WBCに夢中になってたら間に合わなくて...
どうやら序列5位《
そんな噂を小耳に挟みながら、八幡は自らに貸し与えられたトレーニングルームへ向かった。
「ふっ…はっ!」
「くっ、…やあ!」
今はまだ早い時間であるが、《冒頭の十二人》に貸し与えられたこのトレーニングルームでは刃を交わす2人と、それを傍観する2人の、計4人が集まっていた。
「…そこっ!」
その刀を振っているうちの1人、刀藤綺凛が大きく踏み込み、胸元の校章目掛けて刀を振り上げた…が、
「…なっ!」
綺凛の相手である比企谷八幡が刀の間合いのギリギリ外に逃れていて、その一太刀は空を切った。そして今の綺凛は刀を振り切り、隙だらけの状態だ。八幡がその隙を見逃すはずもなく・・・
「ふう…。」
「うう...やはり比企谷先輩は強いです...。」
「いやいや。刀藤さんも十分凄かったよ。」
模擬戦を終え、八幡と綺凛、それに2人の模擬戦を見ていた小町と戸塚は先ほどの反省会をしていた。
「どこがいけなかったのでしょうか...?」
「うーん...少なくとも僕には分からなかったけど...ただあれに対応していた八幡が凄かったとしか...小町ちゃんは?」
「いやー、綺凛ちゃんが何かまずかったってことは無いと思うけど...。」
綺凛に問い掛けられ、戸塚と小町は揃って首を捻った。実際かなりハイレベルな試合であったし、端から見ていた分にはどちらが勝ってもおかしくなかったように見えた。
だが、当人たちからすればそうでもないようだ。
「比企谷先輩は何かありますか?」
「んー...今のやつに限って言えば間合いの差だろ。さっきはギリギリで刀藤の間合いに入らないようにしてたし。」
「えっ?でもお兄ちゃんと綺凛ちゃんってそんなに間合い違うの?確かに連鶴に入ってる割には攻めきれてないなーって思ったけど...。」
「いや、あくまで誤差の範囲だ。腕の長さの分だけ。まあ普通なら対したアドバンテージにはならんだろうが、さっきのレベルの試合になったらそのちょっとの差で決まることもある。実際さっきは、それで勝ち急いだ刀藤へのカウンターで決まったんだし。」
「なるほど...。」
「ま、はっきり言って刀藤は剣技で言えば俺よりも上だろ。あとはさっきみたいな微妙な駆け引きだな。」
良くも悪くもお前は真っ直ぐ正直すぎる、と締めて八幡は各人に教室へ戻るように促した。
「そういえば八幡。リースフェルトさん、ペア決まったんだって。知ってた?」
教室に到着し、一息ついていたらいつものように戸塚が話しかけてきた。
「ああ、知ってるよ。まぁなかなかいいやつと組んだんじゃねーか?」
「そうなの?でもペアの天霧君ってあんまり強いって聞かないけど...。」
それは戸塚だけでなく多くの生徒が疑問を感じている部分だ。
綾斗の試合映像といえば転入初日にリースフェルトとやり合ったものしかないし、それも目を引くほどでもなかった。
だが八幡は綾斗の本来の実力を知っている。見ることが出来たのはほんのわずかな時間だったが、それでも十分理解できるほどには八幡も見る目はある。
「あいつは実際強ーよ。多分ガチンコでやったら刀藤といい勝負できるぞ。勝ってもおかしくはない。」
「そこまでなの!?」
戸塚はオーバーに驚いてみせたが、八幡の言葉を疑いはしなかった。
放課後。八幡はいつものようにトレーニングルームへ向かっていた。
「あら、比企谷君。こんにちは。」
いつもと違うのは。その道中で腹黒生徒会長ことクローディア・エンフィールドと会ったことと、
「おう。…誰だその人ら。」
その傍らに明らかに星導館の関係者ではない者が2人ほどいることだった。
「およ?もしかして君、≪千変万化≫?」
そのうちの一人、白衣を中途半端に着崩している少女の方が屈託のない笑みを浮かべて話しかけてきた。
「まあそうですけど…その呼び方やめてもらえません?あとさっきも聞いたんですけど、どちら様?」
「え~、かっこいいと思うけどな~、≪千変万化≫!」
どうやら八幡とこの少女では価値基準が大きく違うようだ。
「俺から名乗ったわけでもないんで…それよりも名前を…」
と再度問おうとしたところで…
八幡の背後の壁が吹き飛んだ。
ありがとうございました。
この作品についてちょっと考えていることがあります。あとで活動報告の方でアンケート取りたいと思いますので、ご協力いただければ幸いです。