~Side綾斗~
「じゃ、遅刻したらあれだから俺はもう行くぞ。」
そう言って比企谷先輩は早足に去っていった。
「ったく、気に入らん男だ。」
「...?」
何故ユリスはここまで敵意を剥き出しにしているんだろう?確かに目は特徴的ではあったけど、そこまで悪い人には思えなかったんだけど...。
「天霧君?生徒会長室に行きましょうか。」
その後、生徒会長室に向かう道中で色々話した。敬語を使わなくてもいいとか、会長は腹黒いとか...。
「そういえばクローディア。さっきから聞きたかったんだけど...」
「はい?何でしょうか?」
「何故ユリスはあそこまであの先輩を敵視しているんだい?」
「ああ、そのことですか。」
俺が聞くと、クローディアは納得といった様子で手をポンと叩いた。
「実は彼女、今年の3月の公式序列戦で彼に負けていまして...。」
「え?もしかしてそれだけで?」
確かに負けたのは悔しいだろうけど...今は6月。それだけでそんな長期間引きずるものだろうか?
「いえ、それもあるんですけど...。単純に彼女は彼の姿勢が嫌いみたいで...。それが負けたことがきっかけで表面化してしまったようなのです。」
「それってどういうこと?」
どうやら闘って負けた事よりもそちらの方が大きな要因のようだ。
「彼の二つ名が《千変万化》だとは言ったでしょう?それの由来は、彼が常に複数の煌式武装を携帯し、その時々で使う武器や戦闘スタイルを変えることから来ています。」
「え!?」
驚いた。今日見た小太刀術、一振りしか見ていないが、技の練度は非常に高かった。それこそこれまでひたすら小太刀術の鍛練を積んできたとしか思えないほどに。もし全ての武器術の練度があの小太刀術並みだとすれば...
「で、その武器の選び方が、『相手に合わせる』とかじゃなく、『適当に手に取った武器を使う』とか、『その日の気分で何となく』とか、適当極まりないものですから...。」
「そ、そうなの?」
だとすると、あの先輩は今までの試合で毎回違う武器を使いながらなおかつ勝ち続けてきたということになる...。はっきり言って尋常ではない。
「ええ。どうもユリスはそれが気に入らないようなのですよ...。『真面目に闘いに挑んでいる者への冒涜だ!』と言って。」
「ああ...。」
何か納得できた。少しだけ話してみた感じ彼女は真面目、あるいは堅物という言葉が似合う印象だった。その彼女からすれば武器を適当な理由でとっかえひっかえしている彼は不真面目、不純に見えるのだろう。
「そりゃ、目の敵にするわけだ...。あの先輩の師はどんな人なんだか...。」
話を聞いただけでも彼が規格外な人なのは理解出来たが、だとするとその彼を育てた人は一体どんな人なのか...
「いませんよ?」
「は?」
「彼の戦闘技術は全て独学、我流です。もっとも、本人曰く『そんな立派なものではなく、ただ自分が動きやすいように動いているだけ』だそうですが。」
「......」
どうやらあの先輩は自分が考えている以上に規格外な化け物らしい。
~Side out~
「あー疲れた...しんど。」
「どうしたの八幡。大丈夫?」
教室に入るなり机に突っ伏した八幡に、戸塚が声をかけてきた。というより、八幡に話しかけてくる人間は、クラスでは戸塚以外にはいない。
「あー、まあ大丈夫だけどもな....」
八幡は戸塚と別れた後の事を話した。
「...それは大変だったね。」
「全くだ。あの転入生も可哀想にな。」
「その転入生ってどんな人だったの?」
「...そうだな。」
そう言いながら八幡はさっきの転入生の事を思い出す。
少なくともあれだけ見た限りでは、決して弱くはないが、この都市では平均の域を出ないだろう。防御においてはそれなりの物があったが、それでもあくまで「それなり」でしかない。正直、特待生としてスカウトされるには力不足だろう。
ただ...
「何かしらの能力の気配を感じた。」
それが八幡の中でずっと引っ掛かっていた。
「え?それって
「いや違う。何か第三者に掛けられた能力っぽい。多分あいつ自身は魔術師ではないだろう。」
その能力が分からないが、かなり強い能力であるのは分かった。その能力いかんでは...
「さっき見たのが本来の実力じゃないかもな。」
~♪
「っとすまん。」
八幡が話し終わったタイミングを計ったように八幡のスマホが鳴った。
「いいよ謝らなくても。誰から?」
「刀藤から。小町と一緒に放課後の訓練に参加したいそうだ。いいか?」
八幡と戸塚は毎日朝と放課後に八幡が貸し与えられているトレーニングルームで訓練している。正確には八幡は戸塚の鍛練に付き合い、色々指導しているのだが。以前八幡に敗北し、その強さを尊敬し、八幡に好意を抱いている後輩刀藤綺凛と、八幡の妹であり、綺凛のクラスメイトである比企谷小町は、度々その鍛練に加えてもらっているのだ。
「うん、もちろんだよ!二人ともとっても強いから僕にとっても参考になるしね。」
「...そうか。ならそう返信しとく。」
ありがとうございました。こちらの方はなるべく八幡視点ではなく、三人称視点で書きたいと思います。