インデックスROUTE(上条×インデックス)
―――必ず、戻る―――
とうまはそう言った。
だから私は―――――とうまの部屋のある学園都市で、とうまの帰りを待つんだよ。
―――――
数日前まで歩くこともままならなかった少女―禁書目録―は、バッキンガム宮殿の奥にある部屋の一室で、はっきりとそう言った。
少女が目覚めてから一週間がたち、少女の体調も順調に回復したので、イギリス清教の事実上の本拠地である聖ジョージ大聖堂に戻るための話し合いの席―イギリス清教の最大主教、聖人、魔術師といった、本来ならばこの場所にいるはずのない者と、建物の主である女王や騎士団長などが一堂に会する―
でのことである。
エリザード「はははっ。禁書目録は管理人の無事を信じてやまぬのだな」
インデックス「とうまは、約束は必ず守るんだよ」
ステイル「しかし…彼は…」
インデックス「とうまは、約束は必ず守るんだよ!!」
バンッ!とテーブルを叩いて少女が立ち上がる。その瞳からは大粒の涙が溢れていた。
ステイル「…くっ」
神裂「ああ、泣かないでくださいインデックス」
イギリス清教の攻撃の要である聖人がハンカチを手に嗚咽する少女に近づき、優しく涙を拭う。
ロ-ラ「…しかし、実際どうするけるよ?」
エリザード「何がだ?最大主教」
ローラ「禁書目録の今後にけるよ?」
インデックス「!!」グスッグスッ
エリザード「そうだなあ。戦争もひと段落着いたし…」チラリ
そこで言葉を切ると、女王は少女に視線を向けて、ニッと笑う。
エリザード「王室が『霊装』の管理不行き届きで迷惑かけたから、禁書目録の望みどおりにしていいんじゃないか?」
神裂「女王様!」
騎士団長「陛下!!」
インデックス「…」パアア
エリザード「いつまでもここに閉じ込めておくわけにもいかないし、聖ジョージ大聖堂も修理中だろう?そうなると管理人といた場所に戻った方が禁書目録のためにもなる」
ステイル(的を得ているように見えて、実際は支離滅裂なことを…。だいたい、その管理人が生きているかどうかすらわからないというのに)
赤毛の魔術師の心配をよそに、少女は期待に満ちた眼差しを女王に向けた。
インデックス「…ほんとに?」グスッ
エリザード「ああ。だが条件が二つある」
インデックス「なんなんだよ?」
エリザード「なに、簡単なことだ。ひとつは管理者が戻ってくるまでの間の護衛を連れて行くこと」
インデックス「…仕方ないんだよ。…もうひとつは?」
エリザード「…『霊装』においての我が王室の不手際を不問にすること」
神裂「!」
ステイル「!」
インデックス「…私が答えられることじゃないよね?」
ステイル「最大主教…」
ローラ「…まったく。これで私がNOと言いたりし場合には、安心して眠ることもできなくなるにけりよ」
神裂「では…?」
ローラ「禁書目録は『研鑽』のため、神裂火織は天草式十字凄教の選抜メンバーと共に禁書目録の護衛のため学園都市に行くことを最大主教の名において命ずる」
インデックス「ありがとうなんだよっ!」
神裂「委細、承知」
ステイル「なっ!僕は!?」
ローラ「ステイルはハロウィンの後始末がまだ残っているけりよ」
ステイル「くっ」ギリッ
うなだれる赤い髪の少年の傍へと最大主教は歩み寄っていき、悪戯っぽく囁いた。
ローラ「残念であられまするなー」
ステイル「…勿論、最大主教も後始末に付き合ってくださるのですよね」
ローラ「え?ひゃっ!ちょ、ちょっとステイル!?何をするのであらせられるのですかー?」
ステイル「僕はルーンの回収、最大主教は…そうだな、溜まりに溜まった書類の整理でもしていただきましょうか」
ローラ「不敬になりたるけるよー。陛下や騎士団長の前であらせられまするぞー」
ステイル「大丈夫。いつものことですから。では女王陛下、騎士団長閣下、失礼いたします」
エリザード「はっはっは。お主の負けだな。最大主教。せいぜい励むことだ」
ローラ「ううう…」ジタバタ
赤毛の魔術師に襟首を持たれ押されるようにして最大主教は部屋を出て行く。それを見送ってから女王は聖人に向きなおると、真剣な面持ちで口を開いた。
エリザード「神裂火織、これは単なる好奇心なのだが…」
神裂「は、はい?」
エリザード「その格好は本当に必要不可欠なのか?」
神裂「は?」
エリザード「どう見ても、男に劣情を抱かせるための格好にしか見えないのだが」ウーム
