀はどこじゃ…ム、何奴だ!!」
反対側の障子に影が浮き出るや、脇差しをひっつかんで投げやった。刀は障子を突き破って消えた。
影が倒れ伏した。恐る恐る障子を開けるやいなや、
周平「お探しのもんだ。返すぜ。」
無くなっていた大刀が腹に突き刺さっていた。
浪人A「曲者!!」
浪人B「待て待て!!」
浪人C「待たぬか!!
浪人が7人、曲者を追っている。
彼らが続けざまに表門の外に飛び出した瞬間、
大和「かかったな。」
一気に風間の軍勢に囲まれた。最強娘達に。(男もいるが)
クリス「貴様達のような不埒者はこの私が成敗してやる!」
岳人「オラオラっ」
黛「閃!」
浪人A「うがぁ」
浪人B「ぐえ」
浪人C「あべしっ」
一子「後はお頭だけ!!さっさと倒しちゃお!!」
と言って、一気に屋敷内に踏み込んだ。
数秒後、複数の女子(男子もいるが)の悲鳴が響き渡った。