神裂「は、ははは…」ズーン
精神的な会心の一撃を喰らって、聖人―神裂火織―は項垂れる。
エリザード「まあ、なにはともあれ、禁書目録の護衛、頼んだぞ」
神裂「…はい。我が命に代えましても」
エリザード「ああ、それと…禁書目録の『歩く教会』、いや、『元』だが、もう少し何とかならないのか?」
聖人に会心の一撃を喰らわせたことに気付かず、何事も無かったように英国女王はそう言うと、禁書目録を見た。正確には彼女が身に纏っている安全ピンで補強された修道服を。
神裂「…出発前に縫わせましょう」
----------
インデックス「ただいまなんだよ!とうま!」ガチャッ
扉を開け、部屋の中に飛び込む。
―――おう。おかえり。インデックス―――
インデックス「とうま!?」
部屋の主の声が聞こえた気がして、少女は思わず名前を呼んだ。
だが、―――応えは無い。
インデックス「とうま…」ショボン
神裂「…これは、暫く人がいなかったからでしょうか?埃っぽいですね」
五和「とりあえず、窓を開けて換気しちゃいましょう」
神裂「そうですね。掃除は私がやりますから、五和は食料を買ってきてください」
五和「はい。わかりました。では、行ってきます」カチャ
インデックス「…」ポスン
少女はベッドに倒れこんだ。なんだか凄く懐かしい気がする。
神裂「インデックス…」
インデックス「とうま…私、帰ってきたんだよ」
神裂「…」
インデックス「えへへ。『歩く教会』がちゃんとした修道服に戻ったんだよ。法王級の防御力は無くなっちゃったけど」
神裂「…」
インデックス「とうま…」
神裂「…」
----------
とうま。
とうま。
どこにいるの?
私は―――――ここにいるんだよ?
戻ってきたんだよ?
とうま。
----------
インデックス「…」カチャ
神裂「どうしたのですか?まだ、残っていますよ?」
インデックス「…もう、おなかいっぱいなんだよ」
神裂「半分も食べていないじゃないですか」
五和「…お口に合いませんでしたか?」
インデックス「美味しかったんだよ…でも…」
神裂「どうしたのですか?」
インデックス「…とうまは、ちゃんとご飯食べてるのかな?」
神裂「…」
五和「…」
インデックス「そう思うと、おなかがいっぱいになっちゃうんだよ…」
----------
とうま。
とうま。
どこにいるの?
とうま。
―――会いたいんだよ。とうま。
----------
街が寝静まった深夜、少女はそっとベッドから這い出ると、音を立てないように玄関へと向かう。
インデックス「…」カチャ
玄関の扉を開け、少女は外へと歩き出した。
インデックス(とうま…)
少女が出て行った部屋の中で、神裂火織は静かに目を開けると体を起こした。隣で眠っていた五和も同じように体を起こし、無言で布団を畳んでいる。
神裂「五和」
五和「はい」
神裂「良いのですか?」
五和「…はい。私たちの役目は終わりましたから」
神裂「…」
五和「…」グスッ
神裂「…さて、行きましょうか」
五和「はい」
----------
とうまと一緒に歩いた道。
とうまと一緒に入ったレストラン。
とうまと一緒に―――――
とうまと一緒に―――――
とうまと一緒に―――――
歩いていると想い出が溢れてくる。風景の中に少年の姿が浮かんでくる。
インデックス「…とうまぁ……」
小さな声が少女の口から漏れる。
―――ねえ、私はここにいるんだよ?とうま。
街路灯の下で立ち止まると、少女は俯いて唇を噛みしめた。
インデックス「…ふぇ」グスッ
上条「…なにこんなところでべそかいてるんだよ、オマエ」
インデックス「え…?」
上条「しかもこんな時間に外にいるなんてどういうこと?」
インデックス「と…う…ま?」
上条「他に誰に見えるんだ?」
―――本当に?
インデックス「…とうま。…ふぇ、ふぇええええええええええええええええんっ!!とうま!!とうま!!」ダキッ
上条「うおっ!?インデックス!?」
インデックス「とうまとうまとうまとうま!!」ギュッ
上条「インデックス…」
インデックス「心配したんだよっ!!心配したんだよ!!とうま!!」ギュッ
上条「…そっか」ナデナデ
インデックス「ふぇえええええええええんっ!!」ギュッ
上条「…約束しただろ。必ず、帰るって」ナデナデ
インデックス「…うん」エグッ、エグッ
上条「…ただいま」ギュッ
インデックス「おかえり。―――とうま」ニコッ